あのゲームに今出てる奴は稼働させたい
ちょっと時はさかのぼる。2006年、日本以外で最後まで海軍に籍を有していた戦艦2隻が除籍された。
3ヶ月前に就役した次代の海の女王の誕生を見届けるかのような除籍だった。アメリカ海軍BB-61アイオワは、熱烈なラブコールを送ってきていた大日本帝国海軍真珠湾鎮守府に向かって妹のニュージャージーと共に最後の航海に出た。
『アイオワ級戦艦再就役計画』
アイオワとニュージャージーが真珠湾に到着する前日に日本からアメリカに送られた計画である。
アイオワ級戦艦4隻と未成艦2隻の全6隻を再整備及び建造し、アメリカ軍と共に太平洋、インド洋の平和を守るための要とせんがために、この計画を遂行する。
日本からのこの話を聞いた4隻の元乗組員からなるアイオワ級戦艦退役軍人協会は歓喜した。
アメリカ政府のおつむが幼稚園児なエリート達は「日本がアメリカに攻め入る準備に違いない。」と明後日な理論を振りかざしていたが、国防省だけは冷静に、ハワイ以西は日本の勢力圏であり、そこを可能な限り自分たちで護ろうとしていると認識していた。
そしてついに白い馬鹿が赤い馬鹿と手を組んで日本と素っ頓狂なお友達に戦を仕掛けた。
「馬鹿じゃないの。」
その言葉の直後、おばかたちの船団がまるで、風船がわれるかのごとく砕け散った。
「相変わらず電磁誘導粒散弾は面白いぐらいに金属艦に効くねえ。」
特連艦隊提督山本と神子が苦笑している。
日本と愉快な仲間達の3ヶ国以外はミサイル主兵に置き換わっているため、艦艇装甲が昔と比べて薄い。なので、戦艦の砲弾が当たっただけで雲散霧消してしまう。まあ、撃ち出される砲弾がそういう砲弾というのもあるのだが。
『離反艦全艦日本軍の戦艦砲撃により撃沈されました。』
「大統領、日本政府から書簡が届きました。」
「読め。」
ホワイトハウスでは、離反したとはいえ元は合衆国に属していた十数隻の艦艇に対して合衆国大統領B・F・オバマが胸に手を当て哀悼の意を表していた。
「はい。
『事後となり申し訳ないが、離反したとは言え元は同名国たる貴国に属していた艦艇を貴国の許し無く攻撃し沈めてしまったことを謝す。
謝罪に変わるかは分からないが同数の艦艇を、こちらで建造しお返しすることでお許し願いたい。
大日本帝国内閣総理大臣安倍真三』
以上です。」
「お心遣い感謝し、願わくばお願いすると伝えろ。」
「畏まりました。」
補佐官が退室すると黒人初の合衆国大統領となったオバマは自身の半生に強く影響を残す、日本領ハワイでの生活を思い出していた。
彼の幼少時代は、まだ人種差別、国籍差別が残り白豪主義がのさばっていた時代だった。そんな中シカゴから父方の親戚を頼り、ハワイに来たオバマ少年は、肌の色の区別無く皆が、笑顔で幸福そうに生活している様を見て育った。
それが、祖国合衆国ではどうだ。自由を歌いながらも自由なのは白人だけ。そんな嘘を真実にしたいそう想い彼は、共和党の門を叩きそして、2009年の選挙でほとぼり冷めたろと出てきた民主党候補を蹴散らして大統領に就任した。
その後彼は、日本にあるお願いをした。それは日本にとって有る悩みを解決できることから日本側も快諾した。
翌年意図せぬ三選をしたオバマが行った初の公務は恒例の演説ではなくサンディエゴの軍港に立っていることだった。赤絨毯の上に立ち水平線を見つめるオバマ。
水平線上にぽつぽつと影が見え始めた。
先頭を走るのは全体的に真っ白に塗られたイセクラスの戦艦。そのマストには青地に白い二本線と緑の紋章かの国の軍属を示す旗がはためいていた。
その後ろには二隻の戦艦。日本海軍の象徴とされるナガトクラスである。
さらにその後ろには4隻の彼には見慣れた戦艦が。
十年前アメリカ海軍籍として最後の航海に出たアイオワ級である。その後ろにも2隻のアイオワ級がいた。全て日本海軍旗をはためかせている。
その後ろにはアメリカ海軍旗をはためかせた2隻の見慣れぬ戦艦。そして、先の馬鹿が起こした戦闘で沈んだはずの艦番号を持つ艦艇と艦番号が書かれていない艦艇併せて40隻を超える大艦隊がやってきていた。
「大統領閣下、旗艦-以下-隻全艦並びに新規配備艦-隻と、モンタナ級2隻計52隻只今帰国いたしました。」
「ご苦労。よく戻った。貴艦らはこれより7ヶ月間の整備に入れ。…これがモンタナ。かつて見た設計計画書と細部が異なるが、大筋はそのままか。」
「そうですね。モンタナ級は計画時は連装16インチ砲でしたが、こちらは18インチ砲三連装です。
さらに、加賀や土佐、日向と同じように伊勢を元に細部のステルス性能、艦橋への強制電波誘引と吸収能力の付与。機関の省エネ、高出力化等を行いました。
これで、モンタナ級は200年後も第一線で稼働可能な艦となっています。耐用年数は250年が目安と言われ最低でも200年はその能力を維持します。」
敬礼の後去って行った将兵の後彼の横に立ったのはあの愛国総理。
「時代遅れとされた戦艦を貴国が運用し続ける理由は?」
「戦艦は装甲の基準です。戦艦の主砲に耐えられるように各艦の装甲の厚さが決められ、それに合わせた機関設計が行われます。これによって、お国の提唱するミサイル主兵論は我が国には通用しづらくなっています。さらに我が国には千年に及ぶ戦艦の運用実績があります。
お国では、ズムウォルト級を『未来の戦艦だ』と言っている物も居るそうですが、それでも、あれは分類では駆逐巡洋艦。6インチ砲程度では我が国と英露の艦艇に傷をつけられません。
じゃあミサイルなら。
我が国の戦艦の通常砲弾における射程は150km。自己誘導噴進弾の場合に至ってはその10倍は堅いです。」
対艦ミサイル並み飛距離を砲弾が飛ぶというのは信じられない様子だが、安倍はさらに、
「砲弾には電波吸収印が刻まれ、対空砲や、迎撃中が命中したらしめた物。粒散弾と呼ばれる弾種のため、細かい砲弾が目標を蜂の巣にします。」
資料と共にこの話を大統領から聞いた3軍の長らは、その能力に恐れおののき対抗策を構築する金の無さに落胆し、既に当時このような軍事大国となっていた日本に喧嘩を売ったときの政府に呆れ、今は同盟国として、親友と呼べる間柄になったことを神に感謝していた。




