1 :私のお話は「在り来たり」なつまらないものでして…
「ここで勇者様は因縁の魔王と遂に邂逅を…!」
私は「有紗」!。今まさに私の創った小説、「幼い勇者が世界を救う!?」の執筆中だ。一年間書き続けてようやくラストシーンまで漕ぎ着けたのだ。
「〆切まであと1日…間に合うかな…」
時計を見て呟く。既に朝の3時で、学校にも行かないといけない。でも学業よりも執筆を優先したい。小説家になる夢っていうのもあるけど、何より私の描いた勇者様に日の目を浴びて欲しいんだ。
好きな人をモデルに勝手に創作して出来た「勇者様」だけど、ここまで私の手で育て上げて来たのだ。愛着が湧かないわけが無い。そんな勇者様はこの後、もう何話かしたら「ハッピーエンド」を迎える。その結末を、勢いのまま書き切ってしまいたい。
「やば…まぶたが…」
もう9時間もパソコンと睨めっこしてるんだ、そりゃ眠くもなるよね。けど書きたいという欲望。どちらも鬩ぎ合った結果…
「…あ」
目覚ましが鳴り、朝を迎えた。
どうしよう全然眠れなかった。最後の方は何書いてたか全然思い出せない。涎を拭いてパソコンの画面に目を向ける。
「え…嘘でしょ…?」
今まで書いていた「小説」が、全て消えていた。改めてログインをし直しても作られた作品は無い事にされていて、一年間の努力が全て、水の泡になってしまった。
「そんな…」
これは違う、悪い夢だ。頬を叩いても目が覚めない。突きつけられた事実に泣きそうになる。
「…学校」
行かなきゃ。ただでさえ創作に夢中になっていて、勉強なんてまともに追いついていないんだ。私は簡単に身支度を整えて、涙を拭いて外に出た。
あの作品が消えたとしても、どうせ誰も気付かない。私だけが愛していただけで、感想なんて一つも付けられなかった。どこまでいってもただの趣味に過ぎないんだ。
「はぁ…」
それでも、このショックは治らないよね…。眠れてない所為か頭も回らない。曲がり角に人の気配があっても、足は止まらなかった。
「いたっ…!」
尻もちをついてまた深い溜め息をつく。とことんツイてない。でもこんなシチュエーション。もし漫画の世界なら、運命の人との繋がる切掛になるのでは…。私は少しだけ、期待を込めてぶつかった相手と視線を合わせた。
「大丈夫か?痛い所無い?死んだ?」
…この人は。失礼な位私を心配してくれるこの人は。
「まさか…『ライガ』…?」
「俺の事を知ってるのか!…なんで?」
私の描いていた「勇者様」と、現実世界で邂逅しちゃった…!?




