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マールと勇気の杖



 十八歳のマールは思っていました。どうしてみんな顔だけみてわたしのことを美しいというのかしら、私は中身も美しいのに。

 

 ある日のこと、マールの家にどろぼうがはいりました。どろぼうは金目の物がないか家をさぐっていました。

そこにマールがぐうぜんでくわしました。マールは勇気も美しさの一つだと思い、どろぼうに立ちむかいました。マールは強く、どろぼうを退治しました。


 その勇気ある行動は町中のうわさになり、王子の耳にもはいりました。王子はマールをきゅうでんに招きました。

きゅうでんは白色のかべに大きいおうごんのたまねぎみたいな丸いものが上にのってました。それはとてもごうかにみえました。マールはわくわくしてきました。

 

 きゅうでんに入ると王子が出てきました。王子はいいました。

「きみは美しいだけでなく悪い奴を退治する勇気ももっていてすばらしい。」

マールはうれしくなりました。だって、王子のおよめさんになることがマールの夢だったのですから。


 王子はマールの勇気に感動して、ばんさんかいにマールを誘いました。マールはうれしくて、きゅうでんの、いっしつでとびはねました。


 ばんさんかいがはじまりました。長いテーブルが置かれています。王子はそのテーブルのはじに座っています。マールはそのとなりに座りました。


 料理が運ばれてきますがマールのあたまの中は王子のことでいっぱいです。たべものものどがとおりません。

「具合でも悪いのか?」王子は、ほほえみながらきいてきました。

「いえそうではありません。王子のことを考えると胸がいっぱいになるので、食べれないのです。」

「そうか。それはうれしい。」王子は歯を見せてわらいました。


 王子の機嫌が良くて、マールはうれしくなり、マールは王子の食べるすがたをじっと見ていました。


 王子がスープに手をつけたところで、事件は起こったのです。王子がスプーンを床におとすと、王子がパタリと椅子から床にたおれてしまったのです。

王子は床に倒れてうなっています。マールはさけびました。

「誰か助けに来て。」

すると医者がかけつけてきました。


 医者は王子をみるとすぐに部屋にはこぶよう家来に命令しました。家来は、王子を部屋に運びました。

ベッドで苦しそうにもだえる王子。医者は王子を診ていいました。

「これは毒をたべたにちがいない。このままでは王子は死んでしまう。」


 マールは悲しみに包まれました。

「どうして王子があんな目にあわなきゃいけないの?」


 夜になりました。マールは自分の部屋にもどっていました。マールはまどを、開けて、すっかりよるになった空をみていました。そのときです。流れ星が見えました。マールはすかさず

「どうか、王子をたすけてください」と、

といのりました。


 すると夜だというのに自分の部屋の鏡が光りだしました。とてもまぶしくてマールは目をつむりました。


 光の中からなにかがでてきました。マールはおどろいて、しりもちをついてしまいました。ひかりのなかからあらわれたのは、手のひらサイズの人間のような何かです。頭には、青いぼうしをかぶっています。そして背中には羽がついていました。

「君かい呼んだのは?」

マールはびっくりしてしりもちをついてしまいました。

「あなたは誰?」

「ぼくは妖精だよ」

マールは喜びました。なぜなら妖精なら王子を救ってくれると考えたからです。

「王子が毒を食べて、たいへんなの助けてください」と、マールは言いました。

 ようせいはこたえました。

「私はなんでも願いが叶う杖を持っている。勇気の杖と言う。本当に勇気があるものだけが使いこなせる杖だ。」

「私、勇気ならあるわ。どろぼうを退治したことだってあるんだもの。使いこなせるわ。」

 

 ようせいは帽子の中から、杖を出してきました。杖は妖精の体よりもずっと大きく、人間の手にちょうどあう大きさでした。

「使いこなせるならこれで、願いを叶えるがよい。」

マールはつえを持ち、願いを言いました。

「どうか王子を助けてください、王子のことが好きなんです。」

 すると、杖が虹色にひかりだしました。光に包まれたマールは気持ちよくて眠ってしまいました。

翌日の朝、マールは目を覚ましました。マールは急いで王子のもとへ行きました。

部屋に入ると王子がふだんどおり朝食を食べていました。願いは叶ったのです。マールは大変よろこんで、王子にかけよりました。すると王子はおどろいた顔で言いました。

「あなたはだれですか?」

 マールはふしぎに思いました。そして、部屋の鏡で自分を見ました。するとそこに映っているのは、しわだらけの、老婆のすがたでした。おどろいたマールはその場からにげだしてしまいました。

マールは走りました。そして、きゅうでんの外に出て、うねうねした道をたどり、町から離れた、誰もこない、湖のほとりに辿りつきました。

湖にうつる自分のすがたを見ながら、どうしてこんな事になったのだろうとマールは思っていました。ふと、マールは手にしているつえにむかって話しかけました。

「どういうこと、なんで私が老婆になっているの?」

つえはだまったままです。

すると、杖が光を発しました。そして光の中から、妖精がまた出てきました。

「その姿、どうやら君には勇気がなかったようだね。」

マールは妖精の言葉を聞いて顔を真っ赤にしました。

「何よ、私に勇気がないって事?そんなはずはないわ。だって私どろぼうをつかまえたんだもん。」

「本当の勇気を出せば、元の姿に戻れるかもしれないぜ。」

妖精はそう言うと消えました。

 

 マールはその場にたちつくしたままでした。

頭の中で、『本当の勇気』という言葉を何度もくりかえしていました。

 

 夕日が沈むまで考えていたマールは、ある考えが思いうかびました。

「つかまえたどろぼうが一人だったからいけないんだわ。もっと悪い人間をつかまえれば、元の姿にもどれるわ。」湖に映った自分に納得させるように言いました。

 マールは杖がまだ使えるかどうか、調べました。「勇気の杖よ、手鏡を出してちょうだい。」


 杖をふるマール。すると杖が虹色に光り出しました。光がマールを包み込み、やがて光が収まると、マールの手には手鏡がありました。マールはよろこび、町にむかいました。


 町についたマールはゆうきのつえにむかって言いました。

「この町にいるどろぼうを、教えてちょうだい。」


 するとつえは虹色にひかり出し、一人の男が現れました。男は緑色の瞳でした。

マールは勇気を出して聞きました。

「あなた、どろぼう?悪い事をしているならつかまえるわ。」

男は言いました。

「そうだ、俺はどろぼうだ。なにか文句あるか?」


 マールの心は決まりました。

「勇気の杖よ、このどろぼうを縄で縛ってちょうだい。」


 杖は再び、虹色に光りだすと、その男を包み込みました。そして光が収まると、男は縛られていました。

しかし、男はだまったままです。


「待ってなさい、いま警察官を呼んでくるからおとなしくしているのよ。」

マールはよろこぶのをがまんしながら、あたりの人に向かって言いました。

「だれか、けいさつかんは知らない?」

すると、近くにいた少女が言いました。

「あっちのほうにけいさつかんがいるわ。」


マールは少女が指さすほうに向かって走りました。少し走ると、すぐに息がきれます。それでもマールは元のすがたにもどるため、必死で走りました。すると、赤いレンガでできた、八百屋の前で、警察官見つけました。

「警察官さん、わたしどろぼうをつかまえたの。お願いこっちにきて。」

警察官は最初は、驚いていましたが、どろぼうと聞いて、我に返りとぶよう走って、緑色の瞳の男の前までやってきました。

「君はどろぼうかい?」

「そうだ」

緑色の瞳の男は言い訳を、いっさいしませんでした。

「それならばたいほする。」

けいさつかんは男を連れていこうとしました。しかし、男はさりぎわにマールに言いました。


「おれにはむすこがいる。小学校に入ったばかりの子だ、どうか俺に変わって面倒をみてくれないか?」


 男からの思いがけない願いに、マールは受けるかどうか迷いました。マー

ルにとっては関係ないことです。そうこうしてる間に男は警察官につれていか

れました。


 マールは後ろ髪をひかれる思いがあったものの、どろぼうを退治したことをよろこびました。


「これで元のすがたにもどれたかしら?」マールは手鏡をとり、自分の姿を見

ました。しかし映っているいるのは老婆でした。マールはがっかりしました。

つかれたマールは町をさまよい歩きました。


 町にはしあわせそうなカップルが歩いています。マールは、わたしも王子と結婚出来るはずだったのにどうしてこんな事になってしまったのだろうと思いました。




 気分が良くないマールは郵便局の前のベンチで座っていました。すると、大人のさわがしい声が聞こえてきました。マールは目を郵便局のほうに向けました。マールの目に映ったのは、緑色の瞳をした男の子が、大人の男につかまえられているのです。

「こらっ、なにを盗んだんだ、服の中を見せなさい。」


 どうやら、郵便局の主です。緑色の瞳の男の子はだまったままです。気になったマールはその場に近づいていこうとした時でした。顔は美しいけれども、汚い服を着た金色の髪の女がその少年をかばったのです。


「どうか、許してやってください」

 

 主は答えました。

「君はこの子の姉かい?」

「いいえ、ちがいます。でもこの子に悪気はなかったんです。そうよね?」と、金色のかみの女は言いました。

「とりあえず盗んだものを返せ。」と、ゆうびんきょくの主は言いました。


 少年は女にうながされて、服の中からハガキを出して、郵便局の主に渡しました

「ごめんなさい。」小さい声で少年は言いました。

「もう二度とぬすむなよ。」そう言って主はゲンコツを少年の頭に落として去っていきました。


金色のかみの女は少年をはげましながら、一緒に、歩いて去っていきました。


マールはこの出来事を見て思いました。なんで、罪をゆるすのよ、あの女ゆるせない。マールは勇気の杖を取り出しました。そして、


「あの金色の髪の女が不幸になるようにして。」


 杖は、虹j色の光を放ちました。一仕事終わったと、思ったマールは、少年と金色の髪の女の後をつけました。表通りから離れた、河川敷の青いテントがある所まできました。そこで女と少年は別れました。

 

 マールは気になっていた事を確かめるため、テントに近づき、少年を呼びました。

「ちょっと、誰かいるんでしょ。出ておいで。」少年は不思議そうな顔でテントの中から出てきました。


「呼んだ、あなたですか?」

「そうよ。私の名前はマールっていうの、あなたのなまえは?」

「ぼくのなまえはエイル。」

「エイルくん、どうしてこんなきたないテントでくらしているの?」

「家はお金がないからすめなくて、それでも父さんとなかよく、くらしてたんだ。」

「くらしてたって事は、今はいないの。」

「それは… … 。」


 何かを言いかけて、エイルはだまってしまいました。マールは気付きました。あの日、杖でつかまえたどろぼうはこの子の父親だと。ばつがわるくなったマールは、エイルと話しているとちゅうで、逃げだしてしまいました。


 それから、しばらくのあいだマールは町をふらふらと歩いていました。すると、金色の髪の女が郵便局からハガキをもって出てきました。他にも袋に包んだ何かを持っています。マールは一言、謝ろうと思いました。しかし、マールは、驚いて近づけませんでした。なんとその女は、靴をはいてなかったのです。マールは勇気の杖を使い、なぜ、彼女が靴をはいていないのか聞きました。すると杖は答えました。

「エイルにパンとハガキを買ってあげるために、自分の靴を売ったんだよ。」


 マールは自分の勇気と金色の髪の女の勇気を比べて、落ち込みました。そし

て、本当の勇気とは何かという事に気づきました。しかし、それはマールにとって耐えがたいものでした。そこで、マールはエイルに相談する事にしました。


 河川敷のテントの近くまできたマールは前と同じように、エイルを呼びました。エイルはパンを食べながら出てきました。

「おばあちゃん、なんの用?」エイルが尋ねました。

「そっか、今の私はおばあちゃんなんだね。ところで、ハガキもってる?」

「ハガキもらったんだ。やさしいお姉ちゃんんに。」

「そう、それはよかったわね。ところでそのハガキはどうするつもりなの。」

「父さんが遠い所にいるから、『ぼくの事は心配しないで、元気でやってるから』って伝えようと思っているの。」

「そう。」

マールの目から涙が溢れました。そして本当の勇気に目ざめました。

 

 今日はおうきゅうで、舞踏会が行われる日です。王子のお嫁さんを探すためです。金色の髪の女は家でそうじをしていました。女を外によびだすと、勇気の杖を使って不幸をとりのぞき、きれいなドレスとガラスのくつをプレゼントしました。そしてかぼちゃのばしゃを、用意し、言いました。

「あなたは王子と結婚するのにふさわしいわ。」

馬車は、おうきゅうへと走っていきました。


そして、マールは午前十二時になったころ手鏡で、自分のすがたを見ました。すると元のすがにもどっていました。マールは思いました。これから先何もこわくない。本当のゆうきを手に入れたのだからと。


いっぽう、エイルはテントでくらしていましたが、突然、国から、住むところを与えられました。なんでも、プリンセスからのおくりものだそうで、父親がかえってくるのをまちわびているそうです。(完)


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― 新着の感想 ―
文章は拙いけれども王道のストーリーにスパイスが効いてて面白かったです。ネタバレ要素が強いのでこれ以上は書けません。
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