10話: 冥界からの帰還
夜が明け、冥界に向かう準備が整った
「準備が出来たみたいだし、そろそろいいかしら?」
ベスネルは冥界へと繋ぐ空間を作り出す、みんな緊張してるようだ
善人なら天国、悪人なら地獄などという区別はなく
死んだ者は全て冥界へ行くようになっている
冥界に入ると幻想的な風景が広がっていた、空に浮かぶ島々があり
その中でもひときわ大きなこの島に冥界の王の屋敷がある
さっそく屋敷に向かい王に通行の許可をもらいにいく
屋敷の中に入るとハーデスが座っていたが、流石は冥界の王である
風格や威厳を保った姿をしているが、そんな冥界の王ハーデスにベスネルは
「ちょっと冥界の中をみんなで周るからね〜♪」っと気軽に話しかけると
あ、どうぞどうぞ と簡単に許可が下りた
長い年月を生きた私に思い出深い人物は多く、会いたい気持ちもあったが
私はアキのもとへ向かうことにした
他のみんなもそれぞれ目的の場所へ向かいベス姉だけは私についてきた
そしてアキの居場所を聞いた後すぐ発見することが出来た
アキは最初ビックリしていたが自己紹介を終わらせ、事の顛末をすべて話した
カノンのこと両親のこと村のこと
全てとはいったがアキを殺したゴブリン実は私でーす!
なんてことは言わずに隠した
アキは戻れるなら戻りたいと言ってきたので
生き返らせる事ができるのかベス姉に聞いてみると
禁止されてるけど冥王ハーデスが許可すれば可能との事だった
それなりの代償が伴うらしいが
私には関係ないからいいんじゃない?と他人事のように話すベス姉
ハーデスに会いに行く前に他のみんなの様子を
見ていこうとベス姉が言い出したのでそうする事にした
私も気になってたしね!
まず目に入ったのがヴァーリとフレイヤだった
話してる相手はフレイヤの母でありヴァーリの妻であるイリネル
もう1人はフレイヤにとって祖父であり、ヴァーリにとって親友であるハウザーであった
「やっほー久しぶり!」と声をかけると2人とも懐かしそうに喜んでくれた
私やベス姉にとってもハウザーは友でありイリネルも娘のような存在である
ハウザーが統治してた王国は遥か昔に滅んでしまったけど
ここで幸せそうに過ごせてるようで良かった
他にもブラギ、イズン、テュールが会っていた相手と思い出話に花を咲かせた
あ、そうそう、バルドルにもちゃんと会ってきた
私を守れなかった事を悔やんでいたけど今はこの通りピンピンしてるしね
ヴァーリがこちらに来たところで私とベス姉はやっと屋敷に向かう事にした
屋敷に戻りハーデスにアキを連れて帰る話をしたら、丁重にお断りされた
「死者を生き返らせる事は禁止となっています、先代であるベスネル様ならご存知でしょう」
「それを決めたのは冥界の王でしょ?貴方はいま冥界の王なのだから1人くらい
いいでしょう?」妹として申し訳ない気持ちになるような発言を聞いてしまった
これは無理じゃないかとも思った
「ゼノ様と同じ過ちを繰り返すのですか?」
「本当に貴方はお父様が過ちを犯したとでもおっしゃるの?」
「やろうとしてる事はベスネル様も同じでしょう!」
「お父様が死の宣告を防いだのではなくて」
「ですがそのせいでゼノ様は・・・」
神族と人間の連合軍は 魔族と争っていたが数百年経っても決着はつかずにいた
だが人間の文明が進むとともに魔族を追い詰めていった
数年ももたないと考えた魔王ヴェルゼは魔族が敗北するくらいならと
この世界に死の宣告を告げた
死の宣告のあと空は赤く染まり、植物は枯れ海の色は黒くなった
世界の余命はおよそ1年程度になったのである
その状況にゼノは冥界の魂をすべて解放し
英霊達と共に魔族を滅ぼす事を決意したのだが・・・
当時の冥王はそれを許可しなかった
許可をしないのならばと、ゼノとロキの父でもあった副官グノシスは冥王を手にかけた
冥界を支配した父ゼノは神族の魂を解放して英霊を集めたが
もちろん味方ばかりではなく魔族側につく者や
神族を分けてノア神族を作った者も現れた
激戦の末、なんとかヴェルゼを捕らえることに成功して
宣告を止めることはできたが、ノア神族によってゼノは命を奪われたのである
捕らえたヴェルゼは今でもイヴァ城の地下牢獄で幽閉され
人質として魔族に睨みをきかせてくれているのである
「たった1人それも人間の子供、それくらい許可してくださらな〜い?」
「・・・今回限りですよ」許可が下りた
これでやっと1日に何度も身体を交換しないで済む!
さっそくアキに報告してアキを連れ屋敷に戻ると
他のみんなの面会はどうやら終わったようで私を待っていた
「さあ帰ろうか!」そのあと村に戻りアキの魂をアキの身体に戻すと
アキは目を開け立ち上がり、自分の体を確認するように指などを動かしていた
「アキおかえり、久々の体はどうかな?」
「はい!ありがとうございますアイリ様!」
本来ならアキはあのゴブリンをやすやす倒したどころか遭遇すらしなかったのだし
ゴブリンに乗り移ってアキを殺してしまったのは自分なので
お礼を言われるのは変な気分がした
そんなアキに身体が戻ったし自由なのだから
カノンと一緒に自分の街に戻るか聞いてみたところ
ここで暮らしてもいいですか?と聞かれたので村に住むことを許可したあと
村の中の施設などを案内しアキを教団騎士団員に所属させた
食料調達隊の話によると東にある町が壊滅していたらしい
生き残っていた者の証言によると、魔族に襲われたとの事であった
「アキおかえり、では・・・しねええええこの野郎!」 \ギャーーー!/
「くっくっく・・・」「なんだ!?なんだ!?いまの悲鳴は」ガヤガヤ ワーワー
《やばっ!どうしようどうしよう・・・ピカーーン!!》アキに乗り移る
「ぐほあっ!!ちょー痛すぎー!」パタンっ アイリサマー!
「チース!」「うーっす!」
【冥王ハーデス: え?】




