13話: はぐれ魔族の襲撃
「ファルス領の領主が直々にねー」
「ええ、いまはヴァーリ町長が対応してますが
アイリ様に一度お会いになりたいそうで」
「今日はお召し物の色に合わせてこちらの靴はいかがですか?」
「そうね、いつもありがとうシレーヌ」
「もったいないお言葉、アイリ様の従者として働かせて頂き感謝しております」
「貴方の弟も騎士団の隊長として貢献してくれて助かってるよ」
「ふふふ、アルビオンもそれを聞いたら喜ぶ事でしょう」
この従者のシレーヌと弟のアルビオンもイヴァ教徒であり半年ほど前にこの町にやってきた
従者はシレーヌの他に2人いるがこのシレーヌは私の専属であり
私の身の回りの世話をしてくれる
さてと見繕いも終わったし領主さんに会いにいこうかな!
「はじめまして、主のアイリと申します」
「おお・・・私はファルス領の領主をしています、ノルド・カストール」
「わたくしはイヴァ教を信仰していまして
ファルスとアイリス町の道が繋がったら是非とも挨拶に行こうと思っておりました」
イヴァ教の紋章を象ったペンダントを首から下げている
このノルドの統治するファルス領は、ファルス町をはじめとする
2つの街が所属している、ファルス領内で魔族による被害が頻繁に起こっており
アイリス町とは貿易の他に軍事面でも協力関係になりたいとの申し出だった
イヴァ教徒である領主の頼みを無下にする事もできず了解した
その後もいろいろな話をして最終的には
こんどファルス町にあるノルドの館に遊びに行くことになった
ノルドが帰った後、ヴァーリを誘って青空教室の様子も見に行くことにした
おーやってるやってる
まずはブラギが魔法の基礎から教えてるようだ
みんな頑張ってノートに書き写している
さすがに授業中だからか、誰もアイリさまー!とは叫んでこないね
アキとカノンの姿も発見した
ふふふ、まあヴァーリと建設予定地をぐるぐる回ってくるか
一周まわりきったところで実技にはいるようだったので見にいった
「おはよう、アキ、カノン」「おはようございますアイリ様」
「今から実技のようだけど魔法なんておとぎ話だと思ってたのに、楽しみなんじゃない?」
「はい!なんか夢みたいです!」「楽しみです!」
「あははっ・・とテュールが教えるみたいね、よくみてなさい」
「今から教えるのは、攻撃魔法でも最下級の魔法だが、魔法に慣れるなら1番の魔法だ!」
「なれたら数十m先の松明に火をつけることも出来て便利だぞははは」
「では、一度どのような魔法なのか実践してから個別に教えていく!」
「イグニッション!!」 《ズドーーーーーン!》
「おおおおお!」「すごい!」
アキとカノンにささやく「最下級の魔法でも使う人によってはあんなに威力があるのよ」
「2人には特別に私が教えてあげる」体に触れて魔力の流れなどを感じてもらい
動かし方を教えたあとに、2人に見てるからやってみなさいと言った
「やってみます・・・イグニッション!!」 《ドーーーーン!》
「・・・は?」慌ててヴァーリの方を向いてみたがビックリしている
「ちょっと!もう一回やってみて!」
「はい!・・・イグニッション!」《ドーーーーン!》
「・・・ねえカノンもやってみて」
「は、はいやってみます!・・・イグニッション!」 《ドーーーン!》
\イグニッション!/ \イグニッション!/ \イグニッション!/
《ズドドドドーーーーーーン!》
アキやカノンだけではなく他の者達も予想を遥かに超える威力がでていた
「・・・アイリ様すこしお話が」
「う、うん」ヴァーリに呼ばれてその場を離れた
「アイリ様・・・魔法を教えるのは中断するべきかと
人間があそこまでの威力の魔法を使えるなんて・・・」
「ビックリしたね、魔法学院の生徒でも人間では最下級魔法であんな威力は出なかったよ」
数百年前、人間が存亡の危機に陥るまえでは考えられない光景だった
しかも教えてからあっという間に、もはや神族に近い
人間が存亡の危機を乗り越えた時までは人間と神族が共存していたが
ヴァーリとイリネルの件もある
フレイヤはたまたま神族寄りになっただけで
今の人間には神族の血が混ざっているのかもしれない
しかもここの騎士団員、元はイヴァ教徒の者達
「中断はしないでこのまま続けてみましょうか」
「・・・アイリ様がそう仰られるならば」
みんなの元に戻るとテュールとブラギも困惑してたので
近寄って、そのまま教えるように伝えた
音を聞きつけたのか、ベスネルがやってきた
「アイリ面白そうね、私にも教官をやらせなさい♪」
ベス姉が教えるようになったら最上級魔法や暗黒魔法まで教えそうだな・・・
ベスネルが面白そうに教えてるけど
私が教えるのを続けるようにと指示したのは、やはり面白そうだったからである
自分の性格がすこし変わった気がするのは色々な記憶を持っているからなのかもしれない
それから2週間たったが、上空から地上に魔法を撃ち込む訓練
剣に魔力を込めて使う訓練、転移して相手の背後から攻撃する訓練など
色々な訓練を行なっている
魔法を覚えてからめきめきと頭角を現してきたアキとカノン
アキは魔法を使った剣技、カノンは攻撃魔法と転移が得意だ
そしてアキは新しく出来た隊の隊長に、カノンは同じ隊の副隊長に昇格した
今日もぷらぷらと上空を飛んでいたら門の上にいるアキやカノンを発見した
お、アルビオンもいるな
「壁上警備かい?アキ隊長殿とカノン副隊長殿」
「隊長殿なんてやめてくださいよ〜アルビオン隊長」
「そうですよー!あんまおだてると調子にのるんですから!」
このアルビオンは私の従者の弟で、5番隊の隊長だ
ちなみにアキとカノンは6番隊、数字はただ単に編成された順番だよ!
ちょっと挨拶していこうかな・・・
「3人とも仲よさそうにしてるね」
「あ、アイリ様!そうなんです年が近いですからね〜!」とアルビオンが元気よく喋る
「アルビオン隊長は僕の二つ上なんです」「なので私の一つ上ですねアルビオン隊長は」
などと会話をしていたら周りが騒ぎ出した
「なんだあいつらは!」「敵か!?」「門を閉めろーー!」
あれは・・・魔族だね、20人ほどいるな
「あれが魔族でしょうか?」と聞いてくるアキ
「うん魔族だよ、何しに来たんだろうね」
《ドンドン!》「おらぁー!門を開けろー!」「食料をよこせー!」
\早く開けろーー!/ \聞いてんのかコラー!/ \おらー!なに上から見てんだー!/
「・・・アイリ様、これはどう見ても友好的ではないですよね?
追い払ってもいいですか?」
「そうだね、アキ出来るかい?」「はい!見ていて下さいアイリ様!!」
「6番隊!!我に続けーーーー!」オオオオーーーーー!!ウオオオオオーーーーー!
白銀の鎧に白い衣をなびかせ壁上から飛び立つ数十人の騎士達・・・かっこいいな
地上に立ったアキが叫ぶ
「そのまま去るなら見逃そう!向かってくるならば死を覚悟しろ!」
なに!?・・・なんか口上がヴァーリと似てるな・・・
\なんだこのガキはー!/ \調子にのるんじゃねー!/ \おらー!かかってこいー!/
「くらえ!!」《ブンブンブンブン!》
魔族の1人が手に持っていた大きな斧をアキに投げつけたが
《カッキーーーーーーン》と剣で弾き飛ばした
「古より人の地に伝わる剣技を受けてみろ・・・爆炎波!!
《ズッッドーーーーーーン》
「痛ってえ・・痛えよ・・・」「・・・まいった降参だ助けてくれ」
20人ほどいた魔族の半分は影も形もなくなり、残った魔族も重傷になっていた
アキは手を上げ全員に合図を出した「6番隊!撃てーーー!」
《ドンドン!》《ドゴーン!ボン!》《ボンボン!ズゴーン!》
容赦のない一斉攻撃が魔族を襲った・・・もちろん魔族は全滅していた
すごいな、これほどとは・・・
ただそれよりも気になっていたことがあったのでアキに聞いてみた
「アキすごいね!見直したよ・・・ところでその爆炎波って誰に教わった?」
「ありがとうございます!この爆炎波はヴァーリさんに教わりました!
なんでも昔の英雄が使っていた技らしいです」
・・・そう、さっきの技はヴァーリの友人でもあった人間の
英雄ハウザーの奥義なのだが、ハウザーの威力よりも高かった
ハウザーが魔将シャル・ルヴェルに同じ技を使った時
魔将は傷一つつかなかったらしいが
いまの威力ならば倒せなくても怪我を負わせることはできそうだ
あ・・・魔族を全滅させちゃったけど仕返しにこないかな?
はぐれ魔族の群れっぽかったし大丈夫かな?
「アイリ様お話が・・・このまま魔法を教えるのは危険です!!」
「ん〜まあ大丈夫じゃない?」
\イグニッション!/ \イグニッション!/ \イグニッション!/
《チュドーーーーーーーン!!》《ドンガラガッシャーン!》
「あわわわ、ちょっとあぶない!やめなさい!中止!中止!」ギャー!
\イグニッション!/\イグニッション!/\イグニッション!/
「ぶべらぁあ!」「ぐぶほーー!」\イグニッション!/\イグニッション/
《チュドーーーーーーーン!》




