第五章 燃えよ松明
「今日は漢字と掛け算!」
勉強会(?)が始まってから、二週間ぐらいたった。ミコは本当に覚えるのが早くてあたしも追い越されないよう毎日必死だ。
「1×1が1。1×2が2。1×3が3・・・・・・・
掛け算というのは本当に鬼門だ。難しいったらありゃしない。まぁ、ミコは余裕そうだけど・・・。
「・・・・きみは、なぜ僕に勉強をおしえようとするの?」
「・・・・・あんたにちゃんと勉強してほしいから?」
「なぜ?僕はきみとはなんのかかわりもない存在だよ。」
「うーん・・・なんでかな・・・・。」
そういえば、なんでだろ・・・。
「・・・あんたを見てて、放っておけなくなっちゃったのかもしれない。」
「なぜ?」
「むかしのあたしを見てるみたいで。」
なにもできず、周りにただ流されて・・・自分がなにをしているのかもよくわからない、そんなむかしのあたしにミコが似ていたから。
大人になると、色々わかるものだ。いや、色々・・・ではないか。ただ、自分の子供時代を客観視できるようになる。そんな客観的な視線でみたとき、「どうして、あたしはただ流されるだけだったのか?」と考えると、ただひたすらに知がなかっただからだと思う。知がないから、なにをすればいいのかわからない。知がないから良いも悪いもわからない。きっと、知があっても流される人はいるだろう。でも、それはあくまで自分で決めたことなのだ。知がないままに流されることは、ほぼ強制だ。なぜなら、ほかの道がわからないから。・・・・・知は人生にとってともし火みたいなものなのかもしれない。自分の周りを照らし、他者によって指し示された道がどんな道なのか、指し示された道以外にどんな道があるのか・・・それを教えてくれる。一応火だから、自分や周りのものを守るのにも使える。道を照らし、自分を守ってくれる最強の味方。それが、知。
だからあたしは・・・・
「あたしは・・・・あんたの松明に知という名の火をわたす役割になりたいと思っている。」
「・・・・・・・・・?」
・・・・・・・・。
「あんたにはあたしみたいになってほしくない。自分の道を自分で選べるようになってほしい。」
「・・・・・・・・・・。」
「ま、あんたはむかしのあたしなんかと重ねないでほしいかもしれないけどね。」
ミコは貴きお方みたいだしね。
「とにかくお互い頑張ろうよ。松明に火をともせるように。」
・・・・・・・そうだ!
「夢!夢をつくろう!」
「夢?」
「自分がなにになりたいのかってこと!」
あたしも夢があるから頑張れるんだしね。
「・・・・・・ない。」
「本当に?たらふく食べたたいとか、毎日ごはんを食べたいとかそういうやつでいいんだよ?職業とかそういう具体的なやつじゃなくてもいいからさ。」
「・・・・・・・・。」
本当にないのか・・・。
「きみに・・・夢はあるの?」
「・・・・・あるけど。」
一応ね。
「どんな夢?」
「・・・・・教師。教師になりたいの。」
教員免許をとったらすぐに、母国に戻るつもりだ。
「あたしの母国はね・・・死と無知に満ちている。ユリみたいに幸せな国でもないし、メギみたいに這い上がれるチャンスがある国でもない。でも、世界にはそんな国ばっかだ。あたしは・・・そんな国の子どもたち・・・いや、子どもだけでなく大人の松明にも火をともして、母国の人々を・・・世界中の人々を救いたいの。」
こんなあたしには大それた夢だと、笑いたくば笑えばいい。いつか絶対に笑ったことを後悔させてやるから!
「こんな感じでさ、デカすぎる夢でもいいからさ!なんかつくりなよ!」
ミコはなにも言わず、ただあたしを見つめていた。




