21 次男
颯流は、上でも下でもない、いつも真ん中でいつも中途半端、という自分に嫌気がさしていた。
兄の一颯は、自分より先にバイクの道に入り、自分はずっと、ただただお兄ちゃんの後を付いていくだけの存在だった。
そして、兄と同じ舞台に立てるようになった今をもってしても、兄の経験の深さや落ち着いたレース展開を見る度、自分は必死さだけが売りの、しがない小者に感じていた。
弟の颯はまだ中学生のため、同じ土俵で試合をする立場ではないが、颯に類い希な才能があることは、嫌でも感じざるを得なかった。
三兄弟の中で、颯流は一番男前でモテる
と言われることすら、そんなことに話題を持っていかれる自分が本当は心の底から悔しかった。
だから、逆に、バイクに興味のある女の子は表面上だけの付き合いにして、深い関わりは避けていた。
兄と弟に挟まれた、見た目だけの才能のない次男
と思われることが怖かった。
一方で、自分という者を作り上げているバイクに「興味がない」と言われるのも、また自分を否定されているようで納得がいかないという矛盾を抱えていた。
同級生の春田 雫は、バイクに一切興味がない子だった。
でも、彼女からは何故か自分やバイクを否定されたいう印象は受けなかった。
とても綺麗な文字でノートを書き、わかりやすく自分で図解で示し、勉強する。
そういった真面目で大人しい女の子だった。
レースに行っても
たぶん人の後ろを付いて行くだけなんだろうな
他人の解説を、黙って真面目に聞いているだけなんだろうな
とは思ったが
でも、まぁ、ちょっとでも、バイクが走るところを見て面白いと思ってくれたらいっか
と颯流は考えていた。
そして、終わった後に
走る姿が格好よかった
と言わせたいと、強く思った。
ただ、8耐のコースを案内した颯によると、雫は知ったかぶりをしたり、変に格好いバイクや選手に興味を示したりすることもなく、終わった後は「楽しかった」との感想を言っていたとのことだった。
その辺りはある程度予想していたことだったが
「気付くと、途中で急に立ち止まってジーッとその場でバイクを見続けたりしてんの。だから、後ろ振り向いたら雫さんだけいなかったとか結構あってさ。そしたら、あの人、自分でも、ヤバイ集中してた!みたいに、慌てて追っかけてくんの。そうかと思ったら急に僕と結香さん追い抜かしていって、コースが見えるポイント探したりとか。あの人、意外と面白いお姉さんだったよ」
と颯は笑いながら雫を評価した。
颯流は驚いた。
本当にあの雫ちゃんが、サーキットでそんな様子だったのか
もしかして、まだ自分は、本当の彼女を知らないのかもしれない
颯流は雫がどういった人なのか知りたいと思い始めた。




