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ヒュドラ毒

ずいぶんお待たせしました。

「何を言うミスミスアンバーブラウン。見たまえ。この男の首筋に傷があるだろう。この傷はある亜人と……そういう事する出来る傷でね。

 そういう事をする際に、舌にある針で首筋を刺すと非常に興奮作用のある体液が注入されるという訳さ。 おっとそんなごみを見るような目で見ないでくれ。男貴族のたしなみみたいなものだ。


 んんっ! 先程いたあの亜人の体液が突然効果が変異してこういう結果を招いてしまったか、興奮のしすぎで死んだ。と私は見ている」



 途中咳ばらいをはさみ、伯爵がそう言った。伯爵の言う通り確かに首筋に傷がある。が、実際それが原因かと言われれば違うと言えるだろう。



 これは単純に普通に満足できなくなった変態貴族の性癖暴露なのである。


 つまり、伯爵はこう言っているわけだ。

 俺もナメクジ娘とヤッたことがある。しかも、体液の効果ですっごい興奮するよ! 

 貴族の習性みたいなものだから仕方ないね! 



 要約しないと何が言いたいのかが分からない文脈である。


「失礼、つまり伯爵はこう考えている訳ですね?

 性交時にそういう習性をとるナメクジ娘の体液異常で死んだ。

 若しくは、情事の興奮で死んだからこれは事故だ、と」



 貴族のすさまじいまでの性癖の暴露を聞かされても困るジンクとしては知った事ではない話である。


「そうなると彼女はもう仕事が出来ない処か、これからの生活にさえ支障をきたすだろうな」



 ジンクがそう結論づけると、伯爵は首を傾げた。


「何故だ? 確かに体を売る事で収入は得られんかも知れないが、それなら他の仕事をすればいいだけだろう」


 それを聞いたアンバーブラウンは、手を顔に当てて溜息を零す。



「相手をされると殺されるなんて噂を立てられるともう仕事はできないし、仕事を辞めても、もう普通の生活なんてできないだろうね。

 人の口に戸は立てられないしね」


 そこまで言ってアンバーブラウンは伯爵に、また問う。


「さて、訳の分からない推測に思いをはせる伯爵に答えを教える前に、聞きたいことが一つ。ヒュドラについて伯爵はご存じですか?」


「ああ。あの毒が有名な蛇の魔獣だかモンスターだかだろう。それが一体どうかしたのか」



「ええ。かなりの問題ですとも。ヒュドラ毒というは実は二種類あります。まず、ヒュドラオルドジン。これは神経毒です。2滴から3滴で中型の飛竜の筋組織を完全に麻痺させることができるくらいには強力です。



 そしてヒュドラビルジヒド。これは致死毒。ヒュドラビルジヒドに関しては覚えて頂かなくても結構です。これはヒュドラが体内生成しなければ出来ない毒でしかない。ヒュドラを倒さないとまず手に入りません。


 問題は神経毒であるヒュドラオルドジンです。実はこれはヒュドラの体内生成以外で手に入れる事が出来るという事です。


 それがこれ、ベルファノアと言う草です。これは使い方によって薬草になりえるんです。

 いくつかある別名があるので全ては挙げませんがヒュドラの一噛みと言われています。


 もうお察しかと思われますが、このベルファノアはヒュドラオルドジンが作れます。乾燥させて粉末状にするも良し、抜いたばかりをすり潰すもよしの植物ですよ。ティーカップに少し入れるだけで人間程度なら直ぐです。

 多分これの恐ろしさを良く知っているのはジンクでしょう」


 アンバーブラウンから視線を向けられて、ジンクは引き継いだ。


「これは良く暗殺者なんかが好んで使う毒です。殺す時も自死する時も大体これですね。すぐに中和剤を使わないとあっという間ですから大体対処の使用がないですね」



「何故そのような恐ろしい物がこの部屋にあるのだ!? 良し。そのような草は直ぐに焼き払ってしまおう! 生えてるものも全部だ!」


 アンバーブラウンが摘まんでぶら下げている乾燥ベルファノア数本を見た伯爵は声を荒げた。その気持ちだけはジンクにも良く分かるが、それは無理だと知っていた。なぜなら。



「それは無理でしょう。伯爵が世界を焼け野原にすると仰るなら止めはしませんが、お勧めはしませんね。それ程にベルファノアという植物はそこら中に分布しているのです。」


 非常に一般的なのだ。ベルファノアという植物は別名を『眠り草』という。

 この名前は冒険者にとって非常に有名である。

 何せ初心者が冒険者ギルドから依頼される採集依頼の項目に他の薬草と一緒に必ず入っているからだ。



 これはジンクが親しい冒険者数人から聞いた話で、他の薬草と紛らわしいので最初に学ばせる為と、薬草としての需要がそもそも高く一石二鳥であるらしい。

 流石に冒険者は学ぶ事と稼ぐ事を同時に教えるというシステムが構築出来てるのだと感心した覚えがあったので良く覚えていた。



 それを伯爵に伝えるとぐぬぬ・・・・・・と歯がみされ、


「では、情事による事故ではないと?」


 と悔しそうにそうこぼした。今にも殺されそうな雰囲気にジンクも若干引いてしまいつつも頷いておいた。


「まあ、単純な話でベルファノアを知らぬ間に取らされていた。そういう事でしょう。

 基本ベルファノアの毒は遅効性ですが、伯爵が今さっき言っていたように首筋から媚薬を入れられた事によって毒の周りが速まったんでしょう」


 ジンクが言うとアンバーブラウンが続ける。


「媚薬というのは要は強心剤ですからね。それも込みでの激しい運動を行った。当然の結果と言えるでしょう」


「問題は誰が毒を盛ったか」


「その通りだともジンク。誰がが問題でね。けど割と絞れてきてるけどね」


「多分だが、俺も心当たりという訳じゃないが一人浮かんでる」


「おや、そうなのかい? じゃあ、私と君との犯人当て勝負だね」


 腕が鳴るとアンバーブラウンはにっこりと笑ったが、面白くないのが伯爵。


「何故心当たりでも何でも、私に教えないんだ? 仲間はずれにされているようだが?」


『まだ言うような確証がないからです』


 面白いように二人の言葉が重なった。そのまま小屋を出てジンクはある場所に向かおうとするが、隣にはアンバーブラウンが居て当然という風情で歩いていた。


「アンバーブラウン。勝負じゃなかったのか?」


「もちろんだともジンク。だが向う所はどうやら同じようだね。

 というかジンク。アンバーブラウンと呼ぶのは長ったらしいと思わないかい?」


「いや? 別にそんな風には思わないけど?」


「私だけ名前で呼ぶのもどうかと思ってね。それに君にならリーシャと呼ばれても構わないが? どうだろう?」


 何がどうなのかは今いちピンとこなかったジンクだが適当に、そうですかと言っておいた。


「さて、我々が目指す先へ向かおうとしよう」


 二人は、伯爵を残して、小屋に入るときに見かけた場所に足を進めた。








仕事のゴタゴタで書けませんでした( ;´・ω・`)

最低でも一週間ぐらいのペースで投稿していけたらと考えています。


さて、この事件も後、2~3話程度で終わります。

でもプロローグも追加したいから実質3~4話ですかね。


少しでも面白いも、楽しいと思ってもらえたら幸いです。

ではまた次回で。


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