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よく有る架空戦記 の様な物  作者: 猫湊
まーたやってる
38/41

欧亜大戦(改第1次世界大戦) そのいち

聖暦1904年 明慈37年

日露戦争は起きなかった。大の親日国家たるロシア帝国が日本に敵対するはずもなかった。

前年に起きるはずだったセルビアでのオーストリア皇太子夫妻暗殺も日英が大騒ぎして、オーストリア王室をしっちゃかめっちゃかに引っかき回して日英外遊に切り替えさせたため、起きなかった。

しかも欧州戦争の大まかな舞台となる地域は、三帝五王の勢力下であるためにそんな事は起きるはずがない。なかった。

西暦1915年ロシア クリミア半島 セヴァストポリ 日本海軍黒海艦隊旗艦羽黒艦首

「本当に大丈夫なんだろうか?」

「なにがだ?」

欧州戦争は起きた。欧州というか欧亜戦争が。黒海を挟んだ戦争が起きていた。

日本は欧州組として参戦し、東側から欧州各国を支援。現地へは、海軍航空隊の派遣と世界で唯一彼の国とのパイプを持つことを活かして彼の国にも来演要請を行った。これに対して彼の国はとある世界に進駐させている艦隊を差し向けると解答した。

「その差し向けるという艦隊、たどり着けるのかと気になってな。」

「もう俺たちの後ろにいるけどな。」

そう言われて男は首を痛めんばかりの勢いで振り向き目を見開く。

蒼く澄み切った空の如き色に塗られた戦艦を筆頭に総勢40隻以上の大艦隊が軍港内にひしめいていた。

「発光信号だな。なんて言っているか分かるか?」

のどかそうに男に教えた白人の男が訊ねる。

「ああ、『良いお天気ですね。お客様はどちらでしょうか?』だ。」

「敵をお客さんだなんてなかなか味な問いをしてくれるな。あの船の艦長。」

「…違う。あれは、システムからの通信だな。」

並んで立つ2人の男。白人の方は英国情報部のヘンリー・スコット。日本人の方は帝国情報省海軍出向大佐相当官の三輪義徳である。

帝国政府の意向で世界を股に掛ける大活躍をしている三輪はこの艦隊についてもご存じである。

「あの水色の船が、旗艦のアクアマリン。その両舷後方にいる深紅とオレンジ色の戦艦がQRの愛称で親しまれているクイーンローゼンと、プリンセスオランジア。さらに各戦艦の後方にいるのが、スノーホワイト、ロージアクリムゾン、プリマ・ド・ヴァルキュリアの3空母で、この6隻を基幹としてこのウンディーネ艦隊は構成されている。」

「各戦隊によって色が統一されているんだな。」

「ああ。たしか、第一戦隊が青、第二戦隊が赤、第三戦隊がオレンジを基調としてたな。」

「所属艦隊がわかりやすいのは良いな。あれはどこそこ所属の何という艦だから必要なのはこれこれこういう物がこれくらいという具合か。早速陛下に具申しておこう。ありがとう三輪。」

きらきらした少年のような目で三輪を見つめ礼を言うヘンリー。

「何をおっしゃいマスやら。スコットランド公と有ろうお方がこんな前線も良いところで油を売っていて良いのですか?」

「俺は嫡男の嫡男だからなあ。」

「普通に孫と言えば良いのに。」

ヘンリーはスコットランド公爵家直系の跡取り息子である。三輪は伯爵。こちらは当主だ。

「さて、俺たちはここから結果を見ることにしますか。」

「どうなるのかなあ。」

[どうなるとおもいますか?]

あの素っ頓狂弩天然国王である。

「そうだなあ。…って、誰だこの人。って三輪、何でひざまずいてるの?」

「いや。おまえも三帝五王って言葉知ってるだろ。その三帝のさらに上位に立つ国の国王陛下だよ。」

そりゃもうぽかーんとするしかないヘンリーさんである。

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