異世界艦の中で
「艦長代理。特務連合艦隊全艦所定位置に展開。いつでも地中海に向けて出発可能です。」
「わかった。あぁ。司令には報告した?」
「はい。艦長代理の指示に従えとの命令が。」
「私はいつも通り運航局長の呼びが良いんだけどなあ。
昭和18年の10月 西太平洋トラック諸島北西沖
「惑星最深の海溝に着底していても、惑星最高峰よりも高い位置に有る艦橋って言うのがもう馬鹿げてるよねえ。」
「そうおっしゃっても、逆に考えれば見晴らしが良くて良いではありませんか。」
「辺り一面雲しか見えないのに?」
何かをごまかすように明後日の方を見て頬を掻くのは古今東西変わらない。
「さてと、お昼どうしようかなあ。」
「局長、まだ1030ですよ。」
「あ。」
「これで序列第8位ってのが「信じられない。」局長!」
局長とも艦長代理とも呼ばれる女性の名は、リー・ケイト。彼の国の将校である。ただの将校ではない。前述の言葉の通り彼の国で第8位の地位にある。
呆れているのは、彼女の右隣に座る、天測士。名をルエンという。階級は、少将。結構高いが、この間何故か少将とか大佐とかが、甲板掃除していたり、一般兵がやるようなことやってる。ルエンはリーが局長を務めるこの間の運航局に属する。運航局は他国で言えば航海科である。複数隻の船が結合して運用されているため、各艦の科をまとめる形で局が置かれているのだ。
『ウェリアスより全艦に達します。只今より主機出力を20%増加させます。これにより、喫水線に仮想水面が構成され、航行準備状態に入ります。総務局甲板部下部甲板科員は注意をお願いします。』
全艦にアナウンスが流れる。
『仮想水面展開します。』
「海溝壁に傷をつけたくないなあ。両舷前進天舵45°速度40、単位kt/h。航海喫水に達した後、転舵面舵270°両舷増速20Pckt/hへ。SELP5へ移動し待機。艦隊と合流する。」