欧亜大戦(改第1次世界大戦) そのに で、おしまい
同年イタリア ヴェネツィア近海
ロシア帝国海軍駆逐巡洋艦ヴェールヌイ艦橋
「すいません。こんな水先案内人みたいなことをさせて。」
「いえいえ。皇帝陛下の意向であり、あのようなすばらしい艦隊を拝見できて光栄です。」
ヴェールヌイはイスタンブールの南数百キロの地中海上からあのウンディーネ艦隊が、イスタンブールの上空を黒海へ降りていく様をしっかりと見届けて、いま、寄港地であるヴェネツィア港に入った。
もちろん、雲の中に紛れて現地住民を驚かさないように航行していたのは言うまでも無い。
かつてのズムウォルト級と同じ駆逐巡洋艦であるこのヴェールヌイは、旧名響という。日本の気象級駆逐艦の一隻を譲り受けた物だ。というか、これロシア側がだだをこねた物。
『響と命名された駆逐艦があったら是非譲って欲しい。』
ロシアにとってかつて、日本から友好の証として譲られた暁型4隻は海軍近代化の象徴として、長い間親しまれた存在。特に響を改名したヴェールヌイはその名に恥じぬ働きをしていた。
『あいにく今は居ないが、命名された暁にはすぐにお知らせする。』
そんな回答を受け、知らせを受けたロシア側が見た物は、重巡と見まごうばかりの大型艦だった。
重武装艦隊護衛駆逐艦気象級暁型
日本がロシアのために真心込めて魔設計と魔建造を行った船である。
日本が駆逐艦と言い張るのだから駆逐艦として受け取ったは良いがどう見てもこれ巡洋艦です。本当にありがとうございました。
そういえば、かつて今は無きアメリカには駆逐巡洋艦という艦種が有ったと聞く。何でも第二次大戦時の重巡並の排水量でありながら駆逐艦に分類されたからと言うが、ならこの艦もそれに乗っ取って駆逐巡洋艦としよう。
とそうなった。
「おー、見事にドンパチやってるなー。」
神代からの生き残りである欧州世界と大逆行時に生まれたアジア世界の激突はそのまま、先進科学文明対発展途上文明の激突となった。とはいえ、欧州側が、本気出したらアジア側は簡単につぶれる。そのため、欧州側も手加減してくれていた。常に欧州側と貿易しているなんとかスタン諸国はこれを分かっていたが、後方にいる馬鹿どもは分からない。
ちなみに黒海とカスピ海は逆行時の天変地異によりイラク、イラン、ロシアの一部とどっかの缶コーシーみたいな国名の国、産油国とああ、有ったねと言われるような国の3日ヶ国が、海に沈んでしまったことにより全部黒海と扱われている。
「敵重巡とおぼしき艦轟沈。敵艦隊消滅しました。」
「生存者を可能な限り救い上げろ。海に浮いていれば遺体でも生存と扱う。そうあの水色艦が言ってきたからな。」
「水色艦はひどいですなあ。我が国の最新鋭戦艦なんですから。」
羽黒の環境に入ってきたのは特連艦隊司令の山本さん。
「とりあえず。私は、沈んだ船と敵味方問わず、海に沈んだ者に合掌を。」
これには艦橋内の者が皆倣う。
「…誰か火ぃ持ってないですか?これ、点火して、投げて来いって、うちの元帥から。」
それは、段ボールいっぱいに詰められた、とある会社の商標が書かれたブランド線香の束が5箱だった。
「あ……あっははは。日本の風習というか習慣というか習性をよくご存じですな。誰かライター持ってないか?」




