ラブレター
「ふゅーふゅー。」
「お前は黙ってろ。」
高校1年生、2学期の始業式。
中学からの友人である藤宮と登校してきてすぐ、事件は起こった。
「なあ、おい。」
「ん?」
「これっていわゆる…。」
「ラブレターだな。」
「そ、そうだよな。」
靴箱に忍んでいたピンクの便箋。
赤いハートマークのシールで可愛く閉じてある。
俺は藤宮に何度も何度も確認してみた。
「一ノ瀬 遥。16歳。」
「おう。」
「人生初ラブレターでございます。」
「ふゅーふゅー。」
…自分から言い出しといて何だけど、こいつの棒読みの口笛腹立つな。
「読み上げます。」
「いや、いいわ。」
「一ノ瀬 遥くんへ。今日の昼休み、屋上で待ってます。」
「声変えるな。きもいぞ。」
「………すげえ、感動だ。」
「………俺先に教室行ってるぞ。」
待てよ、なんて言いながらスタスタ歩いていく藤宮を追いかける。
「うおおおおお。嫌がらせじゃないよな?」
「知らないけどさ。どうするわけ?」
「うん?」
「返事だよ、返事。」
「いや、だって、まだ差出人もわかんねぇし…告白って決まったわけじゃねぇし。」
「お前、あんだけラブレターラブレターはしゃいだ後によくそんな事言えるな。」
「まあ、でも…告白だったら返事はノーかな。」
「あ、やっぱ?」
「うん、やっぱ。」
藤宮は意外そうな顔ひとつせず、足も止めずに教室へ入った。
俺もそれに続く。