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第二章 若きヒメユリの悩み

「・・・・・・・・・・・・・。」


 ヤツは昨日、確かに勉強をちゃんとするといったはずだ。だが、なんだこれは・・・・。

 もう一度隣を見ると、ヤツはあたしが貸している鉛筆と消しゴムをそれぞれ左手と右手でおかしな持ち方で持っている。そして、肝心のノートは白紙だ。そりゃそうだ。あの持ち方で書くのは不可能だ。


「おい・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・?」


 私の声に反応するということは授業は聞いているようだが、もしかして・・・・


「あんた、字、書けないの?」


 目が見えていないとしたら、あたしみたいにとりあえずそのまま模写することも不可能だろうから少し厳しいかもしれない。いや、目が見えていないという時点で字を書くのは難しいかもしれないが・・・。


「・・・・・・・・・。」


 ゆっくりとヤツはうなずく。


「目も・・・見えてないんだよね?」

「みえるようには・・・・できるよ。」


 どういうこっちゃ。


「なにいってのかわかんないけど・・・・見えるんだったら見えるようにしなって!」

「・・・・・・・・わかった。」


 ヤツは一瞬目を閉じた。すると突然、稲妻が目の前に落ちた。


「ひぃっ!!!!」

「・・・・・・・プミラさん?どうかしましたか?突然叫んだりして。」

「なっ、なんでもないです!!」


 な、なんであたし以外誰も反応しないんだ・・・!!


「あんた、大丈夫だっ・・・・ん?」


 なんか・・・・ヤツの目の色・・・変わってないか・・・?

 もともと、クリスタルみたいな目をしていたはずだが・・・・今は金色だ。


「目、みえるようにしたよ。」

「あ、うん・・・・。」


 無事そうでなによりだが・・・・。


「目の色・・・変わってない・・・?」

「・・・・・・・・。」


 なんで無反応なんだ!気になるでしょうが!


「・・・・・まぁ、目が見えるようになったんだったら、とりあえずノートうつしなよ。」

「うん・・・・・。」


 とりあえず・・・これでいっか・・・・。



  *  *  *  *



「きりーつ、きょーつけー!礼!」

「「「「「さよーなら!」」」」」


 よし、終わった。


「行くよ!!!」


 ヤツの手を掴んで走り出す。行き先はそう!図書室だ!!



  *  *  *  *



「よし、ノートだして!」


 能面男は・・・来てないっと。


「・・・・・・・なにするの?」

「勉強!文字の勉強、一緒にしない?」

「・・・・・・・・・・。」

「あたしも・・・まだ、ひらがなが怪しいぐらいだからちゃんとやりたいんだ。」


 アイツがある程度は教えてくれたけど、大人になってから覚えるって結構難しいんだよ・・・。漢字なんてまだまだだしね。ほぼなにもかけないから、授業中に黒板に書かれてる漢字とか全然わけわかんないし。とりあえずまねして書いて寮に帰ってから全部ひらがなに直したり、意味を調べたりしてるけど全然追いつかない。


「・・・・・・わかった。」


 ・・・・そういえば、鉛筆の持ち方からして崩壊してたからとりあえず文字を書ける持ち方に直さないとな・・・。



  *  *  *  *



「・・・・・・・・。」


 ヤバいな・・・このままだと追い抜かされる・・・。・・・・若いっていいなぁ。スポンジみたいに知識を吸収していく・・・。


「を、ってどうかくの?」

「を?・・・・をは・・・・えーっと・・・・・。」


 思い出せない・・・。

 辞書かなんか見ればわかるだろ!って言われそうだけど、これがね・・・・そもそも「を」の形がわからないから無理なんだよ。漢字だったらわからないければひらがなで調べればいいんだけどね。


「・・・・ちょっと、あんた。」

「えっ、あ、はい?」


 黒髪の女生徒に声をかける。そういえば黒髪ってあんまり見たことないな。黒髪といえばちょっとの間暮らしてた国のミコさまぐらいしか知らないな。


「「を」の書き方教えてくんない?」

「え、「を」?」


 女生徒はあたしの顔を二度見してくる。・・・・悪かったね、おばさんのくせにひらがな聞いたりして。


「えっと・・・・・こうですよ。」

「ああ、ありがと。」


 女生徒はあたしのノートに「を」を書いた。ああ、こんな文字だった。


「あんた、きれいな字かくね。」

「ありがとうございます。」

「なんていう名前?」

「ヒメユリ・ユリです。」

「へぇー。あたしはプミラ。よろしくね。」


 ユリって・・・なんか聞いたことあるな。まぁいっか。


「・・・・・で、こっちは・・・


 あれ・・・?


「・・・・・そういえばあんた、名前なんだっけ?」


 聞いてなかったような気がする。


「・・・・・・・ない。」


 え?


「僕は・・・・

「無の神子さま!?」


 ヒメユリちゃんとやらが、突然大きな声をだした。


「ん?どうしたのヒメユリちゃん。」

「な、なんでこんなところに・・・・・というか、なぜ話せてる・・・

「・・・・・・・・・・・。」


 なんだなんだ?


「ムノミコってなにさ?」

「この国の神殿のトップですよ!知らないんですか?」

「いや、この国の生まれじゃないし・・・・。」


 そもそも学がないから、神殿とかのことなんとかって言われてもわかんないよ。


「よくわかんないけど、コイツ、なんかお偉い人だったの?」

「そりゃあ、偉いですよ。普通に私よりも偉い。ていうか、コイツって・・・・。」


 だから先生も生徒もコイツにノータッチだったわけか。なるほど。


「さっき名前がないっていってたけど、なんて呼べばいいわけ?」

「みんな、みこっていうから・・・・みこでいいよ。」


 ミコね。よし、覚えた。


「じゃあ、ミコ。勉強の続きするよ。」

「うん・・・・。」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください!神子さま、ちゃんと神殿の許可はとってますか!?」

「・・・ないよ。」

「ヒィー!!!・・・・神子さま、私の立場をご存知ですよね?」


 ・・・・・ヒメユリちゃんの立場?ヒメユリちゃんも偉い人だったのか?


「・・・・みたこと、あるかも・・・。だけど、しらない・・・。」

「王女ですよ!王女!この国の!何度もお会いしてますよね!?」


 え、そうだったのか!


「・・・・・・?」

「・・・・まぁ、いっか。でもね、王家という立場上、神殿と対立するわけにはいかないんです。」


 難しいことはよくわからないが、きっと神殿の権力がデカいから対立すると王家でも困るってことだろう。たぶん。


「だから、悪いですが・・・・神殿に連絡を入れます。恨まないでくださいね。」


 ってことは、あの能面男が来るのか。


「それは結構ですよ、ヒメユリさま。」


 いや、もう来てた。

 本当に気配がないな・・・この男・・・・。


「ただ、そこのお嬢さんに自分がしていることの意味をしっかりと教えてさしあげてください。・・・・神子さま、行きましょう。」

「・・・・・・・・・・。」


 ミコはちらりとこちらに視線をやった。


「バイビー。」

「・・・・・・・・・・。」


 能面男とミコはすっと空気にとけていった。

 後ろをむくと、顔面蒼白のヒメユリちゃんがいた。





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