25 噂話
親子バイク教室に行くことにした後、雫と一颯は、交換した連絡先で度々メッセージを送り合った。
また、雫は卒業旅行で渡来家にお土産を買ってきたが、学校などで颯流に渡すと目立つので、一颯にお土産を託したいと言い、じゃあせっかくなのでお茶でもしながらと、二人で会う機会もあった。
「颯流のファン、熱狂的な子もいるからね。学校の方ではやっかまれてない?」
一颯は笑いながら言った。
雫は
「私は大丈夫です。『ノート借りる子』って言われてますから」
と自分の噂を言って笑い返した。
人気者の颯流くんと、目立つ存在ではない自分は、変な噂はされない
とのことだった。
「颯流はそんな……ノート借りるだけだなんて、思ってないと思うよ。雫ちゃんといて楽しいんだと思う」
雫は微笑むと
「一颯さん、無理しなくていいですよ」
「いや、ホントに!颯流は、雫ちゃんのこと気に入ってる……んじゃないかなと、思ってるんだけど」
それを聞いて雫はクスクスと声を上げると
「本当に一颯さんって……」
と言い掛けて、口をつぐんだ。
「俺が……何?」
雫は「何でもないです」と誤魔化したが、「途中でやめられると気になるんだけど!ほら、怒らないから正直にお兄さんに言ってみなさい」と、一颯が冗談めかして何度も突っ込み、それでも雫は笑いながら「言わないです」を繰り返して逃げていた。
一颯が「まぁ、どうせあんまり良い話じゃなさそうだけど」と笑いながら拗ねたように言ったため、雫はとうとう白旗を揚げた。
「すみません。一颯さんが私に気を遣われてるので『優しいですね』って言おうとしたんですけど。『優しい』はよくないですよね」
少し悪い顔をしながら、雫は一颯を見上げた。
一颯は、雫とこんなにも打ち解けられるとは、当初、想像も出来なかった。
二人がぎこちなくなったきっかけの話題も、今ではサラッと言えるようになったことに、なんとなく嬉しくて
「褒め言葉ならいくらでも受けるよ。なんなら『優しい』だけじゃなくて、『お兄さんの方が男前』くらい言ってもらいたいな」
とニヤリとして雫を見ると、雫は自然に
「一颯さんは格好いいですよ」
と即答した。
ここは「残念ですが、颯流くんの方が断然、男前です!」くらいのことを言って否定してもらう流れだったのが、また予想外の返答をされ、一颯は戸惑った。
この子はたぶん、自分の走る姿のことを格好いいと言ってるんだろうが
一颯が困っているのを察知した雫は
「私、こんなこと、一颯さんファンに聞かれないように気をつけないといけないですね」
と笑った。
雫は何も知らずにそう言ったが、この時、次男の渡来颯流のファンの中では、密かに
『最近やたらと、颯流くんにアピールしている女がいるらしいよ』
との噂がそれとなく流れ始めていた。
そして、しばらくしてその噂に、もう一つ、追加された内容があった。
『それにね……。その子、ついでにお兄さんの一颯さんにまで手を出そうとしてるんだって』




