7 再会
家に帰ってから数日は何もする気力が無かった。
唯々、恋しくて、淋しくて、悲しくて、空しくて・・・
その後重い体にムチを打ちスマホやキャッシュカード
証明書などの手続きに追われた。
バイトで忙しく過ごすはずだった夏休みは
ほとんど家の中で緩慢に過ごした。
長かった休みが明けてからは落ち込んだ気持ちを紛らわそうと
就活や友達とのおしゃべりに明け暮れた。
寒さを感じる季節を迎え、たった一つ
あの世界から持ってきたペンダントを握りしめ
同じ色の深く澄んだ星空を見上げると涙があふれる。
いつになったら忘れる事ができるのだろう。
*****
世間は慌ただしい年末の今日、クリスマスイブ。
両親は仕事や年末の付き合い。
義弟は友達と夜通しゲーセンとカラオケの梯子。
いつも付き合ってくれた友達には彼氏ができた。
一人過ごすにはやるせない。
街へ出て淋しさを紛らわせる為にやけ買いをすることにした。
どうせ家族とのプレゼントのやり取りはない。
自分の欲しい物を買いまくろう。
ショッピングモールであちこちのウインドウを覗きながら
あれはアンリエッタに似合いそうとか
シュナイダー夫妻はこのワインを喜ぶだろうかとか・・・
ジュエリーコナーでペアのネックレスに目が留まった。
ちょっとお高いけど、
ええ~い、ままよっ!と衝動買い。
気付いた時には両手いっぱいの荷物を抱えて
「バカな事をした・・・」と呆然として昼下がりの
広場のクリスマスツリーの前に立っていた。
突然胸元のペンダントが淡く輝き出し
次の瞬間、全身が強い光に包み込まれ三度目の浮遊感に襲われた。
「ピシッ」という音に座り込んだその場所で目を開ける。
目の前の見覚えのある石碑に嵌め込まれた魔石が音とともに砕け散った。
呆然とそれを見ていたが暫くして ”戻って来れたんだ” と
じわじわと嬉しさが込み上げてきた。
その場にしゃがみ込んだまま涙しながら願いが叶った喜びを嚙み締める。
どの位そうしていただろう。
馬車が近づいて来ている事に気付き立ち上がった。
立派な馬車がすぐ近くに停まった。
見覚えのない青年が降りてきて、馬車の扉の方へ手を差し出すと中から
「ほら、女の感は凄いでしょ。」という声とともに
見知った面影の色濃い女性が降りてきた。
「ごきげんよう、リンカ。貴方は少しも変わってないわ。」
「アンリエッタ・・・だよね?」
「そうよ、私21歳になったわ。こちら婚約者のカール・シエロ伯爵令息よ。」
「私・・・あのっ!、キースは?!」
「まあ、私の婚約者には興味なし?
ふふっ、一番の気掛かりがが”キース”って、本人が聞いたら大喜びね。」
「あっ・・・」
「まあいいわ。キースは無事よ。馬車の中で話しましょ。
それにしても物凄く暑そうな衣装ね。それに大量の荷物・・・」
アンリエッタに促されて馬車に乗り込み中で改めて顔を合わせると
形容し難いほどの熱い想いが込み上げてきた。
二人でそっと抱き合っているとお互い涙が出て止まらくなった。
シエロ伯爵令息は何も言わずに見守ってくれる優しい人だった。
落ち着いてからアンとこれまでの色々な話しをした。
私は、元の世界に戻ってしまった時に異世界に転移して来た日時と
同じ日時に戻った事
元居た世界に戻ってからまだ5ヶ月しか経ってない事などを話した。
異世界ではあれから6年が経ったらしい。
キースは、今日行われた筈の第三王子の成人の儀式に参加する為
数日前から上都していて数日で帰ってくる予定という事だ。
「早馬で知らせましょう。」
シエロ伯爵令息が提案する。
「いいのよ。6年も待ったんですもの。
今更数日くらいどうという事ないでしょ。
知ってしまえば帰って来る間落ち着いてはいられないでしょうし。
使いの者と行き違いになる事も考えられるでしょ。」
その後シュナイダー邸に到着し、懐かしい人たちと再会を祝ってもらった。
シュナイダー伯爵夫妻の涙を流しての歓迎に
本当に異世界に戻って来られて良かったと
あらためて感無量の想いで一杯になった。
そわそわと迎えた四日目、エントランスが慌ただしくなると
アンが私を客間へといざなった。
「ふふっ、出てきちゃダメよ。」
嬉しそうにエントランスへと消えて行った。
「お帰りなさい、キース。成人の儀式はどうだった?」
「ああ、姉さん。暫く部屋で休むから・・・後で。」
「あなたに会ってみたいって、来てくださった方がいるの。
もうそろそろ諦めて
新しい出会いに希望を見出してみても良いのではなくて?」
「まだすぐにはそんな気持ちにはなれない。疲れたから断っておいて。」
「本当に遥々遠方から来て下さったの。
お断りするにしても、キース本人からお断りして頂戴。」
「・・・今回は仕方ありませんが、今後こういう強引な事はお断りしますよ。」
「ええ。最後にすると誓うわ。応接室にいらっしゃるからお願いね。」
応接室で外の様子を気にして待っていると暫くして
”トントン”と扉がノックされた。
「はい、どうぞ」と返事しながら立ち上がる。間を置かず
「申し訳ないが・・・」
と言いながら、見紛う事なき青年が入ってきた。
「キース・・・」
背が高く精悍になった姿に涙が止まらない。
気付いた時には強く抱きしめられていた。
「リンカ・・・俺と結婚して。もうどこにも行かないで。」
私の返事は決まってる。
❀❀❀ ❀❀❀❀ ❀❀❀❀ ❀❀❀❀ ❀❀❀




