総統閣下と士気の高い海軍の秘密
ドイツが、掌を返したように連合国に対して、態度を変えた理由の一つに、親衛隊による監視体制における国内の生産性、経済額に明らかなマイナスの兆しが見え始め、このままでは立ちゆかなくなると判断した総統閣下が、親衛隊の大規模な改革。実質的な廃止に乗り出し、国民の間の閉塞感がなくなったこと、そして、自身では日本を愛していた総統閣下が、その憧れの国を悪し様に言う政権幹部に堪忍袋の緒が切れ大粛清を行ったことが上げられる。
まあ、金槌閣下が時たま海軍に八つ当たりするのはもう日常茶飯事であるが、それだけ信頼されているというとらえ方をされ、ドイツ男子の間では、3軍の中で最も人気のある部隊として海軍を上げられている。
かつて、大戦初期に北海で行方不明になっていた船はこの連合国との講和により英国の紹介船に捕まり拿捕、日本に売却されていたことが判明した。
これらの船は講和後グラーフ・ツェッペリン級航空母艦3,4番艦を完成後本国に回航する際の護衛として、わざわざ本国から呼ばれた将兵によって運航され帰国を果たしている。
「レーダー君。海軍の士気がこのところすこぶる高いようだが何か理由があるのかね。新鋭艦の導入を理由にはしないでくれたまえ。海軍の士気の高さを維持する方法が、もし、簡単に実践できるようならば、陸空軍だけでなく、国民にも広めてやりたいからな。」
グラーフ・ツェッペリン級航空母艦をぴっかぴかな状態で日本から大艦隊の護衛付きで納められる海軍の力と、その後の自身への的確なアドバイスからレーダー海軍長官を気に入り側近中の側近として扱うちょび髭総統閣下。
「簡単であります総統閣下。その日その日に誕生日を迎える将兵一人一人に充てたバースデーカードを、その部隊の部隊長ないし艦長に作らせて渡し、半休や全休を与えるよう命じているだけです。
下の者は上官に気にかけてもらえると言うことで士気が上がり、上の者は部隊、艦の乗員の把握に繋がるため、部隊内、艦内の円滑な意思疎通に繋がり各隊の雰囲気も落ち着いた物になるため、作戦効率が上がるという副次効果も期待できます。」
「ふむ。確かに、名簿を作りただ覚えさせるよりも、覚えやすいかもしれぬな。」
ちなみにこれ、実は日本では軍全体が既に大騒ぎで渡しあいしているものであったりする。
「試しに、北海艦隊全乗員が、司令長官に感謝を込めた、それぞれオリジナルのバースデーカードを送ったら、全艦の居住性が向上されることが決まるなど、結構侮れないです。」
「なるほど。紙とペンさえ有れば、知生有る我が国民ならば誰でもできるな。早速総統令として全国に公布しよう。」
結構お喜びの総統閣下であった。
「そういえば総統閣下、来週の来日の件でありますが。」
「ああ。どうした?」
「4000m級滑走路はあるかという問い合わせが来ていまして。どうやら空軍はあると答えたのを信用せずに我々に話を振ったようなのですが。どうなさいますか?」
総統閣下のお顔が険しくなる。
「君はどう答えた?」
「もちろん、総統閣下の威光遍く注ぐ我が国にはその程度の物はいくらでもと。」
「よろしい。しかし、あいつら何とも不可思議な要求をして気負った。なんでも『一つテレビで総統閣下のすばらしい演説を我が日本国民にぶっこいて欲しい。』だそうだ。テレビとはいったい何なのだ?」
始めて聞く言葉に首を傾げつつも、好奇心でわくわくの総統閣下と、同じく始めて聞く言葉に知識欲悶々で行きたいなあと思っている(総統お気に入りなのでお供決定していますからいけますよ)なレーダー長官なのであった。