第三十一話『ポンポン、ポンポン』
確実に僕の腕は掴まれ、その勢いで、土の上にたたきつけられていた。
「まだ、やれる?」
リオンは微笑んで聞いた。
僕は頷いた。
そして僕の修行はまだまだ続く。
そして、一日中、リオンとの組手をした。
もっと正確に言うと一日中ポンポン、ポンポン投げられた。
「結局、一回も当てられなかった・・・」
まさか、こんなに実力に差があろうとは・・・
異世界に転生したら、無双できるんじゃないの?無双。
と、思わずにはいられなかった。
生身の能力が一ミリも上がっていなかったのだった。
そもそも、元の世界にいた時には、ちゃんと体を使った記憶もなかったので、もともとの生身の能力なんて、知りもしなかったのだ。
と仰向けになって思っていると。
「次は、私との特訓ね!」
とニコが言う。
まじでか・・・。
走ってヘトヘトになり、一日中ポンポンとリオンに投げられた後。
さらにニコと・・・。
100回以上投げられた、僕に向かって、笑顔でニコはそう言った。
そして、100回以上投げた、リオンは涼しい顔をしている。
そっちの方が遥かに疲れそうなのに。
「死んでしまう・・・」と僕は呟いた。
「訓練ぐらいで死なないわよ!さ、やるわよ!」
と、ニコが言う。
なにげに言ったであろう、訓練ぐらいで死なないというのは重い言葉だな、と思った。
「・・・と言いたいところだけど、暗くなって来たし、明日にしましょうか」
とニコが笑った。
ニコにも慈悲の心があったらしい、心なしか、ニコが天使に見えた。
もともと、彼女の顔は美しいし、ニコニコ笑ってればそれはそれで素敵なのだ。
「助かった・・・」
そういえば、最初にリオンに投げられた時には、青空だったけど、もう夕焼けに変わっていた。
異世界でも夕日は綺麗だな。
と、ぼんやりと思った。
「そうね!今日は毛終わりにしましょう!」
とヒカルはメガネをぐっと上げて言った。
「リオンちゃん、タカシくんおつかれ!」
と二人にねぎらいの言葉をかけるヒカル。
ニコもお疲れ、と言った。
彼女たちは僕がポンポン投げられている間自分の訓練をしっかりとしていた。
格下の僕の相手をしていた、リオンが一番つかれていなかったといえるレベルで彼女達はしっかりとトレーニングを積み重ねていく。
「たいへんだった・・・」
そう、帰宅部一直線の僕にとって、このトレーニングはハード中のハードだったのだ。
一日中体を動かすなんて、そんなこと考えたこともなかった。スマホやパソコンの前で1日が終わることが日常だったのに。
そして、その日の修行は終わり夕飯を済ませ、僕は部屋に戻っていた。
「ふぁ、なんとか切り抜けた」
と、ベッドの上で呟いたと思ったら、朝だった。
また、すぐに寝てしまったのだった。
しかし、今日はちゃんと起きれたらしい。
「さ、今日も走るわよ!」
とにっこりと元気な姿で現れたニコに、おはよう、と挨拶できるくらいにはは、早く起きることが出来た。
今日はニコの金属によねカンカン攻撃を受けずに済んだ。
僕も成長しているようだ。
「走りましょうか!今日も!」
と僕は、言った。




