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私がおとぎ話となった理由  作者: もんじ
序章
1/23

0話: おとぎ話の始まり

昔話の発端はこの会話から始まった



「・・・街道の警備の報告は以上になります」

「そう、ありがとうイズン」

「とんでもないですー!」


「はぁ・・・」

「どうかしたんですか?アイリ様」

「みんながしっかり仕事してくれるから暇だなーって思ってね」



「あはは!そうですねアイリ様は座ってればいいですからね!」

「・・・・え?どういう意味?」


「いえ、だからアイリ様は仕事は他の人に任せて何もしないでいいなーって!」

「・・・は?」

「うらやましいですぅ!」


「ちょっとイズン様!」と従者のシレーヌが止めに入った

悪気が無いのは分かったがもう手遅れである



次の日



「お呼びですかアイリ様?」

「モグモグ・・・いらっしゃいイズン」


「ああ、美味しいこのチョコケーキ」

「はぁ・・・ご用件はなんでしょうか?」



「モグモグ・・・ああ!そうそう用件ね用件はね・・・」


「きのうのイチゴのショートケーキ美味しかったわよね」

「え?」



「・・・モグモグ・・・モグモグ」

「え?え?なんですか?アイリ様」


「だから、フレイヤの作ったショートケーキおいしかったよね?」



料理担当のフレイヤはデザートなども毎日作ってくれているのである



「え?昨日はケーキなかったですよ?」

「あっはは、ごめーん!昨日のイズンのケーキは私が食べたんだった!」


「・・・え?えええ!」

「モグモグ・・・美味しい」


「それでね・・・今食べてるこのチョコケーキ?」

「これはねぇ・・・イズンの今日の分のケーキなの!」


「おーーっほっほっほ!」

「・・・・・・・」



シレーヌがやれやれという顔で見ていた、

満足した私はもう用件済んだから下がっていいよって

イズンに言ったらイズンが泣き出したので

しょうがなくショートケーキをまた作ってとフレイヤに頼みに行く事になった



「フレイヤ悪いけどショートケーキまた作ってくれる?」

「ショートケーキですか?分かりました・・・あっ!でもイチゴはもう無いのでイチゴのないショートケーキでいいですか?」


「うんうん、それでいいからよろしくね」

「いやダメですよね?」



イチゴのないケーキじゃ嫌だとイズンがうるさいので果樹園に採りに行く事になった


「イチゴ・・・イチゴはどこにあるんだろ?」

「あら?アイリどうしたの?」



声をかけてきたのは果樹園の管理人ことベス姉であった


「あ、ベス姉・・・イチゴどこにあるの?」

「イチゴなんて何に使うの?」


「イズンがわがまま言ってて、イチゴのないショートケーキは嫌だって・・・」

「あら〜〜、そんなわがまま言っちゃダメよイズン」

「え?だってアイリ様が・・・」


「イチゴねぇ・・・ちょうど昨日で採り終えたのよね、普通のイチゴは無いけど

この試作品第2号のイチゴっぽいイチゴならあるわよ」


「あっ、それでいいから頂戴、いちごっぽいいちご」

「いやダメです!」



ワガママばっかり言うイズンの為に仕方なく町で探すことにする


「こんにちは八百屋のおじさん」

「ひゃあああ!アイリ様!?ありがたやーありがたやー」


「・・・イチゴを売ってくださらない?」

「はい!えーーっと・・・済みませんアイリ様、品切れになっております」

「あら、いつもどこから手に入れてるの?」

「いつもは果樹園か調達部隊からの入荷待ちです」



果物系を持って帰ってくる調達部隊が帰ってくるのは3日後らしいので

イズンにもしょうがないから諦めなさいと話した


次の日もイズンを呼び出す


「お呼びですかアイリ様」

「・・・・・」


「どうして後ろ向いてるんですか?」

「モグモグ・・・ん?イズンいらっしゃい」

《くるりん》


「モグモグ・・・モグモグ」

「あーーー!イチゴのショートケーキ!」


実は昨日の夜テュールが山賊からのおすそ分けで大量に果物を貰ってきていて

イチゴもいっぱいあったのだ!


「・・・モグモグ」

「アイリ様、私の分は?」


「これ?これは私のケーキよ」






「はい!こっちがイズンのイチゴのショートケーキ!」

「ありがとうございますアイリ様!」


「モグモグ」

「美味しいかしら?イズン」

「はい!とっても!」



シレーヌが2人分の紅茶を出してきた


「アイリ様?」

「なーに?イズン」

「アイリ様ってお目覚めになる前、人間の体で過ごしてたんですよね?」


「うんうん、そうだよ」

「私は今日お暇をいただいて時間があるのでその話聞きたいです」


(なんか私はいつも暇人みたいだな・・・)


「・・・そう、じゃあどこから話そうか」



イズンが生まれる前の学生時代からか・・・

それとも英雄ハウザーが国王に即位した時か

あるいは、ロキが魔将にボコボコにされた時か

いや、そんな何百年も前の話じゃなくて精神体で彷徨っていた時からでいいかもしれない




精神体で彷徨い続けていた頃の私には思考はあったけど身体と記憶がなかった

その時分かってた事は、この精神体ままでは近いうちに必ず消滅するということだけだった


周りにいる昆虫、動物、人間などの生物たちを見て思った

私は何者だったのだろうか・・・?

そしてその気持ちすらもどんどん薄れていって・・・


生物触れようとしても触れることができないし

もちろん声をかけることもできなかった

気付かれすらもしない空気未満の存在だった



生物の死に立ち会うことも度々あって

その死の瞬間に一瞬だけ・・・まるで

私と同じ精神体のような存在を感じることができた



それで思った私は同じようにどこかで生き

そして死が訪れたのだろうか・・? このまま消滅するのを待つしかないのか?

ただ、一つだけ思い当たるのは、死を迎えた生物から私と同じような精神体が消えたら


私がその肉体を代わりに動かすことはできないのだろうか?

このまま消えてしまうのなら・・・試してみる価値はありそうだって



辺りを見まわしてしばらくするとちょうど100mほど先の森に

背中と足に矢が数本刺さって生命力が間も無く尽きるだろう生物(ゴブリン)がいた


人間に攻撃されて命からがら逃げ延びてた様子で

その命はすでに秒読みなのは分かった

どこに向かっているのか、足取りはふらふらだが

目指してる場所があるように見えた「ズタッ!」っという音とともに

ゴブリンの身体は崩れていた その数秒後だろう死を迎えたのがハッキリ分かった




死を迎えたと分かったのは、ゴブリンの体から精神体が一瞬現れたから

さあ試してみようとゴブリンに近づいて・・・

近づいて分かったのだがこの精神体を肉体に移す方法は

本能的に分かる 言葉では言い表せない


ただ出来るということが分かってしまうそんな感覚に近かった

そっと息を飲んだよ、息は吸ってなかったけどね


肉体に精神体が完全に入った瞬間

1つの感覚が体を襲う、それはもの凄い激痛

痛ったああああ!って、でも痛みは徐々に減っていき

傷も少しづつ癒えていき溢れ出る力を感じた


そして前の肉体の持ち主であろう記憶を持っていた

その前の持ち主っていうのはゴブリン。


矢を受けた理由はゴブリンの本拠地の南に位置する野営地が

人間の軍隊じゃなくてギルドに所属するチームで、10人ほどのチームが3つほど

奇襲を受けた(ゴブリン)は北にある本拠地に報告を急いだが

その途中で力尽きたのだった

あの時、野営地にいた仲間はすでに全滅しただろうな、うん間違いない



本拠地に報告にいこうとしていたが中身が変わってたからその必要性を感じなかった

だけど肉体を貰ったお礼にでも?って考えたけど

いや、もうすでに死んでしまった肉体だしな・・・ って結論で報告に行かなかった


とりあえず身体を馴染ませる為に色々やってみた

まずはジャンプ、このゴブリンの記憶が残っているから

どのくらいが最大値か分かっていたから


膝を思いっきり曲げて思いっきり伸ばした!

飛び跳ねた瞬間にビックリ、まるで重力が逆転したような感覚

森から頭が飛び出して一面に木の絨毯がひかれているような

そんな景色を眺めた瞬間重力が戻ってきた

これ落ちたら痛いのかな嫌だななど考えながら落ちて・・・


地面にぶつかった瞬間に感じた激痛は矢を受けて前回死んだ時よりも強烈だった

数分間死んだように寝たあと、今度は襲撃にあった野営地で教わった

大振り右フックを大木になどと色々考えていた時に

音速まではいかない飛来物が後ろから飛んでくるのが分かった

後ろを振り返り飛来物をつまんだ


「流れ星?」 「ちょっと黙ってて」



体に刺さっていたのと同じような矢だった

矢を射ったギルド員であろう人間の男達が現れる


「あれー?1発で仕留められると思ったんだけどなー!」

男達はニヤニヤ余裕な顔をして近づいてくる、それもそのはず

そのゴブリンはモンスターの中では小柄でこの個体の身長も140cmくらい、

人間の子供くらいの身長しかない、人間は4人 弓と剣などを所持している


だけどなぜだろう負ける気がしない

横にある大木の枝を折りお手頃サイズに変えたあと人間達に

かかってこいよとポーズをとった

まあ言葉が伝わらないような様子だったしね

世紀末の雑魚達のように3人が剣を片手に突進してきた



先頭の男が剣を頭上から振り下ろしてきたのでそれを受け流そうと

棍棒を斜め下から振り上げる「グシャン!!」と音とともに先頭の男は

10m先くらいだろうか、そのくらい吹き飛んで見る影もないいわゆる即死だった


剣を受け流すだけのつもりだったけど

ゴブリンの記憶があるから分かった、これは尋常じゃないって

残りの2人はオロオロして先ほどの勢いはなくなり逃げようか悩んでるのがうかがえた


ただ1人の少年だけは剣を構えてこちらを見つめている

戦場などに慣れていないのだろう剣先がガタガタ震えて腰が引けていた

どうしようかな?逃してもまた攻撃される可能性はあるし


ってことで残り3人をあっという間に打ちのめした

4人の人間の死骸を見ても冷静だったから、それは単に記憶が無いからだけなのか

ゴブリンにとって人間が敵だったからなのか

それとも昔は当たり前のことだったのか


少なくとも元の肉体は人間ではなさそうだ

同族であったのならなにかしらの感情が湧いても不思議じゃないもんね

ただこれから先どうしたらいいのかゴブリンの本拠地に行って

そこで生活するか、でも元の肉体が何者だったか気になってた



ゴブリンの記憶では人間のほうが広い範囲で生息していて個体数も多く

文明も栄えてるとのこと ギルドに所属しているであろうこの4人

ギルドとはギルド員同士で情報交換などをして

世界各地で任務などをして報酬を得ている組織らしいが

詳しいことはそのゴブリンでは分らなかった


この人間に移れるなら元の肉体の情報も掴めるかもしれない!?

だが肉体を保有している状態でほかの肉体に移れるのだろうか?

それは死骸の近くに行けばすぐ答えがでた


「可能」だ、とはいえこんなグチャグチャな死骸に移ったら

悲鳴をあげるほど痛いんだろうな・・・

このゴブリンで経験したからね


もう1つ この個体で得た情報は新しい個体でも引き継がれるのだろうか?

引き継がれなかったらなんで人間になったのかを考えて

近くにいる綺麗なゴブリンの死骸にまた乗り移りそうだな

乗り移りをループして先進めないなんてオチはいやだ!


とりあえず短い間お世話になったゴブリンの体に土をかぶせて

4人の人間の中から損傷がまだマシな少年の個体を選んで乗り移る



「ああ、物凄く痛い」同時にゴブリンの時とは比べものにならないほどの

情報量が増えていった、どうやら前回の肉体の情報も残るようだ

あんまり色々乗り移ると自分がいまどんな生物なのかも忘れるように記憶が混合しそうだ


そして人間には各地に栄えた街があるようだ

この個体名アキはここから西にあるドカサという街のギルドに所属してる

そしてギルドにはランクがありこの個体はどうやら1番下のランクだ

「はぁ、引き出せる情報も受けられる仕事もたいしたことなさそうだな」

自然と考えることが言葉に出た



街に着いた頃には夜になっていた

まずはギルドに仕事の報告をするんだがドカサのギルドはちょっと変わっていて

ほかの街だと酒場に受付があるようなもんなんだけど

ここは領主がギルドを全面的に支援していて建物もギルド会館っていう

3階建ての立派な建物、今日の報告は3人の死亡の事も話したから時間がかかった


この個体名アキは先週ギルド協会に認定登録され今日が初めての仕事

まだ若いのに初めての仕事で死ぬなんて神様も意地悪だな

なんて心で思っていた時に目の前には幼なじみであり

ギルドランクでは1つ上の少女、カノンが腕を組んで立っている



「初任務ご苦労!アキはゴブリン討伐で逆に討伐されちゃうかと思ったよ!」


このカノンは年がひとつ上ってだけで小さい頃から先輩風を吹かせてるんだよなぁ

というかゴブリンに討伐されちゃうって


現場見られてたのかと思うほど一瞬驚いた








「モグモグ・・・」

「あーーー!アイリ様それはイチゴのショートケーキ!」


「だめよ!あげない!これわたしの!」

「・・・うううう」


「もう・・・冗談よ、はいこれイズンの分」

スッ


「いちごっぽいショートケーキ」

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