9話: みんなで冥界へ
空から村を眺めながら
大昔のことを考えていたアイリだったが月明かりで照らされたアイリは
地上から見たらまるで神か魔王が降臨してきたような光景であっただろう
「アイリこんなところでなにをしているのかしら〜?」後ろから声が聞こえてきた
「ちょっと昔のこと思い出してただけ、ベス姉こそどうしたの?」
「冥界の仕事が暇になってた時にバルドルがきてビックリして来たのよ」
「・・・いやなんでベス姉もわざわざ横に浮遊してきたのかな?って質問だったんだけど」
「まあいいや・・ビックリしたって何を?」
その質問にベスネルは答える
ロキに殺されたバルドルの魂が冥界の王であったベスネルに
共に殺されたはずのアイリの魂が見つからない
名簿に載っていないか確認してくれと言われ確認をしたが名簿には載っておらず
気になったベスネルは人間界を探したところ魂のないアイリの身体を発見した
イヴァとノアの大戦争が起こる前にベスネルは冥界の王なり
死者の管理をしていたが400年経って暇になった冥界の仕事に飽き飽きしてた
そんな時にワクワクする出来事を見つけたので
冥界はハーデスを後任として選び、ベスネルは人間界に戻ってきたらしい
「あなた冥界にも行けず消滅しそうになっていたから、
魂を導こうとした時にゴブリンに乗り移った時は面白かったわよ〜」
「・・・見られてたんだ。」
「・・・ベス姉質問があるんだけど、冥界にある魂を元の身体に戻すことってできる?」
その質問にあっさりベスネルは答える
「身体が存在するなら可能よ、別の身体でも大丈夫」
「でもその行為は禁止とされてるのよ♪」
「もしかしてアキという人間のことかしら?
気になるのなら一緒に冥界に行ってあげてもいいけどどうする?」
「ありがとうベス姉、でも大丈夫なんとかなるから!」
そう答えたのはアキとカノンは姉弟みたいなもので
もし万が一、万が一私が下手をしてカノンと結婚することになっても
人間の寿命などたかが知れてる。
数十年、長くても100年後には必ず終わりを迎える
それまで転移を繰り返せばいいだけの話であって
禁止とされてる行為を行うなんて考えは消えた
--------------2ヶ月後---------------
アイリス村には発展途上ではあるが色々な建物、施設が出来上がっていた
それもそのはずだ、イヴァ教団の人間がどんどん移り住み現在の人口は400人ほどになっている
人口増加はとどまることを知らず毎日住民登録の手続きが行われている状態である
以前は教会の教壇の奥に私を象った彫刻だけだったのだが
いまでは村の中央に巨大な銅像が建っている
私は恥ずかしいので反対したのだが
元師団長達はアイリ様がこの村の象徴なのでなんたらかんたら
結局押しきられて今に至る
その銅像を崇めている教団員達を横目にコソコソと移動する私
見つかると面倒くさいことになるしね
教団員と話すときはやはり威厳を保った口調で話すようになるし
お堅いことが苦手な私には苦痛だ
周辺警備を担当するイズン
最初はアキの身体で一緒に警備?探索の方が近いかもしれない
近道を発見して喜んだりしていたが、いまは村人が増えたので
イヴァ教団騎士団を編成してイズンを筆頭に周辺警備などを行なっている
教団騎士団の装備を作る為に、村の鍛冶屋からはカンコンカンコン!音が響いている
ヴァーリは鍛冶屋に半壊した仮面を持って行き直すよう頼んだが
私が表情が見えないと忠誠心も隠れてしまうとヴァーリに伝えたら
ヴァーリはすぐ鍛冶屋に顔が半分見えるように作ってくれと依頼していた
お風呂の代わりに近くの湖を使っていたが
村人が増えると異様な光景になってしまったため
やはり早急に作るように指示をしたのだが
最初にできた大浴場は仕切りのない混浴だった為
老若男女が住むこの村では相応しくないだろうと改装した
建設担当していたブラギは現場監督の仕事が楽しいのか
かなり張り切っている村の遠方から作っていた柵はすぐに完成したのだが
強度が〜、などブラギが言い出し柵のさらに遠くに
10mくらいの高さはあるだろうか?壁を村を囲むように建設を始めている
まだまだ完成には程遠いが、壁が建設されてる部分だけ見ると
もはや村というよりは要塞である、昔見たハウザーの王宮の壁よりも立派かもしれない
テュールはいまでも食材調達担当である
1つしかなかった馬車が2つ3つと日に日に増えて行き
食材調達部隊は各方面に毎日調達に向かっている
そんななかでテュールは2週間に1回くらいのペースだろうか
馬車から溢れんばかりの食材を持って帰ってくるが
仲良くなった山賊に加え最近は海賊達とも仲良くなったらしく
おすそ分けされているらしいが・・・みかじめ料みたいなものなのだろう
このテュールは今では考えられないが昔は
神族の中でも1.2をあらそう荒くれ者であったのだ
そんなテュールもいまでは従順な配下である
フレイヤは王族として幼少の頃から英才教育を受けてきただけあって
何でも卒なくこなすことが出来る
中でも料理は得意で村の中にレストランなどがあるが料理人は皆フレイヤに弟子入りした者達だ
順風満帆!まるでなにも悩み事などないように見えるが・・・ああ、始まった。
「アキー!おーーーいアキー!」このカノンである
「あっ!アイリ様おはようございます!」「おはようカノン朝から元気ね」
「はい!・・・あのアキを見かけませんでしたか?」
「アキね・・・アキはテュールに付いて出かけた気がするわ」
「あのやろー!・・・はっ済みませんアイリ様の前で」「いいのよ気にしないで」
長くても100年などと思っていたが、たった2ヶ月でもうギブアップしそうである
1日に何回身体を入れ替えてるだろう、ベス姉に大丈夫なんとかなる
などと言ってしまったが早急にどうにかしたい、今日の夕食の時に話すことを決意した
「ハッハッハ!・・・いやこれは失礼
しかしアイリ様がそこまで悩んでらっしゃるとは」
「確かにあの様子では落ち着けませんよね」夕食の時間に元師団長たち全員に話す
「冥界に行く気になったのね〜アイリ」
冥界に行ってどうにかなる問題なのか分からないが藁にもすがる思いで頼んでみた
「じゃあ明日にでも行きましょう、そうそう・・・あなた達はどうするの?」
静まりかえった食卓で最初にヴァーリが問う
「私達も付いて行って構わないのですか?」
「もちろんよ〜♪みんな懐かしい人達に会いたいでしょ?」
全員同じ答えだった、行けるのなら付いて行きたいと想いを伝えた
仕事は補佐に任せて明日はみんなで冥界へ出発する
「アキー!」「おーいアキー!あ、アイリ様」
「あ、アキなら・・・そ、そうテュールについってったと思う!たぶん」
「・・・テュールさんですね分かりましたーー!」ダダダダダッ!
《キキィィーーーーー》
「テュールさんだ!・・・でも恐そうな人達に囲まれてる」
「おい・・・これで全部か?」「へ、へい!」
「それもよこせ、全部だ!・・・・ZE・N・BUだ!」
ガクガクガク




