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22 三男

 (そう)は、中学生ながら、自分の噂を知っていた。


 今の時代は、ネットで検索すれば何でも出てくる。

 自分はどうも、兄二人が自分の年の頃より、マシンの性能の進化等の差はあれ、実力的に上をいっているのは間違いなかった。


 一番末っ子が一番才能がある


とまでハッキリ評価する文章も目に届く。


 しかし、颯は知っていた。

 三兄弟共にバイクレースをしているというのはあまりなく、その珍しさから自分達はある程度メディアに取り上げられる。

 ただ、親子や兄弟ライダーなら、別に有名でなくても、その辺にはたくさんいて、調子に乗った息子や弟が、ことごとく転落したバイク人生を歩むことになった結末や、一方で、これまた才能のない弟なんかに抜かされるわけないとあぐらを掻いていた兄が、コテンパンに弟にやられ、レースの世界から去っていくのもまた然りだった。


 渡来(わたらい)三兄弟を囲む人達は、親も含め、颯自身も恵まれていると感じるほど、本当に自分に良い影響を与えてくれる人ばかりで、三兄弟を下手に祭り上げる人達はほぼおらず、真に自分達を思い


「努力もせず、調子に乗ったやつは、必ず失敗し、奈落の底に落ちていく」


との教えを語ってくれる人が多かった。


 中学生の颯に


「お前はハッキリ言ってかなり才能がある!ただ、それに溺れたら負けだ!自分を律しろ!」


と、親父か兄二人の絡むバイク関係者だとは思うが、大勢の集まりの中で、自分には、昔のレジェンドなのか、メカニックの一人なのか、スポンサーのお偉いさんなのか、誰だかよくわからないような人が、よくわからない難しいことを酔っぱらいながら言ってくるので


 律するって何だ?


と検索するのが、颯の人生の一部だった。

 それほど颯は、常に大人の世界の隅っこにいて、いろいろなものを見聞きし、見極める力を身に付けてきた。


 しかし、颯は他人からの教えがなくても、普通に兄二人を尊敬していた。

 当然、昔は男ばかりの三兄弟、取っ組み合いのケンカをするのが日常茶飯事だった。

 ただ、今は才能、才能と人は言うが、バイクの才能だけでは生きてはいけないことは悟っていた。

 一颯兄(いぶきにい)は一颯兄の、カケ兄はカケ兄の、良いところや悪いところも含めて二人は凄いと本当に思っていた。

 自分の『才能』と言われてもよくわからないし、結局は、経験がない分、兄二人から様々なことを盗むというのが自分の糧だったからだ。


 颯は、自分より年上のお姉さん達を案内しながら、最初に(しずく)さんに会った時の印象は落ち着いた大人しい人だったのに、8耐であまりにもバイクに興味津々になった雫の姿を見て


 子供みたいだな


と失礼ながら思ってしまった。


 自分の解説を熱心に聞く様子も、自分が先生にでもなったかのようで、中学生の自分が何もわからない生徒に教える満足感があった。


 颯はこの8耐での雫の様子を颯流には伝えたが、何故か兄の一颯には言うことができなかった。


 雫さんは、兄達に興味があるんだろうか


 そう思っていた。

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