揺れる
ダメだ。もう終わりにしよう。
父が酔っ払って帰ってきて、玄関で寝ている。
醜態を見るたびに、もう終わりにしようと思って、辞めて、でも今日で最後。これで最後。
誰にも見つからない場所に行って、人生を終わりにしようと思っていたのに、
「里遠何してるの?」
厄介なヤツに見つかった。
同じクラスの恋也である。
「コンビニ」
「そっか」
恋也は俺に付いてきた。友達でもない、ただのクラスメイト。でもなぜが好かれているようで、よく纏わりついてくる。
コンビニで飲み物を買って、適当に歩いて、なんとなくの場所でじゃあねと声をかけた。
「どこ行くの?」
「なに?」
「僕も一緒に行く」
「家に帰るんだよ、ついてくるな」
「家、そっちじゃないよね?」
コイツが俺の家を知っているとは思わなかった。でももう家には帰りたくない。
「遠くに行く」
「じゃ僕も一緒に行く」
「ダメ」
「なんで?」
「なんでって……」
理由はないけど。
「なんでダメなの?」
「お前は幸せだから」
「なにそれ?」
「両親がいて、お金もあるだろ」
「それがダメなの?」
「ダメというか、俺とは違う。だから一緒には行けない」
「じゃ同じにするから、ここで待ってて」
恋也は駆け出した。同じにするって、どういう意味だろう。嫌な予感がして、急いで引き止める。
「同じにするって何するの?」
「親を殺して、お金は燃やす。金庫の開け方知ってるし、銀行にある分は無理だけど」
「いや俺、親殺したことないよ?」
「じゃ、どうすればいいの」
恋也は声を上げて泣き出した。
夜中の住宅街に響く、ほんと厄介なヤツ。
とりあえず抱きしめたら泣き止んだが、それが同意とみなされてしまったようで、今は手を繋いで当てもなく歩いている。
コイツが付いてくるなら、死ねなくなってしまった。だって2人で死んでいたら、心中と思われる。
男子高校生が2人で自殺。
俺は貧乏で片親、コイツは確か金持ちで立派な家に住んでいたはずだ。父親が大きな会社の社長をやっていて後継として期待されている。なんていうのを風の噂で聞いた。
身分違い、同性、結ばれることが叶わないと悟って、来世では一緒になれますようにと共に死を選んだ。そんな風に見られしまうかもしれない。
死んだ後のことなんて正直どうでもいいけど、俺は自分の人生が嫌だから死にたいんだ。恋愛なんてクソくらえ。
「里遠」
「なに?」
「好きだよ」
「うん」
「大好き」
と恋也が擦り寄ってくる。この意味のないやりとりを繰り返すこと数十回。
ふと空を見上げると、まん丸い月と目が合った。
あぁ、そうだ。コイツのことを好きになったら、嘘偽りなく心中になるのか。
バカな考えだと頭では分かっているが、手始めにキスをする。
触れ合って同じ人間で生きているのだと、赤く染まりゆく頬を見て俺に惚れているのだと、知らなかったわけじゃないけど腑に落ちる。
読んでいただき、ありがとうございました!
明るい話が書きたいんだけど、思いついてしまったのでちょっとだけ書いて、これでおしまい。でも気が向いたらちゃんと書くかも。




