空の青
「ん…あ…」
なんだか長い夢を見ていたような。それなのにすごく気分がいい。
目を開けると一面真っ白で綿できてるのかと錯覚してしまうほど柔らかそうな材質の壁と天井の部屋が広がっていた。
「目覚めましたか?まったく。お寝坊さんですね」
見た目17歳のハーフパンツに上は半袖のtシャツ。そしてピンク色の短髪の女の子がいた。
「あれ?俺ってたしか…」
「あなたは雷に撃たれました」
真顔で彼女は言う。
「え?」
なにを言うとるんじゃこの娘は。
「雷に撃たれました」
再度、真顔で彼女は言う。
「なんですと?」
んなアホな。
「雷に撃たれたって言ってんだろ」
そして彼女はバカを見るような目をして言う。
「あ、はい」
口調が荒っぽくなった女の子に僕は少し怖くなったよ。
「まあ無理もありません。いきなり「雷に撃たれました」なんて言われて信じる人はいないですから」
「よくわかんねえけど俺は雷に撃たれて死んだってことでいいのかな?」
普通人間が雷に撃たれれば即死だ。運が良くても体のどこかに後遺症が出てまともに生活できないだろう。
「いいえ。それは違います」
しかし彼女は言った。そうではないと。
「え?」
驚く力斗。まさか彼は人間を超越した存在なのか?
「あなたは確かに雷に撃たれました。ですが死んではいません。あなたは雷人間になったのです」
「は?」
意味がわからない。この女はなにを言ってるんだ。 雷人間ってなんだよ。フザケンナちくしょー。バカにしやがって。
「あなたは雷に撃たれた。雷に撃たれたあなたの体は、なんと雷を吸収したのだ。そして雷が放たれたこの雲、天界に吸い込まれた」
ありえない。ありえない。そんなの絶対信じない。そんなのあってたまるか。これは何かの夢だ。あーもう夢から覚めたい。
「嘘言いやがって!そんなの信じられるか!もうやってらんねえ!」
漫画だとこれは夢なんだ!と言ってほっぺたをつねるだろう。自分の体にダメージを与えてこの体が本物なのだと自覚するために。だが 天野はわざわざ床に頭を叩きつけた。 はずなのだが、
「え?うそ…すり抜けた!?」
天野の頭は床にぶつからずにすり抜けた。
すり抜けた先は青い空だった。そういえば今日は晴れだったな。
「うわああああああ!落ちる落ちる落ちる死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ」
焦る天野。目の前に広がる青がとても怖かった。
「安心してください。落ちることはありません。雷人間N極。雲はS極だと思ってください。雷人間はこの雲に吸い寄せられるように、上にも下にも行くことができません」
磁石で例えると雲はN極。そして雷人間はS極だ。 雲の中だと自由に動くことができるが体が外に出ると磁石のごとく吸い寄せられるようになっている。
「絶対にか?」
天野は怯えながら言う。よっぽど青が怖かったのか。
「はい。わたしを信じてください」
彼女の目は真剣だった。怯える天野をバカにするような、そんな意思は微塵も感じない。
そんな彼女をみた天野は、
「信じます」
力強く言った。この子なら自分を笑ったりバカにきたらせず真剣に向き合ってくれると思ったのだろう。
「では受付に参りますか」
受付?なんのことだろう。とりあえず付いて行くことにした。