第Lv1話 目覚め
現在〜
何も見えない真っ暗な空間だ
体は浮いてるような不思議な感覚
意識は曖昧で、微かに頭の中で囁くように女性の声が聞こる
「祈ッて、、ます、、貴方ノ、、、勝利ヲ、、」
それだけ言うと、声は聞こえなくなり、急に風を感じた
「んっ!?、、ここは、、、??」
瞼を開くと、ゆっくりと辺りを見渡す
自然が広がる草原だった
立ち上がりると、自分の手のひらを見つめ、状況を整理する
まず分かることから考えた
最初に頭に出てきたのは
白夜悠と言う名前と、自分がこの世界の人物じゃないということ
この2つは正確に覚えている
なぜか「魔王を絶対、倒さなければならない」と言う強い意思は、常に頭の中に流れてくる
分かってるのは、せいぜい、この3つくらいだ
次に、自分の体を見て、全身を両手で触ってみた
年齢は恐らく10歳くらいで、グレーのような髪色に、目立つアホ毛が1本立っている
服は、黄色のパーカーに腰には皮で出来た道具入れのような物が付いていて、黒色に近いズボンを履いている
右腰には、木の剣が一本、備わっている
悠は、装備してあった木の剣を、左手で掴み抜いた
何故か剣を持ったのは、今が初めてなはずなのに、そうではない気がした
試しに素振りをしてみる
「えっ!?」
悠は驚いていた
剣術なんて分からないはずなのに、体がそれを覚えている
剣をしまい、息を整える
そして、悠はある事に気付く
右側に緑色のカーソルが見える
「これは、なんだ…?」
カーソルの上にはLv1と書いてある
「Lv?……それに緑のカーソル…これは多分、体力(HP)か?」
とりあえず情報収集の為、草原から移動することにした
数十メートルの木が聳え立つドリュドと言う森に入る
快晴で眩しい日差しは、周りの木で遮られ薄暗い
なにか感じたのか、悠は足を止め、装備している剣を軽く握る
前方の茂みから、小さな黒い影が3つほど飛び込んできた
その黒い影は兎だった
兎は慌てて悠の足元を横切り逃げていった
「なんだったんだ??」
剣を握るのをやめ、兎が逃げた方を見て呟いた
その瞬間、少女らしき叫び声が、兎が逃げてきた方から、聞こえてきた
「今度は、なんだ?!」
悠は叫び声が聞こえた方へ走って行く
茂みの向こうに行くと、そこに居たのは桃色の髪をした、同じ位の歳の少女で、首元にはペンダントを付けている
水色の服に、右腰には持ち手部分に包帯を巻いた木の枝を装備している
その少女の前に、5匹の狼のような魔物がいた
魔狼は体制低くし、今にも少女に飛びかかりそうだ
「やめろーーー!!!」
悠は剣を取り、少女をかばうように、飛びかかる魔狼目掛けて、剣を振り下ろした
その瞬間、剣が薄黄色く光り、物凄い斬撃と音で森全体を震わせた
何が起きたのか悠には分からない
剣を振りかざした方向は、森を切り裂いたような跡が残っていた
魔狼の姿も消えている
持っていた剣は傷だらけで、もう使えそうにない状態だった
「一体なにが、起きたんだ!?」
もしかしてこれ俺がやったのか??と驚いた表情を浮かべ、後ろにいた少女の無事を確認する
「大丈夫か、、?」
地面に膝をついている少女に手を伸ばした
怪我はしてないみたいで、ほっとした
「あ、あの、、助けて、、下さって、有難うございます、、」
怖かったのか、声を震わせながら瞳を潤ませた少女は、手をとり立ち上がる
少女は小さな手で、涙を拭うと、「ルナ・フィリア」と名乗った
悠も、優しく微笑むと同じく名乗った
ルナは、悠がやったと思われる斬撃の跡を見てこう言う
「これは、悠さんのアビリティですか??」
『アビリティ?』心の中でつぶやく
この世界の事を知らないので、自分が目覚めてからをルナに話し、アビリティの事と、この世界について聞いてみた
ルナは驚きを隠せずにいる
「……そうですか
もしかしたら悠さんは、異界人かもしれません
異界人は、この世界で言う他の世界から何かしらの影響で、こちらの世界に来た人の事を言います
私の知る限り、異界人はこれまで一人しか居ません
その一人が、今では『英雄』と呼ばれている人なんです
その英雄と同じ、何かしら、ここに来た共通点があるかもしれません」
「俺と同じ異界人か…その人の事を知れば何かわかるかもしれない」
悠は考える顔で呟く
そして、ルナはこの世界の現状について、ゆっくりと話し始めた。