表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨女とずぶ猫

作者: あまね

 

 雨女という言葉ほど、私にとってキライな言葉はない。


 うっとうしい程について回るこの言葉、お前ら天気の勉強をしたことがないのかと、一言でバッサリと切り捨てたいほどに、うんざりするほどに、言われ続けてきた。


 確かに、雨が降ったことはある、イベント当日に降った事はある。


 小学校の入学式は雨だった。

 小学校初めての運動会、学芸会、遠足の日に、雨は降った。

 小学校2回目、3回目、4回目も5回目も、雨であった。

 小学校最後のイベントの卒業式まで、いい加減にしろよと思うほどに雨だった。


 誕生日は梅雨時のせいか、いつも雨だ。

 生まれた時も、豪雨だったらしい。

 

 たかが、それだけである。

 普段の学校の時だって、晴れてる日もあれば、雨の日もある。 


 それだけで、雨女と決め付け、さも私の所為というのは、やめてほしい。

 本当に迷惑だ。


 私とは関係なく、平日の夕方に土砂振りになった。


 傘もなく、迎えも頼めない私、ぬれるのが嫌ではあるが、帰るのが遅れて、楽しみにしていたアニメを見逃すのも、もっと嫌である。

 しかも、肝心の時に予約録画をしていないという、弱り目に祟り目とでもいうのだろうか、そのようなチョンボをしてしまっていた、私は次第に強くなる豪雨の中、家へと走った。

 

 学校帰りのいつもの道路に朝方はなかった、ダンボールが道端に置かれていた。


 拾ってくださいと、書かれていたであろう、部分もこの雨で紙がボロボロでほぼ読めない。

 そして、ダンボールのふちに足をかけて、白い子猫がこちらを見てきたが、せめて心優しい人に拾われる事を祈る。


 そう、思い猫の視線を無視するように横を通過しようとする。


 白い猫がニャーとなくと、罪悪感が少しでるが、家で飼ってあげようにも、猫とか犬とか小動物を飼った事のない人間が、無責任にかわいそうだからと、拾って飼って、そして捨ててしまう、安易で、残酷な未来よりは、野良としてたくましく生きた方が、幸せであろう。


 ニャー、ニャーと再度鳴きながら、こちらへと向かい歩きはじめた。

 しつこいし、どうしようもないと思えば、思うほど追い討ちをかけるように、雨が一層激しくふり、このまま猫にかまっていると、こちらがぬれるばかりか、ぬれている服の重さと、私の体力のなさの影響で、アニメを見逃してしまう。


 猫を振り切るように、走るが、猫もまた懸命にこちらを追ってくる。

 家へとたどり着き大急ぎでドアを開けると、猫も呼吸を荒げながら、ドアへと滑り込んだ。


 猫が喋ったように聞こえたが、とりあえず廊下をべちゃべちゃと水分を含んだ、靴下であがり急ぎ、アニメの録画をする。

 一息ついたところで、脱衣所へと向かい、ぬれた制服等をぬぎ、シャワーを浴び、着替えをすませると、猫は玄関にじっと座っていた。


 クビ根っこをつかみ、外へと放りだすために猫に近付くと、猫が喋った。


「雨女様、私を助けて欲しいのです」


 猫が喋ったと同時に、小さなずぶぬれの女の子へと姿を変えた。


「知ってのとおり、私どもずぶ猫一族は顔を洗う事で、主人の妬みやうらみ、悲しみを雨雲に変えて雨を呼んで、主人を助けていましたが、最近うまくいかないのです、そして捨てられました」


 知らない情報ばかりで、展開についていけない私を無視するかのように、話がすすんでいる。

 そして捨てられたのは、多分不気味だからとか、変えなくなったとか、飽きたとかいうそういう感情だと思う。


 「そこで、雨女様のお力を借して欲しいのです」

 

 執拗にしがみついてきて、折角着替えたのに、更にずぶぬれになってしまう。


「私は雨女じゃないから」

「そんな今までもご自身の苛立ち、嫉妬、憎しみ、悲しみ、憎悪を暗雲と化して、雨を降らせているじゃありませんか」


 確かに、両親が私の晴れ舞台にこなかったり、他の子は手作り弁当なのに、私だけコンビニ弁当だったりしたときもあるけど、私はそんなに暗黒的なものじゃないし、その覚えもない。


 思い出せば出すほど、両親の無関心さに腹がたち、偶然にも雨が強くなっているような気はしてくる。


 ただ、それは偶然にすぎないのだから、しがみつかれても本当に困るだけである。



「その力で、ご主人の悲しみを晴れやかにして欲しいんです」

「雨ふらしたいのか晴らしたいのかどっちかにしてよ」 

 

 苛立ちとどうしたら良いのか分からなくなり、泣きたい気分になってくると同時に、外の豪雨がより一層激しくなり始めたが偶然である。

 

 何せ私は雨女じゃないのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ