表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死逢わせ  作者: 夏目 莉々子
繰り返し何度も
32/54

繰り返し何度も⑦

 懐かしい記憶。大切な思い出。行動原理。


 縁は自分のやってきたことに後悔なんてなかった。


 もう少し、もう少しだけと思い出に浸っていると、誰かがヘルの肩を叩く。

 その瞬間、ピシッと思い出の大海原に亀裂が入った。


(ああ、もう終わりか……)


 亀裂からはドス黒い現実が這い出てきて、海を眺めて砂浜にポツンの突っ立っていた縁を飲み込む。

 楽しくて温かな思い出はあっという間に記憶の隅に追いやられていき、強制的に現実へと意識が戻る。


 閉じていた目を開くと、目の前には見慣れた資料室の風景。どこまでも続く果てしない先の見えない空間。

 そしてそっと後ろを振り返れば、ヘルに声をかけたであろう資料室長がそこにいた。

 資料室長はヘルの肩に置いた血の通っていない手をゆっくりと下ろしながら真顔で要件を話す。


「アイ様がお呼びです」

「……わかりました。ありがとうございます」



 これまでも何百回、何千回、何万回と幸せな過去を思い出した。

 ここで死神として頑張る理由を忘れないため、魂に飲み込まれないため。そしてもう二度と『あんなこと』だなんて思わないために何度も何度も繰り返した。


 もう一度だけ目を閉じる。


『縁、今日ね』

『見て! 可愛いでしょう〜?』

『幸せが二倍だね』


 目をキラキラと輝かせて。

 自慢げにドヤ顔をしながら。

 涙を拭きながら笑顔で。


 どれも忘れられない大切な思い出。

 今だけは春日縁に向けられた大好きな笑顔を思い出して、何者も入ってこないうちに脳裏に焼き付ける。


「……よし」


 頭の中を整理し、精神を落ち着かせる。

 これからまたいつもの仕事が始まる。

 内容を確認し、現場に赴き、魂狩りを行う。そのあとは魂と同調して死神界まで持って帰ってきて、また新たな任務を行う。繰り返し何度も行うだけだ。


「まずは殺人処理部か」


 わざわざヘルの居場所を特定して呼び出すほどだ。次はどんな任務をすることになるのか。ヘルは気を引き締めて資料室を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ