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第三幕 何も無い世界

No.74

第三幕 何も無い世界



 真っ暗な舞台。舞台奥の真ん中に女の子Aと猫Aが立っている。舞台上手に女の子Bと猫Bが立っている。舞台下手に女の子Cと猫Cが立っている。それぞれの背後には、出て来たと思われる。少し小さめの穴が開いている。

 水の滴る音が、音響として流れている。


 女の子Aと猫Aにスポットライトが当たる。女の子Aは赤い傘と髑髏を持っている。


猫A 真っ暗だな。何も見えない。どっちに行ったらいいのか?

女の子A 右か左か真っ直ぐか、この傘が向いた方向で決めようか?

 (傘の先端を床に着ける)

猫A それでは意味が無い。

女の子A (構わず手を離す。傘の柄は上手方向を向いて倒れる)

 あっ、左側だ。あっちに行ってみようよ。

猫A そうだろうか。何もない気がするが。

女の子A どっちに行っても、目印が無いんだから、わからないでしょう。

 だったら、どっちでも同じこと。

 (傘を拾い歩き出す)

猫A (少し遅れて付いて行く)


 スポットライト消えて、女の子Bと猫Bに当たる。女の子Bは大きめのバッグを持っている。


女の子B 長い道のりだった。とても険しい道だった。沢山の障害を乗り越えてきた。

猫B そうだな。私たちは、幾重もの困難を乗り越えて来た。そして、また、この様な不気味な部屋に到着した。

女の子B (バッグから、懐中電灯を取り出す。電源を入れ、少し前を照らす)

 こうすれば、暗闇でも見ることができる。

猫B そうだ。私たちは、真っ直ぐに歩いて行こう。暗い道のりには、明かりが必要だから。

 (歩き出す)

女の子B (照らしながら、歩いて行く)


 スポットライト消えて、女の子Cと猫Cに当たる。女の子Cは眼鏡をかけている。


女の子C ここは私の好きな場所だ。真っ暗な闇は心を落ちつかせる。

猫C そうだな。ここには、色々な物が落ちていそうだ。その為の、暗闇であるだろう。

女の子C 暗い部屋には、財宝が無数に隠されているのね。

猫C そうだよ。神経を研ぎ澄ませて歩けば、足元に何かが在るのがわかるはずだ。それこそ、何かの出会いであり、宝物であるだろう。

女の子C どんな宝があると思う。

猫C どんな物だろう。役に立つ物であればいいが。

女の子C 綺麗な物が見つかればいいけど。

 (斜め左に向かって、ゆっくりと歩き出す)

猫C (同様に歩き出す)


 スポットライト消える。しばらくの間、舞台上そのまま照明が消えたままである。

 再び、女の子Aと猫Aにスポットライトが当たる。二人は、出て来た穴と女の子Bたちが出て来た穴との中間に立っている。


女の子A 人が居る気配があるのに、物音は聞こえない。水が滴る音だけ聞こえる。

猫A 少し、匂いがする。この先から、別の空気が流れている。

女の子A 誰かが、出て来たんだわ。

猫A ただ、空気が流れているだけかもしれない。

女の子A なんとなく、向こうに、

 (下手の方を指し)

 向こうに誰かが、居るような気がする。

 (下手を向き)

 おーい! ……無駄かな。

猫A 無駄だよ。それに、どんな奴が居るのかも、わからんし。

女の子A 今、何か光った!

 (下手方向を指差し)

 ほら、あそこ!

猫A (振り返り、見る)

 本当だ。ゆらゆら光が揺れている。

女の子A あっちに行ってみようよ。誰か居るみたいだし。

猫A いや、止めた方がいい。私たちには目的がある。先を急ごう。

女の子A どんな目的だっけ? 私の目的は、私の飼い猫の魂を探すこと。あなたとは、違う。

猫A そうかな。まあ、確かに同じとは言えないな。

女の子A じゃあ向こうに、行きましょう。

 (歩き出す)

猫A 参ったな。早く見つけたいのに。

 (歩き出す)


 スポットライト消え、女の子Bと猫Bに当たる。二人は、出て来た穴と女の子Cたちが出て来た穴との中間に立っている。


女の子B この空間は一体どういった空間なのだろう?

猫B おそらく、閉じ込める為の空間であって、何かを隠す為の所だ。

女の子B (ライトで周りを照らし)

 でも、何も無い。きっとこのまま、出られずに、また苦しみながら、彷徨い続けるんだろうな。

猫B 長い長い、道のりが、延々と続く。身体を重たくする暗闇が、私たちの全てを隠してしまう。

女の子B (ライトで猫の顔を照らす)

 あっ。


 奥から、女の子Aの声が小さく聞こえて来る。


猫B 光で、私の顔を照らしてはいけない。暗闇は、全てを隠す為に在る。

女の子B (声の聞こえた方向に走り出す)


 女の子Bはスポットライトからはずれ、手に持っている懐中電灯も消す。スポットライトは猫Bだけに当たる。


猫B (笑う)

 逃げられてしまった。

 (客席を向き)

 何で、ばれたんでしょうね。あんなに早くばれるとは思わなかった。こんな事を言うと私はまるで、悪人の様です。多少は騙していたかもしれない、しかし、気が付いても、騙され続けるのが礼儀であると、思うのですが。違いますか?

 しかし、逃げ足だけは速い。少し滑稽なくらい驚いていましたね。しかし暗闇とは、恐怖を増大させるものなのですね。

 (そのまま、下手方向に歩く)

 おかしな事になった。また、私は一人になってしまった。私は、本当に一人になった。私の魂は永遠に見つからない。


    離れていく。

    人が離れていく。

    一瞬の出来事で、

    何かを見られてしまう。

    損なわれる何か。


    別に、

    そんな事では無い。

    人の表情で、

    何を判断している、

    つもりなのか。

    目的だけは、

    忘れてはならない。


    騙される技量。

    大抵の人は、

    その事を知らない。

    誰だって、

    その表情には裏側がある。

    それを照らしてならないのだ。

    大事なのは、

    その、

    同じ目的地に

    辿り着くことなのだから。


    しかし、

    懐中電灯で、

    顔を照らされたくらいで、

    何かが読み取られるとは、

    けして思わないが、

    愉快な表情など、

    生まれて此の方、

    した事がないのだ。


    つまらん旅になった。


    可哀想に、

    あの娘は、

    この死者の国で、

    迷子になってしまうだろう。

    あの知恵を得るどころか、

    この空間を脱出することさえ、

    不可能になるだろう。


    観ている人たち。

    無責任とは、

    言わないで欲しい。

    第一、

    私には、

    懐中電灯は無いし、

    脚も早くはないのだ。

    それに、

    逃げ出したのは、

    あの娘で、

    この空間では無い。

    約束通りに、

    私たちが、

    交わした通りに成るだけだ。


    魂に出会う確率。

    それは、

    万に一つも無いのかもしれない。


    ああ、

    しかし、しかしな。

    私にもまた、

    目的があった……。

    その為に、

    あの娘を、

    見捨てるわけには、

    行かなくなるだろう。


   (舞台奥に向かって歩き出す)


 スポットライト消え、女の子Cと猫Cに当たる。二人は、出て来た穴と女の子Aたちの出て来た穴との中間に立っている。


女の子C 何だか向こうから、機械の作動する様な音が聞こえて来る。

猫C 本当だ。ここらは、人の居ない洞窟の様な所だと、思っていたが。

女の子C でも、何だかうるさそう。

猫C 音だけ聞くと、とても捜している物が、見つかるとも思えないな。

女の子C 方向、間違っていたかな? 綺麗な物も、まだ見つからないしね。

猫C う~ん。落ちているものだとばっかり、思っていたんだがなあ。

女の子C あっ。

 (客席方向を向き)

 今、あっちで何か光った。

猫C うん?

 (客席方向を見る)

 本当だ。何か在るのかな?

女の子C 行ってみようか?

猫C まあ、期待とは違うんだろうけど。行こう。

 (二人で歩き出す)


 スポットライト消え、女の子Aと猫Aに当たる。二人は、舞台中央付近に立っている。


女の子A こっちの方だと思ったけど。

猫A だんだん近づいているのは確かなようだが。

女の子A おーい。

猫A 誰かが走ってくる。


 女の子Bにスポットライトが当たる。女の子Bは客席に背を向けている。


女の子B (息を切らせて)

 あぁ、よかった。人が居た。

女の子A どうしたんですか? そんなに息を切らせて。

女の子B 逃げてきたの。恐ろしい怪物から。私は、もう少しで食べられてしまうところだったわ。

女の子A 大丈夫? 怪我は無い?

女の子B 大丈夫。急いで逃げて、懐中電灯も消したから。

女の子A 懐中電灯?

女の子B そう、これ。って暗くて見えないね。少し付けていい?

女の子A 構わないけど、見つかったらまずいんじゃないの?

女の子B 大丈夫。もう来ない気がする、ここまで来たら、探しようが無いから。

 (ライトを点け、女の子Aを照らす。少し驚いて)

 あなた、誰? 私じゃない。

女の子A 当たり前でしょう。

女の子B 死人みたいな顔してるね。

女の子A ええ。だから、旅をしてるの。二人で。

女の子B もう一人、居るのね。

 (ライトで猫Bを照らす)

 あっ、ここまで。追いかけて来たの!?

 (急いで、舞台奥に走って行く)


 スポットライト消える。しばらく舞台上照明が消えたままである。

 そして、女の子Bにスポットライトが当たる。一人で、ふらふら舞台奥に向かって歩いている。


女の子B (床に座り込む)

 もう、疲れた。……何で私がこんな目に遭わなくちゃいけないの。もう、いや。

女の子C そこに居るのは誰?

猫C 女の子だね。

女の子C (手で、女の子Bの頭を触る)

 人の頭が在る。

女の子B 何よ。皆、死んでいるんだ。

猫C そうだ。変な娘だ。

女の子C 意地悪言わない。あなたは、何処から来たの。

女の子B 大きな建物から。沢山の遺跡が在る所から。猫と二人で、歩いて来たの。

女の子C そう。大変だったでしょう。

女の子B (泣き出す)

 うん、大変だった。本当に、長い道を二人で歩いてきたの。でも、途中で、私の猫が……。私の猫じゃ無かったの。

 私の事を食べようとしていた、怪物で、急いで逃げてきたの。

猫C ふ~ん。途中で入れ替わってしまったのかな。

女の子B (泣き止む)

 たぶん……。気がつかなかった。そっくりだったから。そしたら、少し前、おんなじ様な二人組を、見かけた。

女の子C 他にも、同じ様な人が居るんだ。凄いなぁ。

猫C 皆それぞれ、探し物があるんだな。

女の子B そしたら、その二人組も、私の事を狙っている怪物の仲間だって気がついたの。

猫C それで? その怪物は……。

 (女の子Bの顔に近づく)

女の子B 何処も同じ……。

 (立ち上がり)

 もう、いいです。私、一人で行きます。私は、自分で調べる事が出来る。

女の子C 気をつけてね。

女の子B あなたは、もう死んでいるの。その猫に襲われない様にした方がいいわ。でも、死んでいるんだった。

 (独り言を言いながら、舞台奥方向に歩いて行く)


 女の子B、スポットライトから外れる。女の子Cと猫Cにスポットライトが当たる。二人は客席に向かいながら歩いている。


女の子C 少し、可哀想だったな。あの人。

猫C そうだな。

女の子C あっちに行っても行き止まりなのに。

猫C 向こう側に、行きたいのだろう。

女の子C あの、うるさい所に?

猫C それぞれに、求める物がある。

女の子C それぞれに……。

猫C 自分が何処に居るかも判らん様では、先行きが暗いがね。

女の子C そう、なんだ。悲しいね。

猫C 何が? 死んだ事が? 知らない事が在る事が?

女の子C 裏切られたことが。

猫C 他人同士の関係なんてわからないよ。ただ、長い間、一緒にいればわかるとは、思うがね。

女の子C そうかな。一緒に知りたかったのかも、しれない。

猫C 何を?

女の子C さあ?

猫C さあって、何だ?

女の子C 意外な人が見つかったね。

猫C 見つかった。君は、遺跡は好きかい?

女の子C うーん。綺麗であれば。

猫C では違うな。

 (上手を指し)

 こっちかな?

女の子C うん、その先。

猫C 大分、この先は、騒がしそうだ。

女の子C うるさいよりは、賑やかな方がいいな。

猫C 鐘の音……。

女の子C あの人、どうしているのかな。


 女の子Cと猫Cは、上手方向の客席の前に着く。


女の子C (客席に向かって)


      渡したい物があります。

      そのつもりで、

      歩いて、

      捜して、

      会話をしてきたの。


      捜している物があります。

      夢を見て、

      幻を描いて、

      拾い続けた物。

      

      見てもらいたい物、

      それは、

      あなたがたの、

      幾つかに、

      似ているかもしれない。


      渡す物、

      それは、

      さまざまな、

      形をした、

      夢の如き物。

      渡される人、

      あなたがたの幾人か。


      渡す物、

      それは、

      本当とは、

      おそらく思わない、

      消えてしまう、

      幻の如き物。

      見ることが出来る人、

      あなたがたの幾人か。


      渡す物、

      それは、

      幾つかの言葉、

      幾つかの音、

      幾つかの現象、

      そして、

      幾つかの、

      暗闇の中、

      交錯する、

      あなたがたの、

      視界の中に在る、

      その関係の、

      一つの軌道。


      一人ではなく、

      一つでもない。

      隣りではなく、

      同じでもない。

      繰り返しではなく、

      瞬間でもない。


      何も無い部屋には、

      幾人かの、

      私たちと、

      幾つかの、

      渡したい物が、

      隠されていて、

      そして、

      これからも。

      

 女の子Cと猫Cは、上手から階段で舞台を降り、客席の外側を回り、退場する。

 スポットライト消え、女の子Aと猫Aに当たる。二人は、下手の女の子Cが出て来た穴に向かって歩いている。


女の子A 水が沸くような音が聞こえる。

猫A また、新しい空間に行かなければいけない。

女の子A 彼は居るかな?

猫A どうかな。

女の子A あなたとは、違うかな?

猫A どうかな。

女の子A どうだろう?

猫A (穴を触って)

 また、小さな入り口だ。やれやれ。

女の子A 入れるだけましでしょ。

猫A (穴に入り)

 向こうは、空気が澄んでいそうだ。よいしょ。

女の子A (猫が入るのを見て、客席を向く。右手を髑髏の中に入れ、顎部を動かす)


      ここは、重かったかい?

      ここは、暗かっただろうか?

      ここは、解きずらかっただろうか?


      いいえ、それぞれに、人が在った。

      いいえ、それぞれに道が在った。

      いいえ、色々な真っ直ぐな筋が在った。


      君は、何が知りたいのか?

      君は、何が見たいのか?

      君は、何が欲しいのか?

      

      私は、あなたのことが知りたいの。

      私は、あなたの心の奥を見たいの。

      私は、あなたの魂を欲するの。


      君は、何を信じているのか?

      君は、この世界を見ることができるのか?

      君は、一人でも生きていけるのか?


      私は、信じるという言葉を信じない。

      私は、心の装いを見ることができる。

      私は、一人では生きてはいけない。

      けれど、

      誰でもいいという訳ではない。

      様々な人、

      それぞれの方角に向かう人たち。

      知ることのできる、

      たくさんの感情、

      そして、

      受け取ることのできる、

      幾つもの感受性がある。


      それらは、

      一つに向かう、

      複数の魂。

      それらは、

      一つに成る、

      幾つもの言葉。

      それらは、

      一つとしてない、

      重ねられる約束。


      (屈んで、穴に入る)


 スポットライト消え、猫Bに当たる。猫Bは、舞台の真ん中の辺りに立っている。


猫B 少し、期待していたが、やはり戻って来る事はなかった。私は、何か間違えてしまったのだろうか?

 取り逃がしてしまったものは、今さら見つける事はできないだろう。捜しに行くつもりが、よけいに解からなくなってしまった。歩き続ける気力も無くなってくる。


    あの、大きな建築物。

    古代の神像たち。緑の草原。

    長い、長い道。

    私たちは、

    互いに、

    信頼し合い、

    尊敬し合い、

    沢山のものを、

    知り、また、

    調べて、所有してきた。

    それらは、

    有意義で、

    しっかりとした、

    感触で、

    私たちの

    手で、

    掴み取れたものであった。


    彼女は、

    何処に行ってしまったのか?


    あの、

    光で、

    照らされた時、

    本当は、

    別のものを……。


 スポットライト消え、女の子Bに当たる。女の子Bは、女の子Aたちが出て来た穴を向いて立っている。


女の子B この壁の向こうから、何かの作動音が聞こえる。忙しなく動き続ける、固定されたような空間が在るのだろう。人は、信用できない。私には、相手の正体が解かってしまうから。もう、決められたことしか、見たくはない。

 (客席を向き)


      まだ、行ける所がある。

      向こうには、

      私の知らない、

      様々な、

      機構や、

      建物、

      象徴や、

      人物がいて、

      きっと、新しい世界が在る。


      そこは、揺ぎ無い力が、

      永遠に働き、

      沢山の部品が、

      規則正しく動いていて、

      一定の幸せを約束してくれる。


      私は、

      望んでいる。

      そして、

      私が望まないものは、

      欲しくは無い。

      私が言ったことを、

      捻じ曲げたりせず、

      そのままに、

      受け入れてくれる、

      世界や人と、

      接することを、

      望んでいる。


      難しいことでは、

      なかった。

      昔の記憶。

      確かにあるもの。

      それらは、

      分類され、       

      整頓され、

      建物の柱として、

      重い物を支えていた。

      柱に刻まれていた言葉。

      警告や、

      箴言。

      抽象的なものから、

      具体的なものまで。

      現実から、

      鏡の中まで。


      私は、

      自らの力で歩くことを、

      この空間で決めた。

      誰も居なくても、

      私は進んでいける。

      きっと、

      向こうには、

      私を必要としている、

      完成を待っている、

      予定された、

      逸脱のない、

      私の知ることができ、

      満たされる、世界が、きっと在る。


      (壁に向き直り、屈んで、穴に入ろうとする)


 スポットライト、猫Bにも当たる。猫Bは女の子Bの真後ろに立っている。


猫B 知らなかった。君がその様なことを望んでいたなんて。

女の子B (驚いて)

 何で、何で此処にいるの!

 私の事はほっといてよ!

猫B いや、そのままにしては、おけない。君一人では、君の進みたい道が、道のりがわからないだろうから。

女の子B (立ち上がって)

 私にだってわかる。今までだって、私が沢山の道を選んできた。私は、私の歩きたい道を、進みたいの!

猫B そのような、強い気持ちがあることは、知らなかった。許してほしい。これからは、古の道では無く、君の進みたい道を歩いて行こう。

女の子B どうしたの? なんか、珍しいね。何時も自信たっぷりなのに。

猫B なに、君の選ぶ道のりが、何だか不安に思えて来たのでね。

 ところで、その先に進みたいのかい?

女の子B そう。何だか、面白そうな場所が在りそうだから。

猫B そうだな。比較的新しい空間であるだろうな。

 ……機械。また、その様な場所。

女の子B うん。たぶんそうだと思う。


 猫B、女の子Aたちが出て来た穴を探る。女の子Bはその様子を眺めている。


猫B こちらから、向かうのは危険だな。正面に回ろう。

女の子B 正面? 迂回するの?

猫B そうだ。この空間は、こちらからは入れないような仕組みになっている。

 (上手を指し)

 あちら側から、回って行こう。その方が安全だろう。

女の子B (バックを持ち直し)

 ふ~ん。なかなか、楽じゃないなあ。せっかく、近くまで辿りついたのに。

猫B 辿り着きたい場所が分かっただけでも、良かったじゃないか。

女の子B まあ、ね。

 じゃ、行こうか。

 (上手に向かって歩き出す)

猫B (後を付いて歩きだす)

 懐中電灯は?

女の子B もう、いらない。

 なんかね。見たくない物があるしな~。

猫B そんなに、酷かったかな?


 二人が並んで歩いて行く。スポットライト消える。

 幕が閉まる。



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