6 興味
「文化祭?」
一颯が尋ねると、颯は
「うん。8耐に来た結香さんとこのクラスが、たこ焼きの屋台出すらしくて。この前のお礼に来てって言われてるんだけどさ」
と言うと
「あっ、一颯兄も来る?家族2人までなら入れるらしいよ。父さんも母さんも行かないって。って言うか、カケ兄が誰も来んなって言ってて、母さん達はカケ兄うるさいからやめとくってさ」
と笑った。
一颯が不思議そうに
「あいつ何、イヤがってんの?」
「カケ兄のとこ時代劇するらしいよ。それ見られるのが嫌なんじゃない?」
侍の格好でもするのか?
一颯はそれを聞いて納得した。
颯流はその雰囲気からして時代劇風の顔つきではない
自分達の両親は生粋の日本人で、自分と颯は顔立ちが似てるとはよく言われるが、颯流は若干、目鼻立ちもくっきりしていてハーフと言えるほどではないが、クォーターくらいなら通じるかもしれない顔立ちだ
颯流も子供の頃は、自分だけがなんとなく浮いている感があって嫌な思いもしたかもしれないが、ある程度の年になると
「俺は母さんが海外で浮気して出来た子供だから、俺一人だけ男前だろ?」
と冗談めかして言いまくり、母親はそれを耳にする度に「しゃれにならないからそういうこと言わないの!本気にする人も中にはいるんだから!」と激怒していた。
「俺達が文化祭行ったら、颯流怒るんじゃない?」
一颯は一応、気を遣ってみたが、颯は
「文句言ってきたら、結香さんと雫さんに呼ばれて来ただけで、カケ兄を見に来たんじゃないって言うし」
とサラっと答えた。
一颯はしばし考えると
「それで、その雫さんっていう子が本命だったっけ?」
一颯の質問に、先ほどクールに返した颯だったが、今は見るからに動揺し
「えっ?」
と驚いて兄を見た。
「違うのか?いや、前に、颯流がノートを借りた子のこと気に入ってるんじゃないかって話してただろ。お前が優しそうな人って言ってた。颯流が好きなのって雫さんって名前じゃなかったっけ?」
颯は真面目な表情で
「あぁー」
と呟いて俯くと
「別にカケ兄が本命と思ってるとかどうかわかんないけど。ノートを借りたのは春田 雫さんっていう人の方」
と答えた。
「せっかく来てもらったのに8耐リタイヤになって悪いことしたから、俺も二人にお礼と謝罪兼ねて行くわ」
一颯がそう話すのを、颯は
一颯兄は、カケ兄が興味持った子を見てみたいんだろうな
と思った。