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三話

凄く久しぶりになります。

お待たせしました。

 鴇羽様が私を客室に運ぶ。


 意外と私を抱えていてもその足取りはしっかりしていた。腕もだ。


「……キャメリアといったか。名はこちら風に改めて呼ばせてもらう。椿はどうだ?」


「……お断り致します。キャメリアの名は両親からもらった大切な物ですので」


「なかなか言うな。わかった。キャメリア」


 断ったというのに。案外、すんなりと頷いた。それに驚いてしまう。

 鴇羽様は畳と呼ばれる敷物の上に私をそっと降ろした。


「……後で侍女を遣わせよう。そなた付きにさせる」


「ありがとうございます」


「キャメリア。今日はゆっくり休め。では。私は戻る」


 鴇羽様はそう言うと客室から去っていく。私は人知れずため息をついた。


 あれから一時間程して私付きになるという侍女が四人やってきた。ちなみにセリーヌとソフィ、ターニャ、チェリー、ツェナーは別室らしい。


「……主よりお方様のお世話を仰せつかりました。私は筆頭侍女で名を下野(しもつけ)と申します。右隣は(すずめ)、左隣が緋鞠(ひまり)、すぐ後ろにいますのは小瑠璃です。皆で一所懸命にお仕えさせて頂きます故」


「……わかりました。これからよろしくね。下野殿。それに皆さんも」


「はい。では。早速、お召し替えをしましょう。後、夕餉をお持ちしますね」


 下野はそう言うと手をついていた姿勢からすっと静かに立ち上がった。ちなみに右隣の雀という侍女はまだ幼いと言って良い少女だ。たぶん、十四歳くらいだろうか。真っ直ぐな黒髪を簪できっちりと結い上げている。ちょっと気の強そうな顔つきだ。たぶん、見かけ通りの性格だろうと思われた。瞳は薄い茶色だが。

 左隣の緋鞠は薄い赤色の癖っ毛を後ろに束ねていた。瞳は淡い水色だ。たぶん、この子は十七歳くらいか。健康的な感じで明るそうだ。まあ、わからないが。

 後ろにいた小瑠璃は少し年上っぽい。濃い茶色の髪を緩やかに束ねている。年齢は十九歳くらいか。おっとりとした雰囲気の育ちの良さそうな子だ。最後に下野は黒髪を雀と同じようにきっちり結い上げていた。ちょっと吊り目だがしっかり者に見える。年齢は二十六歳くらいかと思う。全員が薄い紅色の小袖を着ていた。帯は雀や緋鞠は濃い萌黄色で小瑠璃や下野が薄い蒸栗色(むしぐりいろ)だ。どうやら年齢によって分けているらしい。


「さ。雀に緋鞠はお方様のお召し物を持ってきなさい。小瑠璃は夕餉を取りに行く。わかりましたね?」


「……はい。では。失礼します」


「早く戻って来るのですよ」


 下野に言われて小瑠璃は軽く辞儀をすると。速歩きで客室を去っていく。雀や緋鞠は隣の部屋へと行ってしまう。私は下野と二人で待つ。


「……お方様」


「何か?」


「東和国にいらしてから日は浅いでしょうけど。あまりもたつく暇はありませんよ。心して掛かってください」


 私は黙って頷く。元からそのつもりだ。下野は満足したらしく微笑む。


「その意気です。明日から東和国の歴史やお作法を習って頂く事になっていますから。よろしく頼みますよ」


「わかったわ。しばらくはこちらで過ごす事になるのでしょう?」


「ええ。そうです」


「なら。鴇羽様を唸らせるくらいにはお作法や歴史、他の分野も習得してみせるわ。見てらっしゃい!」


「……少々たきつけ過ぎましたかね」


「……あの?」


 私がはっきりと聞こえなかったので問い返すも。下野はそれには答えずに苦笑いした。


「いえ。何でもありません。あ。雀と緋鞠が戻ってきたようですね」


「本当ね」


 私は答えると立ち上がった。下野は戻ってきた雀と緋鞠と一緒に持ってきた小袖などを確認する。


「では。着付けをしますので」


「ええ。頼むわ」


 下野は頷くと肌襦袢を手に取り緋鞠に指示を出す。こうして着替えをしたのだった。


 少しして小瑠璃が夕餉のお膳を手に戻ってくる。お膳には姫飯(ひめいい)や御味御付、大根の漬物に珍しい天ぷらと呼ばれる揚げ物があった。天ぷらにはエビやナス、甘藷(かんしょ)が使われているようだ。小瑠璃は私の前にお膳を置く。私は正座という東和国特有の座り方をしてお箸を手に取る。両手を合わせて軽く頭を下げた。


「……いただきます」


 そう言ってから姫飯の器を片手で持つ。そっとお箸で中身を摘まむようにして口に運んだ。噛みしめるとお米の甘みがじわじわと出てくる。器――お茶碗を置くと御味御付の器に手をつけた。少しだけお汁を口に含む。飲み込むと御味御付に使われているお味噌の塩っ気やお豆腐のツルンとした食感などが合わさってなかなかに美味しい。ご飯が進みそうだ。大根の漬物や天ぷらも歯応えがある。天ぷらは添えられた塩につけながら食べた。食材の味が引き立つ感じでお箸が進む。気がついたらほとんど食べきっていた。ちょっと恥ずかしくなったのは言うまでもなかった。


 湯浴みをしてから寝間着に着替える。寝床に入ったら不思議と眠気がやってきた。


(ふう。今日は色々あったわ。明日から新しい日々が始まるのね)


 ほうと息をつく。頑張らないといけないわね。父上に母上。フレンヌ国から見守っていてくださいね。まあ、お二人は健在ではあるのだけど。そう思いながら夢の世界に旅立った。


 

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