始まりの世界
「いい天気だ」
俺の名は天野力斗。どこにでもいる普通の高校1年生だ。今日は5月1日。晴れ。時刻は8時10分過ぎ。
このままだと遅刻確定か?ペースを上げるため走ることにした。
走ることには慣れている。別に部活動をやっているとか筋トレを頑張ってるとかではない。走らなければ死ぬ。死ぬのだ。
なぜなら天野は毎日毎日追いかけられているからだ。
「うおりゃああああああ」
きた。やつがきた。俺が嫌いなやつがきた。
やつのことはよくわからない。見た目は一般的な中学生。性別は女。制服についてるリボンの色がピンク色だ。おそらく1年だと思う。髪は茶色で肩くらいまでの長さだ。身長は155cmくらいか?
はあ…とため息をつく天野。こいつはいつも俺を追いかけ回している。
理由はわからない。強いて挙げるとするならば、4月の一番最初の登校時、朝の挨拶を無視したくらいか。
「でもなあ…」
天野は思う。ここまでしつこいのはどうなんだ。いや、もしかしたら別な理由があるのかもしれない。自覚なくやつを傷つけたのかもしれない。けど。
「うおおおおおおおおおおおお!」
叫び声をあげ、天野は全力疾走する。距離は10メートル。このスピードじゃ追いつかれることはまずない。よし。いけるぞ。
余裕余裕、と言わんばかりに鼻歌を歌う天野。
だがそれも長くは続かなかった。
やつは身をかがめ「どっせええええええい!」と言うと10メートルの距離をまるで走り幅跳びでもするかのごとく一瞬で縮めた。
「な、なんですとおおおおお!!????」
驚く天野。無理もない。目の前で人間業ではないものを見せられたのだ。
腰を抜かした天野は地面にドサっと倒れた。
(殺される)
死を覚悟した。次の瞬間、
ドカーン!と大きな音が鳴り響いた。
「え?」
なにが起こった?
理解不能の天野。そして意識を失った。