嫌われ王子と偏屈魔女
ここはとある世界の小さな国で起きた不思議な出会いと、ほんの小さな恋の物語
ゲイン「はぁはぁ、、ここか!やっとたどり着いたぞ!町外れにある魔女の家というのは!」
城から城下町を抜け、魔物が出るという森をさらに奥に進み
開けた場所に佇む薄汚れた小屋を前に、ドラ息子で有名な王子のゲインが叫ぶ。
魔女「はぁー、、また噂に釣られてバカがきたのか」
ゲイン「はっはっは!この俺が誰かも知らぬか!噂通りの世間知らずの魔女みたいだな!」
魔女「フン!どうせあんたもまじないにすがりにきたんだろ、ここんところ毎日のように人がきて嫌んになっちまってんだよ
悪いが帰ってもらおうか」
ゲイン「何を言っている?俺はただ魔女とやらを一目見にきただけだ。
そもそもまじないなど好かんのでな。ごちゃごちゃ考えすぎるのは性に合わん」
魔女「ぷっ!なんて変なやつなんだい。能天気なのかとんでもない大物だねこいつは。
ゲイン「よく言われるよ
さてと、噂通りの美人と会えたことだしそろそろ帰るとしよう」
魔女「はぁ?//何言ってやがんだいいきなり!」
ゲイン「そうだ。来たついでだ、なにか悩みでもあればひとつくらいなら聞いてやる。美人だから特別だぞ」
魔女(つくづくマイペースな奴だな本当に)
「それなら、、もう一度くらい森を抜け違う景色の世界を見てみたいな、、嫌、忘れてくれ。あんたなんかにしょうもない話しちまったね。あんたのせいで私のペースまで狂っちまったみたいだよ」
ゲイン「何故そのようなことで悩む?好きなとこに好きなように行けば良いではないか?」
その言葉に魔女は怒りと悲しみと諦めの表情で「もう帰ってくれ」とだけ呟いた。
ゲイン「なんだったんだあの顔は。あんな顔するなんていったい、、」
気になったゲインは帰る道中酒場にいた男にそれとなく話を聞いてみた。
酒場の客「森のはずれに住む魔女ですって?もちろん知ってますよ。まじないが恐ろしく当たるもんで有名です。しかし最近は、、
噂好きの男「おい!ゲイン様に滅多な事いうもんじゃないぞ。」
ゲイン「どうした?かまわん聞かせてくれ」
酒場の客「へ、へぇそれが良い事ならまだしも怪我や病気、事故までも当たりすぎてまじないじゃなくて呪いをかけてるんじゃないかって噂になりまして。誰も近づかなくなってしまったんです」
噂好きの男「ここだけの話しなんですけどね、なんでも噂を聞いた王様はきみ悪がってか城の使いに監視させてるみたいなんですよ」
ゲイン(なるほど。だから外に出たいなんてことを言ったのか。知らずとはいえあまりにも無神経すぎたな、、)
ゲイン「そうか。概ね理解できた。時間を取らせたな。感謝するよ」
予想外の丁寧な台詞に住人は目をぱちくりさせた
男2人「!?滅相もございません!」
(聞いてた噂ほどドラ息子じゃないのかもしれないな)
城の兵士「おかえりなさいませ王子。今までどちらに?」
城の兵士の労いもおざなりに返し王子はズンズンと歩を進める。
奥に鎮座する王にゲインは問い詰めた
ゲイン「父よ」
王「どうした息子よ、またつまらんお願いか?」
ゲイン「違います。はずれの魔女はご存知でおられますよね?」
王「!?何故その名前を、、何を考えてるか知らんがお前が関わることではない!」
ゲイン「しかし!、、いえ失礼いたしました」、
ゲイン(大人しい父がここまで声を荒げるなんて、何かあったに違いない。最近母を病気で亡くしてからというものかなり落ち込んでいるようだし、どうしたものか、、)
次の日また魔女の家を訪ねようとするゲインの前に突如黒装束に身を包んだ男が数人現れた
黒装束の男「王子よ、どちらに?」
ゲイン(!?なるほどこいつらが監視員か)
「噂ではこの先に絶世の美女がいると聞いてな。どうにかして食事にでも誘うかと思ってきた次第だ。
、、そういうお前は何者だ?」
黒装束の男「、、、あくまでシラを切るということですか
貴方様は王子。くれぐれもおかしな気を起こさぬようお願い致します」
ゲインは監視員の圧を感じながらも魔女の家へと進む。
魔女「またお前か、、飽きずによく来るもんだ」
ゲイン「まぁな。一つ質問があるのだが、暫く前にある王を占いはしなかったか?
魔女「ん?あぁしたよ。2、3年前だったか。奥さんの身体を心配して良くなるかどうなのかを見てくれとな。
私は良くない未来が見えてな。辞めておけと言ったんだが、、残念だが何年先を見てもその女性の眠るように横たわる姿しか見えないんだと伝えたよ」
ゲイン「やはりそうだったのか、、」
魔女「まさかその女性とはお前の、、」
ゲイン「、、いいんだ。気にしないでくれ
さて!気を取り直して、、今日は面白い話しを持ってきたんだ!」
ゲインはこの国で流行りの遊びから、大好きな冒険譚を身振り手振りで興奮気味に話した。
ゲイン「もうこんな時間か。ではまた来るよ。明日を楽しみにしといてくれ!」
魔女「フ、フン!また来るつもりか!今度きたらお茶に毒を入れといてやるからな!」
ゲイン「怖いことを言うなー。じゃあ甘い解毒剤入りクッキーも頼むよ♫」
魔女「ったく。口の減らない男だよ。」
そう言いながらも気が付くと頭の中で自分の作れそうなお菓子を考えている自分がいた。
それからというものゲインは足繁く魔女の家に通った。
次第に魔女の蟠りは溶けていき笑顔を見せるようにもなるほどになっていた。
『城内』
兵士「最近王子はあの不幸の魔女にお熱らしいな」
兵士2「あぁ、このままじゃ王子まで女王様みたいに、、」
王「みたいになんだ?」
兵士2「い、いえ!」
(城の中にもよからぬ噂が立ち始めておる。早めに手を打たんとな。荒事にはしたくないが仕方あるまい)
王「ゲインよ。今日は城から出る事を許さん。いいな!」
ゲイン「?わかりました、、、
その日の夜
「本当によろしいのですか?」
王「かまわん!やれ!」
王の号令とともに魔女の家に無数の火矢が飛ぶ!
木で出来た家はあっという間に燃え広がり辺りは夕焼けのように赤く染まっていた。
そんな中に一人の男が飛び込む姿が見えた
「あ!あれはまさかゲイン王子、、!?」
王「なんだと!?」
ゲイン「大丈夫か!?」
魔女「フッ。まさかここまでされるとはね。
起きてみたらこの有様だよ。未来を占える魔女様がとんだお笑い草だね」
ゲイン「何言ってるんだ!早く逃げよう!」
魔女「どこに逃げるって言うんだい?こんな辺鄙な森の端っこに閉じ込められて生きてる意味がわからなくなってきたんだよ。
まぁ、でもあんたと話した日々は、たった数日だけど退屈しなかったよ
なんて、、最後につまらないこと言っちまったね。
さぁあんたまで死ぬことないんだから早く逃げな!」
ゲイン「、、わかったよ。。」
そう言ってゲインは炎の中に消えてしまった。
魔女「あーあ。最後まで惨めでつまらなくて、、そして素直になれない人生だったな、、もう少しだけあいつと話しがしたかった、、な、、」
ゲイン「じゃあ次は二人で新しい物語を作りに行かないか?タイトルは嫌われ者の魔女と王子でどうかな?」
魔女「!?なんでここに帰ってきた!?
死ににきたのか!?」
ゲイン「まだ君と話し足りなくてね
それに、、まだ死ぬつもりはないよ!」
魔女「何を言って、、」
二人の会話を遮るように耐えきれなくなった家屋が崩れ落ちてきた。
王「今走ってきたのは、、まさかそんな、、、」
兵士「ああゲイン様、、こんな激しい炎の中じゃもう、、」
王「ああ私は何処で間違えてしまったんだ、、」
数年後
王は悲しみに暮れ王の座を退き、次男の王子が継いだと風の噂で流れていた。
一方そのころ
大小様々な島が身を寄せ合うように成る国。ツキージ
その中でも一際小さい島に打ち上げられた小さな船があった。
?「全く!お前の命知らずさには驚くよ!」
ボロボロのローブを纏った女が吠える
?「そうか?周りに良く思われてないのは流石に勘づいてたからな。せっかく作った抜け穴が炎の中にあったのは焦ったけど、なんとか見つけ出せて良かった良かった」
男は呑気に言ってみせた。
?「そのせいで顔や腕を火傷するなんて、、ほんと馬鹿なことしたよあんたは」
男は即席で作った木の仮面をクイっと上げながら答えた
?「そういうなよ。仮面の男と魔女なんて最高にミステリアスな冒険が始まりそうだろ?
それに、、外の世界を見せるって約束したしな。」
そう言って仮面の男は笑い横にいる女性に手を差し伸べた。
?「フン!しょ、しょうがないからもう少しだけ付き合ってやるよ!」
魔女と呼ばれた女は恥ずかしそうに目を伏せながら手を取った。
?「ほんと、、いつになったら素直になるんだか。」
こうして凸凹な二人の物語は始まったのであった。
後に百年後も語り継がれる有名な絵本になるのはまだずいぶん先のお話