第53話 女エルフ、魔族の龍討伐依頼を出す
「ノワールドラゴンってたしか、地底洞窟の最奥に封印されてたドラゴンだよね!?」
「……そうだ、よく覚えてたな」
小さな子を褒めるような口調で答えるバル兄、もとい局長。
褒めると言ってもどうみてもバカにしてそうな表情をしているけど。
「いったい誰が……っていうか確かドワーフが管理していたはずだよね!」
「……まとめて質問をするなと言ってるだろう」
呆れたと言いたげな顔でため息をつくバル兄。
「元々ノワールドラゴンは魔族によって作り出された存在なのは知っているだろう? となると答えはすぐに出てくるはずだ」
「封印を解いたのは魔族ってこと……?」
「だろうな、管理をしていたドワーフの亡骸から魔族の魔力反応が残っていたからな」
たしか管理をしていたのはドワーフの中でも屈強と言われてた男ドワーフだったはず。
それを最も簡単に躯としてしまう魔族に恐怖を覚える。
——そんなのが、ノワールドラゴンを連れているとなると。
「……それでだ、おまえに頼みたいことがある」
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「あら、おはよう」
次の日、ちょうどよくリビングでテレビを見ていたエンジュさんを発見した。
「……何でいるの?」
たしかダンジョン探索を終えた直後にオルハちゃんからシオちゃんが泊まるとは聞いていたが……。
「女の子2人がお泊まり会をするっていうのだから、同じメンバーとしては一緒に楽しむものじゃないかしら?」
エンジュさんは少し顔を赤ながらテレビの方へと視線を向けていた。
屁理屈を述べているが、早い話が寂しかったようだ。
「言っとくけど、別に寂しいとかそんなんじゃないわよ」
「わかりました、そういう事にしときますよ」
「何かそのニヤけた顔が不愉快ね、あなたといい、あの男といいエルフっていうのは人を不愉快な気分をさせることに愉悦を感じる種族なの?」
さすがに兄と一緒にされるのは嫌だなあ……。
「ってかオルハちゃんとシオちゃんはまだ寝てるの?」
ふと、リビングの壁掛け時計に目を向けると、よほどではない限り起きる時間ではなかった。
「そうね、私が起きた時にはシオンちゃんがオルハさんに抱きついてわよ」
エンジュさんの言葉でどんな感じなのか、容易に想像できてしまう。
こっそり写メでも撮って呟きったーにでもアップしてみようか。
そんなことしたらオルハちゃんに怒られる事間違いなしだが。
「まあいいや、それよりもお腹空いてる? 簡単なものでよければ作るけど?」
「そうね、一流ホテルでだされるようなパンを使ったフレンチトーストに、ダージリンファーストフラッシュをお願い」
嬉々として答えるエンジュさんの顔を見て私は無言のままため息をつく。
この人もエルフのことを不愉快にさせるのが好きなんじゃないかと思いながら……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ノワールドラゴンって厨二病が着けそうな名前ですね〜」
午前もそろそろ終わりそうな時間になって起きてきたシオちゃんが眠たそうな声で呟く。
「そんな笑い話で済むならいいんだけどね……」
「そんなにすごいドラゴンなの?」
「過去には大陸を燃やし尽くしたこともあるほどだよ……」
私の返答に絶句するエンジュさん。
これは冗談ではなく本当のことだ。
——そのせいで、私やバル兄は故郷を失ったのだから。
「それでバル兄じゃなくて管理局の局長から3人にノワールドラゴンの討伐をお願いしたいと」
何で自分から言わなきゃいけないのかと不満に思いながら3人に伝える。
「わ、私たちがですか!?」
真っ先に声をあげたのはシオちゃんだった。
さっきまで完全に覚醒していなくて半開きだった目が大きく開いていた。
「……何で私たちが?」
次に声を上げたのはオルハちゃんだった。
賞味期限ギリギリだったので、食後にだした串団子の串を皿の上に置きながら。
「エンジュさんがいるからだね」
私が答えるとエンジュさんが私を見ていた。
「何で私……って思ったけど、言い出しっぺがあの男エルフって時点で察したわ」
エンジュさんはそしてこちらに聞こえるようにわざとらしく大きくため息をつくと再度私の顔を見る。
「ドラゴンスレイヤーでしょ?」
「知ってたの!?」
「あなたのお兄さんが言ってたのよ、私の魔力ならドラゴンスレイヤーもいけるんじゃないかって」
ドラゴンスレイヤーというのは光魔法でも上位の魔法のことで、仲間の持っている武器を対ドラゴン用にすることができる。
そのためか、大量の魔力が必要になってしまうため、人間には薦めることのできないものだ。
「……たしかにエンジュさんの魔力ならいけるとは思うけど」
仮に可能だとしても、使ったら彼女の魔力は空に近い状態になることは間違い無いだろう。
その前に魔力を消費してしまった場合、魔力が足りず、命を落としてしまう可能性も……。
——あの女は使い捨ての実験体だ。処分する手間が省ける。
エンジュさんのことを考えていると兄の無慈悲な言葉が頭の中を駆け巡っていく。
「それを口にするなら、自分で監視して欲しいんだけどなあ」
私は実兄への不平不満をこぼしてしまうのであった。




