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ずっと……

 気がつくと、ティーポットの中の三杯分の紅茶は、とっくに空になっていた。

 菓子類もほとんど食べ尽くしている。


「お茶にお菓子、なくなっちゃったね。……これからどうするの?」 

 たった今まで交わしていた「将来」に対する熱い想いに少々あてられたのか、なんだか面映ゆい気分で上気しながら、上目遣いに彼の顔を覗いた。


「稜、クン?」


 しかし、彼は顔つきを変え、その場の空気を強張らせた。

 そしてテーブルの上、顔の前で組んだ両掌に顎を乗せたまま、無言で何かを考えている。

 彼のその重いざらりとした手触りが何なのかを計りかねていると、彼はゆっくりと私の前に何かを差し出した。


「なあに?これ」


 しかし、手に取ってみて私は一瞬、顔色を失った。


「……これ。どういう意味……」

「カナンが考えている通りの意味だよ」


 それは一枚の、ここクラウン・アソシアプラザホテルのカードキーだったのだ……!


「27階に部屋が取ってある。可南カナンが来たくないなら、キーはフロントに返してそのまま帰ってくれて構わない。……でも。俺はずっと待ってる。可南が来てくれるのを」


 ずっと……と言い残し、彼は伝票代わりのプレートを手に取ると、あっさりとひとり席を立った。

 レジで会計を済ませ、そのまままっすぐ奥のエレベーターへと消えてゆく。


 その後ろ姿を私は、ただ呆然と見守っていた。



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