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33 電話

 一颯は悩んだ挙げ句、メッセージではなく電話をかけた。

 1回、2回……5、6回……とコールを鳴らす。

 出ないかと思った時に


「……もしもし」


 雫の声が聞こえた。


「あっ、一颯です」


 誰からの電話かはわかっていただろうが、一颯は名乗った。


「今、いい?」

「はい」


「自宅?それとも外にいる?」

「家にいます」


「ちょっと出られる?会って話したいことがあって」


 雫の返答がなかった。


「ダメ?無理かな?」


と一颯が聞くと


「いえ、大丈夫です」

 

「バイクで迎えに行ってもいい?メットはこっちあるし。ズボンだけはいてくれたらいけるんだけど」


「……バイクに……乗せてもらえるんですか?」


 少し驚いたように雫が尋ねると


「良かったらだけど。親御さんとか反対されそう?」


 バイクの後ろというと、危ないから止めなさいという親もいる。


「いえ、そんなことはないです」


「俺、普段は、とばさないし、安全運転だよ」


 一颯が真面目に言った言葉に、雫は思わず


「わかってますよ」


と笑って返してしまった。


「風きると寒いし、少し温かい格好してもらう方がいいかな。準備どれくらいかかりそう?」


「15分くらいもらえたら」


「じゃあ、家の前に着いたらまた電話するね」


 電話を切った後、しばらく固まってしまった雫だが、すぐに


 準備しなきゃ


と慌てて立ち上がった。


 一颯さんの話っていうのは、また改めて颯流くんのことを薦められるのかもしれない

 一颯さんは優しいから、友人として仲直りしてもらえないかってお願いされるのかもしれない


 雫は期待などしていなかった。

 一颯の優しさから、却って、自分が勝手に傷つく可能性の方を考えていた。

 それでも


 会いたい


という想いの方が大きかった。

 そして、自分は謝らなければいけないと考えていた。



 大きい


 バイクの車種などわからないが、間近で見るバイクは大きかった。


 ヘルメットをかぶりあごひもをつけるのに、手間取っていると


「貸して」


と一颯が、雫の方に手を差し出し、ベルトをカチッとはめると、「苦しくない?」と確認しながら、長さを調整した。


「じゃあ、行こうか。座ったら足はここ置いて」


 後ろに跨がったはいいが、手はどこを持っていいのかわからない。


「シートにベルトついてるでしょ。そこ持ってもいいし、俺の腰の辺りとか手を回して持ってくれてもいいよ」


 選択肢があるとは思わなかった雫は、少し悩んだ末に、片手でベルトを持ち、もう片方は一颯の腰付近の服を少しだけ掴んだ。


 すると、遠慮している手を上からグローブで押さえられ


「しっかり持っててね」


と言われ、雫は一颯の身体に沿うように腕にギュッと力を入れた。

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