表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/41

16 恐怖

 ヘアピンカーブ


と聞けば、誰しもがヘアピンのあの丸い先の形を思い出す。

 ありきたりではあるが、一番どんなコーナーかがわかる命名だ。


 ライダー達は急激に減速し、そして加速していく。

 いつもは瞬速で走り抜けるバイクが、コーナーの真ん中で止まったようにすら見えるため、写真を撮るには絶好のスポットだ。

 カーブが終わった場所から、進入方向に観戦すると、バイクの動きの強弱に合わせ、爆音が一気に突然の静寂へと落ちたかと思えば、また物凄い勢いで音がクレッシェンドし、バイクは目の前から消えていく。


「かなり減速するんで、ここでライダーの様子が見ててよくわかります。滑らかに抜けていくライダーもいれば、ちょっと疲れて集中力を切らしていそうなライダーもいます。この暑さですけど、一颯兄(いぶきにい)も……うん、大丈夫そうですね。まだ余裕あると思います」


 駆け抜けたバイクを見て(そう)が力強く断言した。



「そりゃ、僕だって早く8耐には出たいですよ」


 颯はそう言っていた。


「でも、まだ無理ですし。兄達が羨ましいです。でもね」


と颯は、(しずく)結香(ゆいか)を見ると


「僕は、兄達よりも速く走ってみせますから。楽しみにしといて下さい」


と笑った。




 雫はヘアピンカーブを見つめた。

 一台のバイクに注目し


 かなり暑いよね

 でも大丈夫そう


と少し安堵した。


 ただ、その後


 どうしよう


という思いが湧き上がった。


 雫は混乱した


 自分は一体どうすれば良いのか

 そして、どうしたいのか


 それすらわからなかった。


 アクシデントがあったのか、実況中継の声が響く。


 雫はまた手で顔を覆った。


 怖い

 来るんじゃなかった


 その思いと


 ちゃんと見届けなくちゃ


との思いが交錯する。


 ダメだじっとしてちゃ

 とにかく歩こう


 雫は次のコーナーへと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ