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説明しよう!

ちょっと遅れました。続きです。

「ずいぶんと時間がかかったじゃないか。何をもたついてたのかな?

 ああ、そうそうガンベルク夫人を大人しく帰らせるなんて、ジンク君は思ったよりすごい奴だね」


 そんなことをいうアンバーブラウンは威厳たっぷりに椅子に座っていた。

 だが、問題はそこではない。アンバーブラウンの横を抜けてカーテンを開ける。そしてすぐさま窓を開け放った。新鮮な空気がジンクを洗っていくような錯覚に陥ってしまう。


 それほどまでに空気がよどんでいた。これまで空気が淀んでいた所がなかった訳はない。傭兵なのだ。依頼を受け、前金を受け取ればどこにでも行く。


 昨日今日の新人でもない限りさまざまな場所に行き事になるが、これほど迄に淫ぴで、背徳的。

 快楽の限りを尽くすであろうと思わせる場所はジンクの今までの経験にもなかった。

 護衛、警備、クライアントとの付き合いでそういう店にも足を運んだことはあった。そこで何かした訳ではないし、そういう経験はないが、見たことくらいはあるし、そういう店の嬢に護衛として雇われたこともあったため、

 素顔も知っている。雰囲気、気配、仕草、足運び、息遣い。


 それが仕事中であっても、オフでも。しかしながらこの状況は違った。

 あまりにも違いすぎていた。それにジンクは衝撃を受けていた。


「なんだい、どうしたんだい別に君も売春婦を初めて見たわけじゃあないだろうに。

 それともそういう事柄や職業は受け付けないタイプの人間だったりするのかな?

 生きてればそういう感情だって出てくるのに? 馬鹿馬鹿しい」


「いや、別にそういう訳じゃない。ただ、普通のじゃないだろう。彼女」


 アンバーブラウンは、心底分からないとウンザリ気味に頭を振ったのでそこは否定しておく。別に職業で嫌悪することはない。


 ただ、今なお男の上で非常に扇情的な運動中の彼女は、サキュバスだ。


 それもそこら辺にいるようなランクではないだろう。

 少なくても上位。いや、最上位か。

 見目麗しい造形の顔に見る者を引き付けてやまない程整った身体つき。

 情事の最中でさえ崩さない余裕の顔つきだが、心を撫で擦るような声。

 ジンクでさえともすれば引き寄せられるかもしれないと思うほどだ。


 思うだけで絶対行かないが。



「ふん? そうかい。いや君がそういうタイプでなくて良かったよ。

 いやなに、たまにこういう話が来るからね。気にしないでくれて助かる。 それにしても見るだけで分かるとは君もなかなかだね。

 物好きなのか、依頼か。どちらにせよサキュバスはお勧めしない。死んでも良いならどうぞといったところかな」


「ちょっと、私だってちゃんと加減できるから! 死んじゃったら次から指名が来なくなるから!」


 そう言うアンバーブラウンに余裕で答えるサキュバスは、ジンクを見るとペロリと唇を舐めた。


「お兄さん次どうかな? 結構タイプなんだけどなー」

「いや、結構だ」


「振られてるじゃないか。諦めたまえなユーミャ。彼は言われて(なびく)くタイプじゃないだろう」


  ユーミャと呼ばれたサキュバスは「ちぇ」っとそのまま下の男に集中しだす。どこまでも計算されたような仕草に言葉遣いだが、そういう本能、生態なのだろう。むしろそんな会話の中でさえ一切手を抜かない仕事ぶりはプロ根性を垣間見せた。


 そんな事より聞かなくてはならない事を棚上げしている事以上、ジンクはそこに切り込んだ。


「で、なんでこんな事してる? そこの泣きべそかきながら絞られてる哀れな餌は?

 というか、この状況は何なんだ。もちろん納得のいく説明をしてもらえることだろうと考えても?」


「そう! そこだ。危うく忘れるところだったよ。それにしてもこの状況で興奮しないジンク、君本当に男かな?」


 非常に不名誉な疑いをかけられ、ジンクはジロリとにらむ。


「まあ良い。なぜこんな状況になっているか、についてだが、この部屋に来ている少女、というか私の弟子みたいな子の友達がちょっといたずらをされてね。回りまわって私に話が来たのさ。

 質の悪い男に引っかかった友達を助けてください、とね。


 で、そこの哀れな餌君がその男、厳密には2人組だがその片割れになる。

 そこでユーミャに頼んで今まさに尋問中なわけだ」


「拷問の間違いだろう」

 少なくても尋問なんて優しさではない行為。


「いや、少なくても天国は見てるだろうね。見たまえ快感と、感激で涙まで流しているよ。何せ最上級サキュバスからフルコースなんて普通に飽きてわんさか金をため込んでる王侯貴族か大商人ぐらいしか味わえないからね。ちなみに料金はそこの彼が払う事になってる。きっとこれから北方の荒れ狂う海で自然と魔獣に揉まれながら漁をすることだろう」


「そりゃあ、泣くだろうよ」


 快感天国の次は借金地獄だ。割とほんとに死ねる額面になることだろう。


「私のポリシーで仕事に関する金は友達料金は言わない事にしてるんだ。

 相手が言うなら喜んで受けるけどね。


 そうそう、彼の名前はジョー。元冒険者。現在は頭の弱い女を引っかけて美味しく頂いた後に金も毟っていくクズ。ちなみに先ほどから居場所を聞き出そうとしているの片割れも同様だね」



「ちょっと良いか。ミスアンバーブラウン。君の仕事は何だ」


「うーん。それを聞かれると弱いね。まあ、簡単に言うなれば職業不詳、かな? 何にせよ当てはまる言葉が世界にないからね」




 そう呟いた彼女はパイプを取り出して荒く刻んだ葉を詰めていく。

 慣れた手つきで加えるとパイプの先に一瞬火が現れ、煙がゆらゆらと登り始めた。

 魔法だ。しかも、高位の使い手だ。

 火を出すこと自体難しいわけではない。精霊と契約すれば才能が無くても扱える魔法だ。未熟な奴がやれば顔が焼けるが。


 一瞬照らされた顔はユーミャ以上に整っていたという事実。

 まるでエルフかと思うほど整った顔つきに白い肌。白すぎない肌色か。

 そして照らされた一瞬見えた目の色。紫。エルフではない。ダークエルフにしては特徴が違いすぎる。他の種族にしては特徴が違いすぎる。

 となれば後は2つに1つ。人間か、魔族かだ。

 しかし、魔族の特徴として、自身の魔力の高さが身体的特徴として現れるという現象(もの)があるが、それは現れなかった。基本的には目であるそれはと言われている。


 目という脳と魔力を司る仮想器官が直結する部位は、人間やその他種族にも魔眼という形で現れる。


 それが魔族の場合は、暗闇に入ると目が淡く光を放つ。もちろん魔族にも魔眼保持者は居るらしい。


 だが、先程から薄暗闇にいるジンクが気づけなかった以上魔族という線はないだろう。


 では、人間か。多分超のつく技巧者なのだろう。そして超がつく美人。

 そんな人物が野に放たれたままというのは少々考えづらいが、魔法を扱う者達は、その力と技術が高いものほど比例して変人が多くなるという話があるくらいだ。


 無い話ではない。


「観察は済んだかな。私も結構人間観察をするけど、結構その目は嫌なものだね。今度から気を付けて観察するとして、君もやめてくれないかな?」


「済まなかった」

「結構。それで、納得いただけたかな?」

「ああ、十分だ」


 アンバーブラウンという人物と共にこの状況も理解したジンクは、こくりと頷いた。


 確かにこの世界にはアンバーブラウンのような者はいない。

 しかし、他の場所には居るという事だ。

 そう。

 探偵(・・)として。

 無い話ではない。この世界に今まで居なかっただけだ。そして今日ジンクが認識した以上、今日から探偵という職業が生まれた訳だ。

 もちろん、公的になるのはもっと先だろうから結局のところ、現状職業不詳だ。


 泣きじゃくりながら喘ぐ男と、楽し気な嬌声をバックミュージックにそんな考察をしていた時だった。


「このバカ吐いたよー」

 不意にユーミャがそんなことを言い、アンバーブラウンが答える。


「それは、あれかな。情報を吐いたのか、それとも吐き戻したかでだいぶ意味合いが変わってくるんだがどっちだい?

 別に私が掃除する訳じゃ無いけど、嫌な顔をされるのは私だから、極力前者であって欲しい」


「うん。情報を吐いた。全く言うならさっさと言えばいいのに何で無駄な抵抗をするんだろ」


「でもそれで君の取り分は跳ね上がった訳だからそうバカにしたものでもないだろう?」


「それはそうなんだけどね。でもこの男本当に払えるかな?」


 不安そうな表情を見せたユーミャにアンバーブラウンは「必ず払わせて見せるとも」とニヤリと笑った。

少しづつですが、物語が動き始めました。


誤字や誤植、この表現おかしくない?( *´艸`)などありましたら報告お願いします。


もう言わないけど、後は、分かるね?(*'ω'*)

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