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最期のバトル!勝者は誰だ!?


「はっは~。朽葉ちゃんとこうやって向かい合って戦うのいつぶりだっけな~?懐かしいね~。朽葉ちゃんは絶対に殺さないよ。僕のだも~ん!はっは~。朽葉ちゃん。朽葉朽葉朽葉朽葉ちゃん。」

「相変わらず、変態だな。私はお前の事など忘れた。」

 朽葉は萌黄を見据えていう。

「ふ~ん?あの朽葉ちゃんが?忘れちゃったんだ~。なら、思い出さないとね。」

「そうだな。出させてみろ。」

「はっは~元気だね~。なにか愉しい事でもあったのかい?向こうも始まっちゃったし、始めようか?」

「スタートですよ?師匠。」

「本気でかかってきなよ?」

 その瞬間、朽葉が萌黄に飛び掛かった。

 と、いうのは正確ではないが、飛び掛かった。

 朽葉はポケットからソーイング道具を取り出し、一定距離まで近づいた萌黄に巻くように引っ掛けた。

「さいっしょっから本当に本気だね~。僕が教えた技まだ使ってるの?はっは~。あのおえらいさんに捕まってる少年にも教えたのかい?…………だろうね!」

 萌黄は腰に装備していたナイフを取り出し、周囲に巻かれた糸を切り落とす。

 朽葉はその萌黄が出したナイフを素手で掴み、萌黄の顔面を殴る。

「あいつには教えきれなかったんだよ!この技!」

「痛いよ。朽葉ちゃん。顔面だよ~。へ~え。でも、でもでもでもでもでも。ワイヤーソーって見つかったら良くないよね。おくのてって言うか、切り札って言うか、隠しカードって言うか。そ!れ!に!これは手加減が難しいよね。僕は朽葉ちゃんを殺さないって決めたからなぁ!」

 萌黄は朽葉の手に握られた、ナイフを捩る。

 朽葉の手に血が滲み出る。

「それは!それは!有り難い!師匠はワイヤーソーとやらを使ったら勝てないからな!っと!」

 朽葉はナイフ握っている手を前に押し出し、ナイフの柄を萌黄の鳩尾にぶち込む。

 萌黄はそのナイフを手放し、バックステップで後ろへ下がる。

「珊瑚朱みたいにいうなら「めちャくちャいてェぜ。」かな?ナイフプレゼント。HAPPY BIRTHDAY!おめでとう。」

「私の誕生日はまだまだだ。お前が決めた誕生日だがな。」

 朽葉はナイフを回転させ、持ち替える。

「お前とは頂けないなぁ。可愛い朽葉ちゃん。変わったなぁ。まだ、五年ぐらいしかたってないよね?はっは~。もう年だよ僕。………………手加減無しで行くよ?」

 萌黄は朽葉に近づき、足払いをし、手は朽葉の首を手刀で叩く。

 朽葉はその場に倒れる。

 それを逃すこと無く、倒れた朽葉の水月に二度、踵を落とす。

 朽葉はナイフを萌黄にむけ、きりつけるが萌黄の手刀によって落とされる。

 ナイフを持っていた方の手を朽葉の背中に回し、関節を固め、腰から出したもう一本のナイフを朽葉の首に添える。

 十秒前後の出来事。

「昔より、拘束がきつくなったぞ。師匠。」

「朽葉ちゃん強くなったからね。ナイフはおまけ。」

「気を緩めたら自殺しそうだ。」

「全力で止めてあげる。」

「はは。そりゃいいな。」



***********



「萌黄が勝ったようですけど。」

「まだ殺しとらんじゃろう、勝ってはいない。」

「あそこから逆転は難しいと思うけどなぁ。僕は。」

「どうじゃろうな?あの妙な信頼関係を見ているかぎり、どっちも勝たないように見えるわ。」

「……………。」

 不十分すぎる。

 あのふたりは。

 過去が詰まりすぎていて、僕にはわからない。

 最初から朽葉は萌黄を殺さないだろうと思っていたし、萌黄は朽葉を殺さないだろうと思っていた。

 師匠かぁ。

「まだ、終わってないぞ。」

「曙、東雲、珊瑚朱。ですか………。」

「そうじゃ。終わっとらん。おや?珊瑚朱が有利じゃぞ?曙とやらを攻撃しておる。」

「え?」

 曙を?

 曙を?

 ………………曙を?

 曙、東雲、珊瑚朱の方をよくみると、東雲を上手く抑えて、曙のみを攻撃している。

 東雲、曙だったら曙のほうが弱い。

 だったら曙を先に殺そうという戦法だろうけど………………。

 イチバンイケナイヤリカタ。

「珊瑚朱君!珊瑚朱君!珊瑚朱君珊瑚朱君珊瑚朱君珊瑚朱君珊瑚朱君珊瑚朱君珊瑚朱君!」

 叫ぶ。

 体が動かないと不便だ。

 叫びにくい。

「どうしたのじゃ?」

「曙を先にやっちゃいけないんだ。やるなら東雲からじゃないと…………………。」

「どうしてじゃ?」

「…………見たくないんだ。」

 あの東雲を。

「珊瑚朱君…………………………。声が届かないな。ははは……。駄目だ。地獄をみるよ。常盤ちゃん。…………逃げない?」

 曙が死んだら、東雲はどうするんだろう。

 曙がいなくなれば東雲は自由だが……。

「我は逃げない。」

「そう………。」

 地獄。

 そう。地獄。ただ一つ。

 それだけを見る。



***********



 曙、東雲、珊瑚朱。

「あけぼの負けないもん!」

 曙は幸せだ。

 自分が倒れた後の事をあまり知らないから。

 見てないから。

「負けるゥ?そりャありえねェなァ!だッてお前死ぬだろ!?ゲームオーバー!」

 デスサイスと刀ではリーチはデスサイスの方が長い。

 手の長さ的にも、珊瑚朱の方が数段長い。

 曙は不利なのだ。

 しかし、珊瑚朱は珊瑚朱で曙と東雲の攻撃を交互に喰らっているようなものだ。

 珊瑚朱と曙、東雲をわけるものは実戦力。

 何度戦ったか。

 何度死んだか。

 何度生きたか。

 何度負けたか。

 何度勝ったか。

 それだけなのである。

「負けないもん!負けないもん!負けないもん!………負けないもん!」

「明らか疲れてんじャねーかよ!諦めて殺されろ!あッけー!」

「あっけーじゃないもん!あけぼのだもん!曙、東雲。漢字、イメージ。カラフル、虹色。同じ色、負けないよ☆だもん!」

 曙と東雲は同時に構え、珊瑚朱に攻撃した。


「「伊呂波!」」


 曙、東雲の同時攻撃、(伊呂波)は珊瑚朱に抑えられず後ろへ下がる。

「おーい?あッけーよう?弱いぜェ!?明らかに力がちげェ。」

「弱くないもん。兄貴より強いもん!」

「兄貴ィ?あァあいつか。あいつはセコいし、強ェェェェよ。俺には勝てねェ。そいつより強い?どの口がほざいてんだァ!?えェ!?」

 珊瑚朱は曙に全体重をかけ、突進する。

 曙に珊瑚朱の体重に勝てるはずもなく、倒れる。

「うぐぅ………」

「これでも勝てるのかァ!?」

 珊瑚朱が曙をデスサイスで切ろうとした瞬間-----


「…………ぼくのあけぼのにさわらないで。」


 東雲が動いた。

 珊瑚朱を足で掃い、曙から離れさせる。

「あァ?お前喋るのかァ!?」

 東雲は冷ややかな目で珊瑚朱を見つめる。

「し…しののめ?」

 曙が呟く。

 東雲は目を閉じ、頷く。



***********



 東雲が動いた。

 東雲と曙が同時に行動しているということは、どちらかが意識を落とさないと危ない。

 曙が起きるなら東雲を

 東雲が起きるなら曙を

「不安定。じゃのう…………。あのふたりは。」

「分かるんですか?」

「我を誰だと思ってるのじゃ?」

「……そうですか…。」

 デジャブ。

 この会話さっきもした。

「しかし、東雲やらは自分から意識を操作してるように見えるようじゃが………?」

「……東雲は曙を守っているんですよ。守りかたが少々異常ですがね。」

「そうかのう……?」

 東雲は珊瑚朱君に全力で攻めている。

 とても…美しく舞っている。

「地獄ですよ。東雲がキレたら世界は滅亡しますよ。」

「一人じゃ無理じゃよ。ここが終わっても他では始まるんじゃから…。」

 終わりには始まりがあり、始まりには終わりがある。

 始まりと終わりが表裏一体。

「この勝負は珊瑚朱が死ぬのう………。」

「そうですね。」

 絶対に死ぬ。

「可哀相だとは思わぬがな。」

「どうして?」

「美しいからじゃ。」

「……うつくし…いですか。」

 美しいけど。

 東雲は。

 駄目なんだよ。

 残酷。冷酷。冷血。

 ……………………じゃないんだ。


「っさんごしゅくん!」


 叫んだ。

 おもいっきり。

「珊瑚朱君!珊瑚朱!珊瑚朱!聞いてくれ!」

 聞こえていない。


 ……お願いだから……届いて。


「珊瑚朱…君!」

「無理をしない方がよいぞ?なんせお前は----」

「っるっさい!黙れ!黙れ黙れ黙れ!珊瑚朱君!珊瑚朱!珊瑚朱!珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱珊瑚朱!」


「あァ!?なんだよ!?」


「珊瑚朱!逃げろ!死ぬぞ!」

「はァ!?逃げねェよ!だッてさ!」

「なんだよ!?」


「カッケーじャねーかよ!」


 それが珊瑚朱君の最後の一言だった。

 東雲が珊瑚朱君の胸に刀を刺した。瞬間だった。

 珊瑚朱はそれで良かったのだろうか?

 僕が邪魔をしてしまったという、

 罪悪感。

 疲労感。

 憂鬱感。

「あ……ぅ。」

 終わったのか……?

 もう………。



***********



 東雲の刺した刀によって、珊瑚朱は倒れた。

 心臓部は完全に壊れてしまっている。

 もう、絶対に助かることはない。

 しかし、珊瑚朱は。


「あはァはァ!あははははははははははははァ!はははははァはァ!」


 笑った。

 大笑いした。

 そのまま、バタンと倒れた。

「………………。」

 最期は笑って死のう。

 そんな、珊瑚朱の気持ちが伝わるような最期だった。

「し……ののめ?」

 曙が口を開く。

 東雲は曙を一瞬見て、目を閉じた。

「………さんごしゅ?…………しののめ?」

 何があったのか。

 曙が今一番恐れているのは間違いなく東雲だった。

 珊瑚朱を殺した東雲。

 その事実に守って貰った。という真実は負けていた。

「…………ふぇ……………ぇ……。」

 泣くしかなかった。

 曙には。


曙はこの中で一番、普通である。



***********



「はっは~朽葉ちゃん。」

「あ?」

「萌黄お兄さん飽きちゃった。」

 萌黄は朽葉からひょいと下りた。

「はぁ?飽きたぁ?」

「トンズラトンズラ~。常盤ちゃ~ん。帰るよ~。」

 萌黄は常盤の方へと歩いていく。

「我の家はここじゃが?」

「そうだね~。僕の家にくる?」

「嫌じゃ。我はここで死ぬのじゃ。」

「ふ~ん?じゃあ好きにすれば~?僕は自分の家に帰るよ。」

 常盤からくるりと背を向け、萌黄は窓から飛び降りていった。

「で、我の負けだが?どうするのじゃ?」

「殺せと…?」

「そうじゃな。白群常盤は邪魔でしかないじゃろう?」

「そんなことはな-------」

「邪魔だ。」

 僕の台詞を邪魔したのは朽葉。

「邪魔だ。白群常盤は邪魔だ。ただの常盤は邪魔では……ない。」

「白群が邪魔だというんですか………朽葉。」

「そう。邪魔だ。どのみちこいつは戦争で死ぬ。殺される。なら?」

 朽葉は質問してくる。

「今、何も起こっていない間に……………殺す。ですか?」

「そうだ。常盤が白群を捨てるというならば放置でもいい。」


「私は白群常盤。-----誰にも譲らないし、白群をやめない。」


「それが死だとしても?」

「うん。」

「そうか……」

 …………なんだ。この子は。

 まだ、十代だろう?

 それなのに…何故、死のうと決意できる?

「奴隷よ。我を殺すのじゃ。」

「………。」

「約束じゃろう…?」

「貴方は…貴方は負けるのがわかっていたんじゃないですか?わざと、負けた……。」

「だから?だからなんじゃ?悪は負けるんじゃよ。」

「そんな………。」

 皆、皆皆皆……悪じゃないか。

 規律。

 法律。

 守っていないじゃないか。

 人を殺した。皆、悪。

 それは、間違いなのか?

 正解だろう?

 それなのに何故、一人が悪者なんだ?

「これならどうじゃ?正義は勝つ。しかし、お前は納得せんな…。悪のレベェルがあるとしたら?どうじゃ?白群のしてきたこととお前達がしてきたこと。どっちが勝つ?……白群じゃろう?」

 そんなの五十歩百歩じゃないか。

 同じ。悪は悪。

 正義は正義。

 駄目は駄目。

「…………粘るのう…………?お前の過去を暴露してもよいのか?叫ぶぞ………?」

「はぁ?」

 過去?


「■■■■は■■を■■■■■。」


 淡々と言った。


「しかも■■に。■■■■に■■■■に。」


 静かに。


「■、■、■■■お前が■■■。」


 何かを唱える様に。


「やめて…ください。」

「■■からも■■■。」

 やめろよ…。

 もう、思い出したくないんだ……。

 やめてよ。

 そのかこは。駄目だよ。


--■■!?


--やめてよ!!ね?


--どうして……皆…


--私も■■■■■?


 …………もうやだ。

「それでもなお、ここにいる。■■■。」

「っやめろよ!!煩い。煩い。煩い。煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い!」

「なら、殺すのじゃ。」

「………。」

 ゆらりと立ち上がり、常盤の方を見る。

 あれ?……なんで動けるんだろう?

 まぁいいや。

 いまは関係ない。

「それでよい。」

 僕は、常盤の首に手をかけた。


「あ……ありがとう。」


 常盤の瞳から何かが流れた気がした。


 ………のは気のせいだろうか?


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