魔王
ああ、よく来たのう。待っておったぞ。
ほっほ、今日来ることは、当然わかっておったさ。
立ち話もなんじゃ、ほら、そこに座りな。
焦るな焦るな、どうせ結末は変わらんのじゃ。
少しくらいゆっくりしても、バチは当たらんよ。
どれ、茶も出してやろう。魔女の茶じゃ、味わって飲めよ。
さて、それじゃあ望みを聞こうかね。
……はぁ、本当にお主等は変わらんのう。
いつの時代も、やることは一緒じゃ。
力、力、力、それまた力。まったく、流石に嫌になってくるわ。
まあ良い。わしもまた変わらんのは一緒じゃ。
それで、対価はなんとする?
ほう! 全て! 全てとな!
軽々しく差し出せるようなものではないぞ。
その意味も、わかっておろうな。
血も肉も魂も、そしてお主の想いさえも差し出すということじゃ。
ほほっ、ここで考えを変えるようなタマではないか。
よし、ではやろうか。
うん? 随分あっさりじゃと?
最初に言うたじゃろ、結末は変わらんと。
どれ、ここは手狭じゃ、外へ行こうかの。
ふう……、ああ準備なぞいらんよ。この身ひとつで良い。
痛みは、まああるじゃろうな。
それがどれだけ続いても、感じられても、問題にはなるまい。
覚悟は良いか?
ほっほ、愚問か。
ではゆくぞ……。
……ほう、これまた随分溜め込んだものよな。
血と肉と、魂も逝ったようじゃな。
あとは想いじゃ。
それで全てじゃ。
どれ、最後に抱きしめてやろう。
この馬鹿者が――。
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かくして名も無き魔王が誕生し、世界は闇に包まれた。