7話: 過去
-----------------700年ほど前-------------------
・・・ロキ・・・・ロキっ!《ガタンッ!》「は・・はい!!」
「暖かい季節になってきたから眠いのは分かるが授業中寝るな!」
「・・・すいません」
あはははは!っと教室に響く笑い声「おまえらうっせ!」
後ろの席で目を合わせてクスクス笑う2人、ベスネルとアイリだ
ここはアガート王国にあるセスタ魔法学院、魔法の学科がある学校である
場所は人間界に存在し、当時は神界と人間界の隔てはほとんど無かったのである
アイリ、ベスネル、ロキの3人は年齢こそ多少違うが
同学年で入学して現在は高等部である
《ブルブル、ブルブル》
ロキはポケットに手を入れる「ん?なんだ」( バーカ ( ´∀`) )
ベスネルからだった ロキはすぐさま後ろを振り返り文句を言うが
教師に教科書で叩かれまた笑われる、窓ぎわのクラスメイトが叫ぶ
「おーーーい!みんな連合軍の遠征隊だ!」
授業中なのにみんなが窓の外を見ながら目をキラキラさせている
「かっこいいなぁ」「うんうん!」教師がため息のあと
「ほらー!みんな席に戻れ〜」
この時は魔族の一大勢力が存在していて
神族と人間は協力しあって日々防衛戦が行なわれていた
いわばここは将来連合軍に所属する士官候補を教育する学校でもあった
今日の午後からは校庭で中級魔法の訓練であったが
アイリとベスネルはすでに上級魔法まで使えるエリートだった為
クラスメイトに魔法を分かりやすく教えるまるで副担任のようだったが
ロキだけは中級魔法ですら上手く扱えなく
学校から帰宅した後もアイリやベスネルに教わっていた
学校が休みの日は軍団長バルドルに3人は稽古をしてもらっていた
軍団長にどうしても弟子入りしたいと願って弟子入りしてきた
ヴァーリという幼い子を最近バルドルは可愛がっていて
バルドルに稽古をつけてもらう時には必ず見かけていた
「あーダメダメそんなんじゃ」「もっとこう!こおやってどーん!と」
必死にロキはヴァーリに教えているのだが
教え方が下手すぎて見ていられないとバルドル、アイリ、ベスネルは思う
アイリにとってロキは弟みたいなものだが
また1人弟ができたようにヴァーリを可愛がっていた
ロキにとってもヴァーリは唯一の後輩であり
必死に先輩としての威厳を見せつけようとしていたのが分かった
年月が過ぎ成長したヴァーリはセスタ魔法学院に入学して
入れ替わるようにアイリ、ベスネル、ロキの3人は卒業後連合軍に入隊した
現在の状況はハッキリ言ってしまうと連合軍側の劣勢であった
魔族の王であるヴェルゼが絶対的な力を持っていて
その配下達も恐ろしいほど強かった為に
連合軍の人間にも史上に名を残す英雄達がいたがその状況を覆すことができないでいた
アイリ、ベスネル、ロキの配属先は主神ゼノや副官グノシスの親心からか
安全な王都近郊の防衛隊であった
配属されてから戦った相手は山から餌を求め出てきた熊や
はぐれゴブリンなどであった
当時はギルドが存在していなかったのでゴブリンやオークの討伐は連合軍の役割であった
「こんな事をしてなんになる、なんの意味がある」ロキは苛立ちを見せる
「お父様が気をつかって配置してくれたんだから文句をいわないの」
アイリがロキをなだめる
「そうそう、あなた弱いのだから」ベスネルがロキを煽る
「はぁーーー?弱くねーし!」「あームカつくぜ!」
ロキは考えるベスネルもアイリも俺のこといつまでもガキ扱いしやがって
俺の力を見せつけないといつまでも舐められたままだ、いい方法はないものか
・・・思いついたぜ
三魔将の1人シャル・ルヴェルを連合軍のハウザーが討伐隊を編成して
攻め込むっていってたな・・・あのハウザーの野郎
年は俺と大して変わらないのに銀の貴公子なんて呼ばれて気に入らない人間だ
俺が代わりにそこで手柄を上げれば親父もこの2人も俺のこと見直すだろう
「ク、クックック」
「・・・大丈夫?」「・・・・・」
「三魔将の討伐隊に俺は志願をする」ロキは2人に宣言する
「ああ、ハウザーの件ね・・・やめておいたほうがいいわよロキ」
ベスネルはロキを止める、「なぜだベスネル?」
「今回ハウザーが編成する隊はハウザーが独断で決めたことみたいなの」
「正規の任務じゃないから応援は期待できないだろうしそれにね三魔将は・・・」
「なぜベスネルはいつも俺の行動を抑制する!?
俺がやることは全て間違ってるのか!?」
「ベスネルが履いた靴で俺を歩かせようとするな!」
・・・・「ロキもそんなにムキにならないで」となだめるアイリ
「わかったわ、ロキがそこまで言うならもう止めない
ただお父様には報告するからね」ベスネルはそう言い残すとその場を去った
「くそっ!くそっ!」荒れた様子でロキもその場を去った
志願を受け入れられハウザー隊に編成されたロキは出発の朝を迎えた
「勇気ある諸君を私は誇りに思う!
さあ同志達よ、共に魔将を討ち滅ぼそうぞ!」ハウザーの鼓舞のあと
魔将シャル・ルヴェルの居城に討伐隊は進軍を始めた
居城に近付くにつれ敵の数は増えたが、討伐隊の勢いは止まらず
魔族達を追い詰めていった
「いける!やはり俺はあんなとこでくすぶってるような存在ではなかったのだ!」
時刻はすでに夕方になろうとしていたので近くで野営し
明朝に攻め込まないかと提案があったが
ロキはハウザーにこの機を逃したら態勢を整えられてしまうと反対した
その意見が通り日も暮れはじめた頃に魔将の城に到着した
城の魔族達は今までの者達とは比べものにならないほど強く
1/3ほどの討伐隊は力尽きてしまったが
なんとかシャル・ルヴェルの部屋の前までたどり着いた
「皆よくぞ耐えてくれた!この部屋の中に最後の敵が待ち構えてるはずだ
最後の力を振り絞り魔将を倒すぞ!」
《おおおおおおお!》と討伐隊の声が響く
部屋をあけ突撃しようとした時に、ロキが止める
「まて!ここは俺に任せてここで待っていろ」
「何を言っているそんな独断は許さない!これは命令だ!」
《命令だと・・・くそどいつもこいつも俺に指図しやがって》
ハウザーの言葉を無視して部屋を開け中に入っていくロキ
部屋の中の魔将は仁王立ちで待っておりロキは魔将に剣を構える
だが足が前に進まない、圧倒的な存在を目の前にして
恐怖を感じてしまったロキ
《まずいこのままでは相手の空気に呑まれたままになってしまう》
見かねたハウザーが横に並ぶ
「ふっはっはっは、戦意が喪失した神族に英雄気取りの人間が相手か面白い」
「では他の者達にはご退場願おうか」
シャル・ルヴェルが発言すると部屋の中には結界が張られ
他の討伐隊員は中に入れない状態になってしまった
「・・・ロキ、2人で左右から攻めるぞ」
ロキにひっそりと話しかけたがロキの耳には入っていなかった
《ハウザーは意を決する》
「古より人の地に伝わる剣技受けてみろ・・・爆炎波!!
それはもの凄い衝撃でありロキは爆風によって吹き飛ばされた
「済まなかったなロキ、最初から最大の技でかからなければ
勝てない相手だったからな」
ハウザーはロキに話しかけロキの手を掴み立ち上がらせる
部屋の中の煙が消えた時、2人は目を疑った
魔将は仁王立ちをしたままこちらを見ている
魔将が口を開く「何なんだぁ今のは」
「手加減などいらぬ、本気でかかってこい小僧共」
絶望の瞬間が2人に襲いかかった
「何をしておる・・・まさかとは思ったがこれほどまで舐められておるとは」
魔将が人差し指をこちらに向けたあとその指を下に向ける
《ドゴーーーン!》超重力の魔法を使われ ロキ、ハウザーの2人は地面に叩きつけられる
地面にどんどんめり込んでくような感覚を味わいながらシャル・ルヴェルの言葉を聞く
シャル・ルヴェルの手の上には
漆黒の球体がまるで放電しているような状態になっていて
それをこちらに投げつけるような姿勢をとり
「お前らもご退場願おうか」と発言した
その時、部屋の結界を貫き2人の前に立つ人影、軍団長バルドルがいた
「相変わらず貧相な結界使ってるなシャルよ」「ぬぐううバルドル・・・・」
「おい、どうしたそれをこっちに投げてみろよ」とシャル・ルヴェルを挑発するが
「フン・・・邪魔が入ってシラけてしまった、退場させてもらう」
「お、おいまてっ逃げるのか!?」ロキはシャル・ルヴェルに問いかけるが
返事もせずにシャル・ルヴェルは闇の中に消えた
体にかかっていた重力が解き放たれロキとハウザーの2人は立ち上がる
「ロキよ」「な、なんだよ軍団長」「身の程を知れ」
「ハウザーよ」「は、はい!バルドル軍団長!」「お前もだ、身の程を知れ」
2人に背を向け部屋を出ていくバルドル
残された2人は自分の非力さを感じ目からは涙がこぼれていた
今夜は近くで野営して明朝に王国に戻る事になった
死体を並べ死者の名前を記入していく
見知った顔も多く、夢を持った者達もいた
食事が配られたのだがその日は喉が通らなかった
《身の程を知れ》バルドルの言葉が重くのしかかる
アイリやベスネルに合わせる顔もないロキにとって憂鬱な夜となった
ハウザーも同じであり、連合軍本部の反対を押し切って魔将討伐するなどと息巻いて
いたが結果はこのザマであった
王国に戻るまでの足取りは重かった
王国の宿舎に戻ったロキの前にはアイリとベスネルの2人がいたが
討伐隊の件については何も触れてこなかった
気を使ってることが分かってしまったロキは苦しい思いでいっぱいだったが
暖かいシチューを出してくれて
「おつかれさま」とアイリが一言だけ声をかけてくれた時に
ロキの目からまた大粒の涙があふれた
古より人の地に伝わる剣技・・・・・・爆炎波!!
《チュドーーン!!》
「ふ・・・済まなかったなロキ、だが全力をださ・・・ってロキ?」
「ロキーーーー!」チーーーン
「魔将: え?」