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4 末弟

  雫は知らなかった。


  毎年、開かれるこの『8耐』についての情報は、結香がいろいろと調べていて、雫にも教えてくれた。

 雫もレースに招待された以上は、礼儀としてネットで検索するなどして、少しずつ理解を深めた。


 ただ、雫にとって不思議だったのは


 毎年、このレースのチケットが販売開始時刻と同時に、ネット上で、どんどんと席が埋まっていくこと

 この時期、サーキット付近どころか地域一体のホテルがほぼ満室になってしまうこと

 併せて駐車場を確保するのも大変であること


 こんなに人気があるレースなんだ


と、レースに付随する様々な話に驚いた。


「本当はVIP席みたいなところに招待したいんだけど。ただ、初めてくるならいろいろ歩いて移動した方が面白いから」


 颯流(かける)は、これは一般的な席の観戦チケットだと言って雫達に渡した。

 しかし、彼は付け焼き刃の素人二人が、そのまま観戦しても楽しくないだろうと、事前に根回しをしていたことがあった。


「こんにちは。渡来 颯(わたらい そう)です」


 チケットをもらってから一週間後、颯流の弟の颯から


「カケ(にい)に頼まれたんで、よろしくお願いします」


と挨拶され、雫と結香は渡来三兄弟の末っ子と初めて対面した。


 彼が兄の颯流から言われて、雫達にコース案内をしてくれることになり、事前に顔合わせだけしておこうとなったからだ。


「颯くんって可愛いね」


 結香が陰でこう言った。

 自分達より3つ年下となる颯は、まだいかにも中学生といった幼い顔立ちで、二人には弟ができたかのような気持ちだった。


「渡来三兄弟の一人に案内をしてもらうなんて、どんなVIP席より、VIP待遇だよね」


 しかし、雫達は知らなかった。

 末っ子の颯は、現在、兄二人の同じ年の時と比べて、レースで好成績をおさめており、兄達の影響で小さい頃からバイクの英才教育を受けたからとの見方もあるが、その界隈では


 おそらく颯は、すぐに兄二人を凌駕するだろう


と密かに噂されている人物であった。

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