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5:苦く痛い傷

   5:苦く痛い傷



「化物めっ」


 激しい憎悪の眼差しが、カラに向けられた。


――まただ。


 オーレンを出て、この言葉を浴びせられたのはこれで三回目だった。

 油断していた。

 昨夜宿をとった村の、境を出てしばらく行った、人気のない静かな場所だった。

 所用で単身動くラスターに言われ、カラは薄暗い雑木林の陰で時間を潰していた。


 雑木林の横に、道を隔て青々とした草地が広がっていた。

 きれいに刈られた短い草の上に陽が降り注ぎ、とても気持ちがよさそうだった。

 誰もいないと思い、カラは木の影から足を踏み出すと、草地の陽の下に立った。                                                   

 暑い夏の日中だった。 外套は脱いでいた。

 その姿を、村の子供が見ていた。

 カラの身体が、色硝子のように透けていること、そしてその足下には、自分にはあるものが無いことに気が付き、親を、大人たちを呼び集めに村へ走った。


 気が付いた時には、カラは村の男達に取り囲まれていた。 二十人はいただろうか。

 村人に従いやってきた犬が、カラに向かい、激しく吠えたてている。

 昨夜泊まった宿の主人が、男達の輪から一歩進み出した。 宿を出て、まだ小半時しか経っていなかったので、カラの存在を、朧になりながらも、宿の主人は記憶をしていた。

 大きく息を吐き出すと、怒りに震える声でカラを罵った。


「化物め。 人間を騙して、喰らいにでも来たか。 胡散臭いとは思っていたんだ。 真夏だってのに、あんな分厚い外套を頭から被って、室内でも脱ぎはしなかった。 大方、その姿を隠していやがったんだろう?」


 酒に酔っているのか、宿屋の主人の目は黄色く濁り、座っているようだった。

 それは、カラを囲む周囲の他の男達も皆、大差はなかった。


「ち、違うっ。 僕は化物なんかじゃないっ。 ただの、ただの人間だよっ」


 カラは、泣きそうな顔になっていたに違いない。

 いくら自分の事を訴えても、いくら違うのだと否定しても、彼等の"思い込んでいる"ことに合わない限り、カラの言葉は、無意味で、空回りするばかりのように感じられた。


「ほざくなっ。 その姿が何よりの証だ。化物が人間の言葉なぞ真似して喋りやがって。 おい、もう一人いたな。 仲間はどうした、逃げたか、他の仲間を呼びに行ったかっ」


 ラスターは、自分が戻るまで陽の下には決して出ないよう、カラに言い残していた。

 その言葉を、カラは重く受け止めなかった。


――馬鹿だ。 僕。


 男達は、手に手に斧や鉈といった刃物を握り、じりじりと、カラを取り囲む輪を狭めていた。

 どこまでも青い空からは、夏の白く、激しい陽光が射し、その下に立つ男達の足下には、黒く濃い影が従っていた。

 男達の先に立ち、牙を剥きカラを威嚇している犬の下にも、黒々とした影が生まれている。


 しかしカラにだけ、影は従わなかった。


 あまりの陽の強さに、身体は常よりも透け、まるで光に溶け、消える寸前の虹のようだった。

 灼け付くような陽射しが、カラの視界を霞ませ、白い眩暈を誘った。

 意識がゆらゆらとして、真っ直ぐに立っていることが辛かった。

 牙を剥いている黒犬が、前傾し、今にもカラに飛掛かろう、という姿勢をとっている。


――化物。 どこに行っても、やっぱり僕、化物にしかなれないんだ。


 カラは笑いたくなった。


――何のために、あんな取引したんだろ。 こんな目にもう、遭いたくない、変わりたいから……なのに、僕はいったい、何、したんだろ――。


「やっちまえっ」


 中心にいた男が叫んだ。 犬がその声に応えるように吠え、地を蹴るやカラに猛然と踊りかかった。

 太く白い牙が、カラの眼前に迫った。


――もう、だめだ――。


 ぐるりを囲まれて、逃げ場はない。 カラは両腕で顔を庇うように覆い、かたく目を瞑り、その時を待った。 痛みを血を伴い、自分に死がもたらされる――。

 その瞬間を待つことしか、出来なかった。


 だが、そうはならなかった。


 鋭い、一陣の風が吹き降りた。

 犬の激しい悲鳴と、羽音、重い物体が地に叩きつけられる鈍い音が、続けざまにカラの耳に入った。

 男達のどよめきと怒声が、それに続いた。


「な、なんだこいつはっ」


「四足のくせに、翼があるぞっ」


「こ、こいつ、ひょっとして〈聖獣〉じゃないのか? 神殿の彫刻なんかにある――」


 男達のどよめきにつられ、カラは恐る恐る目を開けた。 開けた途端、端然としたラスターの姿が目に入った。 カラはその横顔を、喰い入るように見上げた。


「ラ、ラスター――」


 きりきりと張りつめていた気持ちが緩み、カラの声は震え、泣きそうになった。

 ラスターは、カラには目もくれず、眼前の男達を静かに見据えていた。 手には、鞘に収められたままの長剣が握られている。

 先ほど牙を向けてきた犬は、ガーランに押さえつけられ、地面に横たわっていた。 犬よりも小さなガーランの鋭く太い爪が、犬の肩や腹に深く食い込み、牙を剥いていた口は、大きな黒い嘴で咥え上げられている。

 犬の周囲には、赤黒い池がじわりと広がり、胸の悪くなる、鉄の香を含んだ、硬く生暖かな臭気が辺りに漂っていた。

 左側面では、数人の男が呻きながら地に臥し、カラを取り囲んでいた輪は崩されていた。 


「あんた、その剣、剣士……いや、その剣帯の紋。 〈方円の騎士団〉の徽章――じゃないのか? あんた、まさか騎士か? 本物の騎士なら、何故そんな化物を――」


 男の一人が、倒れている男達とラスターを見比べながら、怯えるように言った。

 その言葉を遮るように、昨夜の宿の主人が、上ずった声で叫んだ。


「こいつ、こいつがこの化物の仲間だっ!」


 男達は改めてラスターを見遣った。

 どこをどのように見ても、化物の仲間には見えず、むしろ、雲上人の如く、近寄り難い高貴さを滲ませる。 その端正な容姿と佇まいに、男達は躊躇と怒りを、綯い交ぜにざわめきだった。

 カラ達を睨む目は血走り、顔はどれも異様に強張り、蒼白く引きつっている。

 カラは怖ろしかった。

 真っ直ぐと向けられる、黒い感情に圧され、足はどうしようもなく震えた。

 だが、恐ろしさと同時に、理不尽を感じた。

 何故、身体が透けているというだけで、影が無いというだけで、こんな扱いを受けるのだろう。 別に、この村人達に迷惑をかけているわけでも、かけたわけでもない。

 ただ、黙って通り過ぎさせてくれればいいじゃないか――。


 男達は罵声の対象を、カラからラスターへと移し始めた。


「こんな女のような奴が、剣士。 ましてやあの、〈方円の騎士団〉に認められた騎士なんかであるものかっ。 大方、そういう触れ込みで人間を信用させ、ついでに、そのお綺麗な見た目で、人間様を誑かし近付こうってな魂胆だろうさ」


 男達は、互いの顔を見合わせながら、卑屈で下卑た笑いを浮べた。


「悪知恵と魔力の有る化物は、美しい人間の姿に化けるのを好む、と聞くからな。 こいつは、まさしくそれだろうさ。 まるで神の像そのままの姿だ。 化物のくせに、神を真似るとは、不届きにも程があるっ」


「その黄色い翼の獣も、ただの妖獣だっ」


「こいつ、他の仲間を呼びに行ってたんじゃないのか? だとしたら、まずいんじゃないか?」


「な、仲間の奴等が来る前に、こいつら、さっさと始末してしまうわねえと、きっとこっちがやばいぞっ」


「そうだ、殺せ!」


 一人が、とっさに出した言葉を耳にすると、周囲の者達は、考えることなく諸手で賛同した。 その目には、何を映しているのか分からない、虚空が広がっているようだった。


「殺せ、殺せ、殺せ――」


 数十人の男達が口々に、「殺せ」の、同じ言葉を繰り返した。

 有る者は呟くように、有る者は叫ぶように、ただひたすら、同じ言葉を繰り返し口にした。


 カラは次第に腹が立ってきた。

 怒りが、恐怖に取って代わっていく。

 無意識に、カラは腰の短剣に手を伸ばし、柄に手をかけ、握っていた。

 ラスターの肩に戻っていたガーランが、毛を逆立て威嚇の声を上げた。


「ガーラン。 お前は先に行き、この先の道を探しておくんだ――」


 主人の命に従い、ガーランは短く一声鳴くと、肩からふわりと舞い上がった。

 ラスターは振り返ることもせず、ここにきて始めて、カラに言葉をかけた。


「生きたくば、己で活路を拓け。 死にたくなくば、カラ。 生に執着し、己が果たすと決めた目的だけに心を集めよ。 生きるを求むるに妥協などは無用。 それは彼の者達も同じこと。 あとは――君の覚悟次第だ」


 ラスターの言葉が終わると同時だった。

 男の一人が鉈を振り上げ、猛然と向かってきた。

 ラスターはカラを右手で誘導しながら足を一歩引き、鉈を鼻先でかわすと、男の鳩尾に柄頭を沈めた。

 男は奇妙な短い呻き声と共に、どっと前のめりに倒れた。

 その音が呼び水となり、男達は、言葉にならぬ言葉を叫びながら一斉にかかってきた。


 ラスターは、川の流れに乗る木の葉が、川中の岩を器用に避け、前へと流れ進むように、向かって来る男達を、前後左右にするりとかわし、必要最低限の力で相手の急所を撃ち、倒していった。


 その後ろで、カラは必死だった。


 カラはただ、むちゃくちゃに短剣を振り回した。 剣の長さも、カラの腕の長さも、男達を威嚇する力すら持たなかった。

 数で勝る男達に、右から左から切りつけられ、カラは次第に、ラスターから引き離されていった。

 男達の振るう刃物が、容赦なく、次々とカラに向かい打ち下ろされてくる。

 カラの振り回す剣は、空しく空を切るだけで、どの男にも、髪一筋の傷を負わせることも出来なかった。 男達の懐に飛び込みでもしない限り、カラの攻撃は、ただひたすら空しいだけだった。


――なんとか、なんとかしなくっちゃ――


 息が上がり、身体が重く感じた。

 つい先ほどまで自分を突き動かした怒りも、身体が重くなるに連れ、身体のどこかへ沈み、見えなくなっていく。

 周囲には、一時でも身を隠せる物陰はなかった。 雑木林まで走り逃げ身を隠したくとも、背を向けて走りだすタイミングが見つけられない。

 襲い来る刃を避けるだけで、カラは体力を消耗していった。


 伸びた草に足を捕られ、打ち下ろされた鉈を避けるのが遅れた。

 左肩にサッと、熱い痛みが走った。

 じわりとシャツが湿り、肩から胸へ、赤い染みがみるみる広がった。 垂らした腕を伝い、指先から血が滴った。


――本気なんだ。 本気で殺すつもりなんだ。


 恐怖が、頭の芯まで締め付けた。

 殺される――。

 心臓が激しく打って、胸が痛い。 苦しい。

 呼吸が勝手に速く、浅くなり、上手く息を吸うことが出来ない。


「や、やだ。 僕、いやだ――」


 泣き出しそうなカラの言葉など、男達の耳には入らなかった。 ぶるぶると震えるカラの姿は、男達にはただ、傷を負った化物の姿としか映っていなかった。


「覚悟しやがれ。 化物」


 三人の男が、カラの眼前にいた。

 うち一番若い男が、口元に奇妙な歪んだ笑いを浮かべ、大鉈をゆっくりと振り上げた。

 その目は異様に血走り、カラを確かに見ているのに、他の何か、を見ているようだった。

 大鉈の黒い影が、カラの顔にかかった。


――あの刃が、僕の頭を――割る……


 想像した瞬間、何かが千切れた気がした。


「う、う、うわぁああっ――」


 カラは飛び出していた。

 無我夢中で、男の握る鉈の柄を掴み、力任せに奪い取ると、丸太でも抱えるように、男の太い右腕を捉えて抱え込み、カラの数倍はある男の身体を、紙で作られた人形のように軽々と持ち上げ、自分から出来るだけ遠く、離れた場所へと投げ飛ばした。

 カラの思いもかけぬ行動と力に、若い男はなんの対処もとれず、ただ高く、遠くへと投げ飛ばされた。

 運悪いことに、飛ばされた先には、剥き出しの大岩があった。 そして、高く放り上げられた分、落下の勢いがあった。

 激しく岩に叩きつけられた後、男はずるりと、一段低くなった地面に落ちた。

 落ちた男は息が出来ず、呻きを漏らすように口を数度動かすと、びくびくと数回大きな痙攣をし、口から赤い泡を吹き出したのを最後に、動かなくなった。


「お、おいっ」


 仲間の男二人が、落ちた男の脇に駆け寄り、口々に名前を呼んだ。 しかし、落ちた男は指先一つ動かさなかった。


「死んでる、死んでいるぞっ」


 仲間の男の叫びが、他の男達に衝撃を与えた。 カラには、男の言っている言葉の意味が、一瞬分からなかった。 分からなかったが、膝ががくがくと震え出し、手に握っていた大鉈は、どさりと地に落ちた。


 仲間の死を確認した男の一人が、ゆらりと立ち上がり、カラを指差し、叫んだ。


「殺せ、この化物を、殺せ――っ」


       ***


 椅子に座り、カラは俯いていた。

 円卓の上には、アルフィナの運んできた朝食が置かれていた。

 両膝の間に垂らしていた左手を見た。

 まだ、アルを払った時の感覚が残っている。

 アルの身体が飛んだ光景が、どっと床に落ちた時の音が、まざまざと蘇ってくる。

 そしてそれは、過去の苦い記憶も蘇らせた。


「――こんなつもりじゃ……なかったのに」


 〈闇森の主〉に《ふたつの宝》を渡すのと引き代えに手に入れた、身体的な強い〈力〉。


 身体が小さな上に、腕力もなかったカラは、力強さに憧れた。 非力なだけで馬鹿にした、鍛冶屋の弟子たちを見返したかった。

 力があれば、荷運びでもなんでも、ありつける仕事も増えると思った。

 単純な思い付きで望んだものであったが、たった一人で、大人でも見上げる大岩を動かせる力を得たことは、とても嬉しく、自慢したくて堪らないことだった。

 しかし、時間の経過と共に、身体に見合わない大き過ぎる力は、トラブルを招くことが多くなっていった。

 力の加減を誤って、手を着いた壁に穴を開ける、扉などの取手、場合によっては扉丸ごとを壊す、そんなことはしょっちゅうだった。


 この五ヵ月の間、カラ達は人目のない場所ばかりを通って来たわけではない。 時には人目の多い村や町を通過し、宿に泊まることもあった。

 カラは、極力物に触れぬようにし、必要な時は、細心の注意を払いつつ手足を動かした。

 だが、力の加減以上に注意を払っていたのは、影を持たない、透けた身体を見られないようにすることだった。

 人の目のある場所では、常に気を張っていた。 ラスターの背後に身を隠し、少しでも濃い影の下に身を置くようにしていた。

 それでも思わぬことから、カラの身体の異常を見咎められることが幾度かあった。

 説明をして納得されることは、まずない。

 特に、これまで通ってきた南部の田舎町では、オーレンと同じく、迷信深い人々が多く、カラを魔物、化物と怖れ、追い払おうとすることが、人々の当然の反応だった。 時には、あの村のように、化物をわざわざ「退治」しようとする村さえあった。

 言葉で分かってもらえない以上、見咎められれば逃げるしかない。

 逃げ切るには、防衛のための抵抗が、必要な場合もままあった。


 そして、あの事件が起こった。


 あの後、どうやって逃げおおせたか、はっきりとは覚えていない。 ラスターが加勢に駆けつけ、仲間の死に更に怒りに狂った男達の囲みを破り、呆然となっていたカラを連れ出した――。

 背後から、いつまでもカラを呪う男達の声が聞こえていた。

 あの時の、若い男の血を流し痙攣する姿が、仲間達の叫び声が、目に耳に、いつまでも張り付いて消えなかった。

 傷からの熱と悪夢にうなされながら、カラはこの時初めて、ラスターに、〈闇森の主〉との取引で得た〈力〉について打ち明けた。

 それからしばらくの間、夜は眠れず、人影を見るだけで怯え、手が足が勝手に震えた。

 そんなカラに、ラスターは何の言葉もかけなかった。 ただ、ガーランが時々、気紛れにカラの傍らで丸くなって眠った。


 力の制御を学ぶ必要を、カラは痛切に感じた。

 あれから三ヵ月。 ようやく最近、自分なりのコツが、身に付いてきたと思っていた。

 しかしちょっと油断をすると、アルに起きたような事態を招く。 むしろ、アルに対しては、まだ加減が利いていたくらいだった。

 だが、一歩間違えれば、アルもあの若い男と同じことになっていたかもしれない。

 そう考えただけで、身体が勝手に震えた。

 鼓動が早くなり、息が苦しくなる。

 カラは震える身体を屈め込み、床に触れた。

 床板はとても硬かった。


「痛いよ。 こんな床に叩きつけられたら、すごく、痛いよ――」


 アルが運んでくれた食事に、手をだす気にはなれなかった。 床に転がっていた小杯を拾い上げると、カラは両手で包み込んだ。


「――ごめん……ごめん……」


 しゃくり上げそうになるのを必死で堪え、カラは幾度も鼻をすすった。 どれだけの時間、そうして俯いていたか分からなかった。

 窓から差し込む光は、高さと白さを増し、静かに、窓と対面する壁を照らしながら、室内をいっそう、明るくしていった。

 明るく暖かな陽の光は、カラの座る円卓の辺りも照らした。 陽光に包まれているうちに、カラも徐々に落ち着きを取り戻した。

 袖で涙と鼻を拭い、のろりと顔を上げると、ラスターが剣帯に長剣を下げ、外出する支度を整えていた。


「ラスター。 どこかに――行くの?」


「――イリスには全て話してある。 カラ。 君はこの宿の敷地外へは出るな。 ガーランの件は、君とは無関係なことだ」


 それだけを口にすると、ラスターはカラを振り返ることなく、部屋を出て行った。

 扉の閉められる音が、妙に大きく感じられた。

 ラスターの残した言葉が、扉を閉めた残響と合い混ざり、カラの耳に繰り返し聞こえる。


 窓からは、眠りから醒め活動を始めたキソスの町の音が、遠くに聞こえ始めていた。





次回〈6:諍い・そして仲間〉に続きます。

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