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世界、ごきげんよう

作者: 壱原 紅

私を独りぼっちにさせるもの。

うざったくなるほどの青い空、楽しそうに笑いながら歩く小学生、いつまでも自分は若くて美しいと思い込んでいる女子高生、綺麗事ばかりを吐きながら走る選挙カー、若い世代で流行っている人気アーティストの有線が流れ続ける店、夕方6時からテレビで流れ始めるわざとらしい食レポ、世の中なんでも簡単に自分の思い通りにいくと思っている一人っ子の脛噛りな女、スタバの新作が出る度々に友達と飲んだことをインスタのストーリーにのせる若者、人生に希望しかない投資家、都会の喧騒。

みんな私を置いて進んでいく。彼らは自分の足元に生えてくる不安や未来への恐怖を見ないふりして踏み潰しながら生きている。もう嫌いだよ。そう言ってくれれば気が楽になる。もう嫌いだよ。そう言えたら気が楽になる。

いつか。空は曇天になり、街は静寂に包まれて、みんな皺だらけになって、選挙カーは事故を起こし、流行りなんてすぐに廃れて、タレントはスキャンダルでメディアから干されて、脛を噛らせてくれる親は施設に入り、インスタのアカウントは通報されて、投資した株価は大暴落して、東京には人がいなくなるかもしれない。

そうすれば、私を置いていくものはなくなる。

だけど、だけどそれは違う。

空は青く晴れているべきだし、街は騒がしくあるべきで、女子高生は誰よりも自分を綺麗だと自惚れるべきで、選挙カーには手を振って、新しいアーティストは目まぐるしく生まれて、食レポは大袈裟にするべきで、噛られるなら脛は噛るべき、どんなに下らないこともストーリーにのせて、投資家は自信に溢れ、都会には腐るほど人がいるべきなのだ。

それこそが世界で、あるべき形。

嫌いだし、頭が痛くなるほどうざいけど、世界はそうであってほしい。

さようなら、私の愛しい世界。私の大嫌いな世界。

私には生きづらいから、出ていくよ。ごきげんよう。

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