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異世界無双血風録  作者: 大五郎
第17章 神竜編
109/119

74 神竜の黄昏Ⅱ

戦闘開始です。

「ツォウリ、加奈を起こしてくれ。敵が接近中だ」

『は、はい!』

ツォウリが慌てて加奈を起こしにいく。

『勇気さん、敵の数は?』

寝起きだろうがしっかりした加奈の声。

頼もしくなったものである。

「巨神一体、大天使三体、天使は見当たらない。主戦場の巨神族も巨竜族も残り数体程度だ。こいつらを凌げば後はなんとかなる」

『どうするの?』

「当初の計画通り俺が迎撃に出る。加奈は防御膜を大空洞の周囲と頂上の魔結晶だけに絞ってくれ。場合によっては山脈を囮にして大空洞を守る。たとえ山脈が破壊されても白竜族さえ生き延びれれば山脈が存在していた俺達の未来に繋げるため元に戻すだろう」

『分かったわ。勇気さん、頑張って』

「死なない程度に頑張るさ。そっちは頼んだぞ」

防御膜(シールド)の制御を加奈に任せ勇気は竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改を飛び立たせた。

スラスターの後部から爆発的な魔力光を放ち猛スピードで巨神達に向かっていく。

こちらに気付き巨神に追随していた大天使達が前に出て光槍(ライトジャベリン)を放ってきた。

巨神の光槍(レーザージャベリン)の方が射程も長く威力も大きいのだろうがこちらの大きさから格下と判断して大天使に任せたのだろう。

大天使で百m、巨神に至っては千m級である。

全長二十mに過ぎない竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改をそう見るのも仕方ないのかもしれない。

しかしその認識は直ぐに変わる事になる。

勇気は相手と同じ規模の光槍(ライトジャベリン)を生み出し放った。

互いの光槍(ライトジャベリン)がぶつかり合い激しい閃光を放つ。

それを目眩ましに使って一気に距離を詰め一番先頭に突出していた大天使の一体に竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改を肉薄させた。

間合いに入り背中の竜牙の太刀ドラゴンファング・ソードを大上段に抜き放ち振り下ろした。

大天使の身体が淡い光の膜に包まれる。

厖大な魔力が込められ閃光を放つ竜牙の太刀ドラゴンファング・ソードが大天使の防御膜(シールド)ごとあっさりその身体を真っ二つに切り裂いた。

縦方向に二等分され血飛沫を上げながら墜落していく大天使をしり目にスラスターを横方向に吹かし右方向の大天使に向かって急加速した。

大天使は防御膜(シールド)を張りながら後退しようとするが間に合わず間合いに入った瞬間その胴体を横薙ぎに断ち切る。

残りの一体は距離を取るように後方に下がり、そしてその横を掠めるように巨大な光槍(レーザージャベリン)竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改を呑み込むように襲い掛かってきた。

勇気は冷静に竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改の動きを止め魔力力場を展開しそれを受けきった。

閃光を放つ光の球体を十分の一に圧縮してそれを放った巨神目掛けて撃ち返す。

収束され威力の増したそれが巨神の光輝く防御膜(シールド)に当たり四方に激しい閃光を放ちながら弾けた。

巨神の防御膜(シールド)は揺るぎもしなかったがその顏には驚愕の表情を浮かべていた。

「やっぱ十倍返しでも効かないか」

『大天使の絶対防御を切り裂きあまつさえ我が力を増幅して弾き返すだと。その手の剣は巨竜の竜牙から削り出したものか。何故そんなものを貴様がもっている?貴様が白竜の山を守っていた白竜族の新たな眷属か』

一旦動きを止め巨神が大音響で問い掛けてきた。

「呑気に問答をしている暇はないんじゃないか?主戦場の戦いは最終局面だ。早く戻らなければ仲間が全滅するかもしれないぞ?」

少し距離を取ったまま勇気は竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改の口腔奥にある発声器官で拡声して言葉を返す。

巨神の光撃(シャイニング・ブロー)は巨竜の龍鱗すら瞬間周囲の空間ごと破砕する。

巨神のいう絶対防御、防御膜(シールド)を使ったとしても恐らくはふせげない。

勇気の竜牙の太刀ドラゴンファング・ソードは二十m、防御膜(シールド)を切り裂けるとはいえ全長千mの巨神とはリーチだけみれば圧倒的に不利であった。

間接攻撃の光槍(レーザージャベリン)は封じたが迂闊には近付けない。

つけ込む隙が出来ないかと煽ってみたのだが。

『グハハハハッ、後残っているのは主神と数柱、巨竜も数体だ。両者共倒れでもいいしどちらが残っても無傷では済むまい。なら生き残った方を始末すれば我がこの世界の絶対者となれる』

「いや、それだと種族としては滅びてしまうだろう」

『構わん。我は不老不死だ。絶対者は一人だけでいい』

想像以上にゲスで意味がなかった。

「既存の生物に干渉を加えて新種族を創造出来るほど遺伝子操作に通じているなら不老ぐらいは実現しているだろうが不死というのは吹かし過ぎだ。今も主戦場でどんどん死んでいるじゃないか」

『竜族も主神達も滅べば唯一無二の存在となった我を殺せる者などいなくなる』

「そうか?俺ならお前を殺せるぞ」

『グハハハハッ、絶対防御を切り裂ける剣を持っているからといっていい気になるな。我の前ではそんなもの蜂の一刺しにもならんわ』

「その割には間接攻撃が効かなかったら動きが止まったようだが?俺を恐れているんだろう?」

『抜かせ!』

今度は挑発に乗ってその巨体に見合わない素早い動きで距離を詰め光撃(シャイニング・ブロー)を放ってきた。

勇気はスラスターを全開にしてそれを躱した。

掠めるだけでもその周辺の空間ごと破砕されるため出来るだけ距離を開ける。

巨神は異常な素早さで二撃三撃と連打を繰り出してきた。

勇気は竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改を高速機動させてそれらを全て躱していった。

『どうした?大口を叩いていた割には手も足も出んではないか!』

ラッシュを続けながら巨神は嘲笑した。

小山のような巨神の拳が空を切って次々と襲い掛かってくる。

やがて距離を離しきれなかったのか掠めるほど接近した拳に竜牙の太刀ドラゴンファング・ソードを叩き付ける。

巨神の小指に僅かな切れ込みを入れながらもバキッと竜牙の太刀ドラゴンファング・ソードが柄の先から砕け散り竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改も弾き飛ばされていった。

『グワッ!?』

巨神の方も痛みで傷付いた側の右腕を引き動きが止まっていた。

最強の矛同士の激突は痛み分けといえるかもしれないが砕け散った竜牙の太刀ドラゴンファング・ソードはそのままなのに対し巨神の小指の傷は忽ちの内に再生していく。

『よ、よくも我が身体を傷付けたな。許さん、許さんぞ!!』

巨神の防御膜(シールド)が光度を上げ虹色に煌めくいていく。

そして限界まで輝きが高まりそれはそのまま前方の竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改目掛けて放出された。

虹色の光の洪水が竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改を飲み込むかに見えた。

しかしそれはその手前に現れた光輝く壁に阻まれ弾け散っていく。

弾けた光の刃が足元の大地を抉り溶かし空の暗雲を切り裂いていくが竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改は無傷で微動だにしていなかった。

『ハァ、ハァ、ばかな!絶対防御だと!?一体どうして?』

大きな力を使って流石に消耗したのか肩で息をしている巨神の目が驚愕に見開かれた。

しかし竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改後方の山脈が無傷なのに気付きニヤリと顏を歪ませた。

『貴様、最初から後方のあの山脈を守って戦っているな。恐らく白竜の巣でもあるのだろう。大天使!迂回してあの山脈を破壊しろ!貧弱なお前でも魔力を使いきるぐらい攻撃すれば破壊出来るだろう』

後退して待機しているはずの大天使に声を掛けた。

しかし反応がなかった。

振り返ってみると遠く主戦場の方角に飛んでいく大天使の姿があった。

『大天使が敵前逃亡だと!絶対的忠誠心を植え付けてあるはずなのに有り得ん!』

「別に敵前逃亡した訳じゃあないさ。俺の命令に従っているだけだ。あいつは以前戦って洗脳し使い魔化しておいたヤツだ。戦場の状況をこちらに送らせていたんだがお前が露払いのため引っ張ってきたので帰らせた。向こうも数も減ってきたんで大天使の力でもそろそろ白竜達の支援の役に立つだろうしな」

『クッ、汚い手を・・・』

「自分の欲望のために仲間を平然と切り捨て嫌がらせ攻撃をしようとしていたお前にだけは言われたくない台詞だな」

『ええい、五月蝿い!・・・しかしまあいい、唯一絶対防御を切り裂ける剣を失った貴様に有効な攻撃手段はあるまい。なぶり殺してやる』

巨神は再び接近して拳を放ってきた。

先程と同じラッシュを繰り返すが今度は軽く躱されていく。

『ハァ、ハァ、ハァ、ばかな、今更スピードが上がったのか?』

「いいや、気付いていないのか?お前のスピードが落ちているんだよ」

息切れを起こし後ろに下がった巨神に冷淡に言葉を返した。

「そもそもお前達のその巨体で俺のスピードについてこれるのがおかしいのさ。お前達が絶対防御と呼ぶその防御膜(シールド)は極微の世界の隙間に膨大な魔力を注ぎ込んで空間そのものを歪めその内側に世界から隔絶した異相空間を作り出している。その膨大な魔力を保持するためにその巨体となったのか魔力の上昇に伴い巨大化してそういった力を手に入れたのかはしらないがその巨体では身体強化して神経系を効率化しようが筋力を強化して最適化しようが俺のような小型の生物並のスピードで動ける訳がない。そこで防御膜(シールド)内が異相空間化して外の世界の物理法則に縛られない事を利用して時間加速を掛けてそれに対応しているんだ。時間の加速率が上がれば魔力消費が増えるんだろ?だから普段は普通の速度に合わせているんだろうが加速率を上げさっきのようなラッシュを繰り返し更に魔力消費の大きい大技を使えば魔力が枯渇してくるのも当然だ」

『全て計算づくだったというのか』

「大天使から送られてきた戦場からの戦闘情報でお前達巨神の能力は分かっていた。後は状況に合わせて戦術を組み立てただけさ」

『クッ』

巨神は踵を返しその場からの離脱を図った。

しかし竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改にスラスターで加速を掛け瞬時にその前へ回り込んだ。

「逃げようと足掻き魔力を使えば使うほど時間の加速率が下がるから逃げられはしない。諦めるんだな」

『だ、黙れ!貴様とて我に通用する武器を失っている。この場で動かず魔力の回復を待てばいいだけだ』

「そんな事を許すと思うか?」

勇気は竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改の右腕を巨神に向けて突き出した。

「巨竜の龍鱗や白竜の武装化(アームド)などのお前達の防御膜(シールド)に類する装甲も膨大な魔力を集積させて疑似物質化して造り出している。お前達の防御膜(シールド)と違って物質化するため維持コストは要らないが拡張性は低いし最初に展開する時に大きな魔力を必要とするため白竜達の魔力量では百m程度の大きさで表面的にしか物質化出来ない。中身の殆どは受肉化した身体の延長だ。そして竜牙は龍鱗を遥かに超える魔力の集積体で魔力を集束させる事が出来る。牙の先端、刃に加工したなら刃先に魔力を集束して極微のレベルであらゆるものを断ち切る。お前達の光撃(シャイニング・ブロー)も膨大な魔力の集中という意味では似たようなものだ」

竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改の右腕が膨大な魔力光に放ち始めた。

「巨竜の魔力量では二十mの竜牙、巨神も拳の表面を覆う程度の光撃(シャイニング・ブロー)しか生成出来ない。だがお前達の数十倍の魔力量をもつ者ならどうだ?」

『ま、まさか・・・』

武装化(アームド)

竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改の右腕に集まった魔力光は巨大な円錐形を形成し疑似物質化していく。

それは全長二百mにも及ぶ巨大な白き槍だった。

スラスターから爆発的な魔力光が放たれそれは巨神目掛けて突っ込んでいく。

『クッ、クソッ』

巨神は咄嗟に左拳の光撃(シャイニング・ブロー)でそれを弾こうとした。

バキン!!

白い槍は巨神の拳に突き刺さると双方とも消し飛んだ。

『グハッ!』

左手を失った巨神が苦悶の声を上げた。

「まだまだ!!」

竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改も右腕を失っていたが今度は左腕を武装化(アームド)し再び白き槍を突き入れた。

巨神も最後の足掻きで右拳の光撃(シャイニング・ブロー)でそれを受けた。

そして再び双方弾け飛ぶ。

『グフッ!き、貴様、殺してやる。絶対殺してやる』

両手を失った巨神が苦痛に呻きながら両腕を失った竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改を睨み付けた。

「まだまだ元気そうだな。追加だ」

竜の鎧(ドラグーン・アーマー)改の肩部装甲が開き龍鱗に覆われていない待機状態で折り畳まれ休止させていた二本の副腕が現れた。

『ヒッ!!』

巨神の顏が恐怖にひきつった。

続きます。

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