繰り返し何度も⑥
「……え? プレゼント?」
翌日、縁は通された彼女の部屋で昨日買ったプレゼントを渡していた。
サプライズにしようかとか、もっとロマンチックにしようかとか、色々考えながら彼女の家まで来たが、結局ありきたりな言葉しか浮かばなかったため素直に手渡すことにした。
「嬉しい! ありがとう。今開けてみてもいい?」
「おう」
「えへへ、袋可愛い……。え、ここにも雲ちゃんがいる。この子可愛すぎない?」
可愛いを連呼しながらじっくりとふわリン仕様の包み紙を堪能する。
まだプレゼントの中を見ていないのに、目の前の結衣があまりにも嬉しそうにするもんだから、もうそれだけでプレゼント買って良かったと思えた。
包み紙を満足のゆくまで堪能した後シールを丁寧に剥がし、ようやっと中身を確認する。
次の瞬間、ぱあっと更に表情が明るくなった。
「か、可愛い! うわあ、私の好みドンピシャだよ。縁はエスパーなの?」
そして予想通りの反応を見せてくれた。
「気にってもらえてよかった。その子、ふわリンっていうんだって」
「へえ、ふわリン……ねえ縁。ちょっと一回石油王になってもらってもいい?」
「何がどうしてそういう思考に至った。そんな気軽になれるもんじゃないからね?」
「だってこの子可愛いから。きっと他にもグッズあるんでしょう? キーホルダーとかぬいぐるみとか」
「まあ確かにあったけどさ」
「いいな〜。この袋もシールも可愛いし、私もそのお店行きた……あれ、まだ中に何か入っている?」
そう言って包み紙の中から出したのは縁が熟考して書いたメッセージカードだった。
変なことは書いたつもりはないが、本人にまじまじと目の前で読まれると無駄に緊張する。ごくりと唾を飲み、結衣の反応を待った。
彼女はじっとメッセージカードを見た後、パッと顔を上げた。どこか泣きそうな顔をしながら縁を見つめ、声を振るわせながら口を開く。
「一緒に行ってくれるの?」
「もちろん」
「時間かかるかもしれないよ?」
「大した問題じゃない」
「たくさん迷惑かけちゃうかもしれないよ?」
「俺は結衣と一緒に行きたいんだ。そしたら楽しさが二倍だろ?」
縁の答えは決まっていた。
結衣のやりたいことは全力で応援するし、サポートするつもりだった。
一人で行って、彼女のことを思いながら好きなものを探すのも悪くはないが、やっぱり一緒に行ったほうが楽しいし、嬉しい。
「うん、うん! 幸せが二倍だね」
恥ずかしいと言いながら涙を拭く彼女は綺麗だと思った。
「ああ。……綺麗だ」
なんの脈略もなく、自然と言葉が溢れる。
縁自身、言葉を発した自覚がなく、結衣の驚いた表情を見て口に出していたことに気づく。慌てて口を手で押さえて様子を伺うと少し照れた様子で彼女は屈託なく笑った。
(そうだ、そうだよ)
前に繋吾に問われた言葉を思い出す。
『お前に何が出来る?』
体も心も成長途中で大人になりきれていない中学生の縁。
そばにいる、知識をつける、優秀な医者を探す、いろんなことを考えたし、やれることはすでに行動を起こしている。
だけど、一番大切なことは結衣を笑顔にすること。この笑顔を守ること。
どんなにそばにいても、知識をつけても、優秀な医者を探したとしても、彼女が笑顔じゃなきゃ意味がない。
何年先も彼女が笑顔でいられるように、縁ができること。
そんなの考えるまでもなかった。
『一緒に行こうな』
たったそれだけのメッセージを見た結衣が嬉しそうに笑う。
こんな些細なことでいいんだ。小さなことでもこれからたくさん笑顔にしていくんだ。




