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セイラ

「セイラ……であってたよな?」

「はい。貴方はお父様の友達の――えーと……」

「フェル=V=ヒューズだ。よろしく」


 名前はわからなかったか。アルタイルも名前くらい教えといてくれれば良いのに。顔を覚えているだけで凄いけどさ。


「それよりも、何しに来たんだ? 俺は装備の新調だが」


 会話を続けたいと思い、適当に話題を振ってみる。

 セイラが俺を見て、驚いたような表情を見せる。まあ、恐らく、あんなボロい服を着ていた奴が、新品の高い装備を着ているからだろう。知らない奴にとっては、どこに金を持っていたのか疑問だろうからな。服の裏に張り付けてました。

 しかし俺が「どうした?」と問いかけると、少し動揺したあと、答えてくれた。


「お父様が、明日から長期間出掛けるから、装備を新調してこい、と」

「それでここに来たのか」


 納得です。

 しかしアルタイルはどうやら、セイラに魔界に行くと話していないようだ。まあ当然といえば当然だが、人が悪いな、人じゃないけど。セイラを魔界に連れていくのは、一人でおいてけぼりにすることはできないからだろうが、理由はともかく俺にとっては嬉しい限りですよ。


「もしよかったら、一緒に見ませんか? 俺はあと装飾品だけですが」


 あえてグイグイいこう。へたれたら負け、と前世からの教訓だ。


「そうですね。武器はありますし、防具も決まっていますから、大丈夫です。一緒に見ましょうか」


 やった。作戦は成功だ。セイラの笑顔が美しいがあえて目を反らし、装飾屋の扉を開け、中に入る。

 装飾屋は今までの店と比べると、全体的にキラキラしていて、種類が多くて理解できない。持ってて良かった『鑑定』のスキル。装飾は○○の××という名称の物が多いようだ。しかしわかりにくいことに、攻撃は腕力、防御は耐久、魔攻は魔力、魔防は精神という表記をされている。

 それはともかくとして、今俺の着けている魔力の指輪は、装飾品の中ではかなり低級の品だ。武器や防具と違い、いくらでも装備でき、さらに無条件になにかが上昇する為、売ったり捨てたりすることは無いが。

 金はまだ二〇〇〇〇Gある為、それなりに上級な装飾品を買うこともできる。候補として最初に上がったのは、


 ┌────────────────

 │魔導師の首飾り(ネックレス)(装飾品)

 │上昇率/魔攻A、魔防C

 │スキル/魔導補助

 └────────────────


 これだ。八〇〇〇Gと結構高いが、値段にみあうだけの効果がある。

 あとは効果と値段の割合で、一番安いミサンガ。


 ┌────────────────

 │腕力のミサンガ(装飾品)

 │上昇率/攻撃E

 │スキル/殺人拳

 └────────────────


 誰だよ、すぐに千切れるミサンガに、スキルなんてつけた勇者(勇気あるバカ者)は。

 というより、スキルつきなのに三〇〇Gとか、安。Re.安。これは買いですね、決定。

 魔導師の首飾りと合わせて八三〇〇Gだから、あと一七〇〇G。別に使いきる必要は一切無いのだが。

 とりあえず買っちまうか。魔導師の首飾りとスキルつきのミサンガ、そして普通のミサンガを四本を持ち、店員に声をかける。


「これ下さい。勘定願います」

「はいはい、えーと、合計で八五〇〇Gね」


 金貨を一枚手渡す。すると店員は銀貨を一五枚持ってきた。

 さて、どうしよう。一五枚もしまうところ無いですよ。

 最初は小さな巾着袋でも買って、同じように腰に結わえつけようと思っていたのだが、そろそろ紐が限界だろう。俺がホルスターや短剣を着けているのは、腰を絞める紐だ。弥生人の服をイメージしてくれれば構わない。

 ならば仕方がない。多少値が張るが、丈夫なベルトを買おう。近くにあった鉄のベルトと小さな巾着袋を掴み、店員に渡す。


「すまないが、これも追加で」

「六〇〇Gだから、さっきのお釣りと合わせて九〇〇Gのお返しになります」


 銀貨を九枚受け取って、巾着袋にしまう。ついでに金貨もしまう。

 一度ホルスターと短剣を紐から外し、巾着袋やミサンガと共にベルトに取り付ける。やたら重くなったベルトを絹の服の上から、ローブで隠すように装備する。同じくローブで隠れる位置に、魔導師の首飾りも装備した。

 自分の買い物が終わったので、セイラの様子を確認する。なんだか悩んでいるようだが、あえて声をかけよう。


「そっちは決まったか?」

「え? あ、はい。まだ決まって無いんです。フェル様は決まったんですか?」


 セイラって誰にでも様付けで呼ぶのかな。それとも俺がアルタイルと対等だと思われてるからかな。お父様って呼んでたし。

 俺は別にさん付けで良いんだが。まあ、これからの立場もあるし、悪い気分はしないから何も言わないけど。


「ああ、もう買ってきたよ。ほら」


 ローブの胸元をあけて、魔導師の首飾りを見せる。腰回りもといベルトはヤバいから見せないが。


「それで、候補だけでも出ているのか?」

「魔法師の首飾りと精神の腕輪で迷っています。値段は同じなんですが、どちらが良いか」


 ふむ、なるほど。俺なら『鑑定』で上昇率を観るが、普通はそうはいかないものな。ここは男として助言するべきだ。


 ┌─────────────────

 │魔法師の首飾り(装飾品)

 │上昇率/魔攻C、魔防E

 └─────────────────

 ┌─────────────────

 │精神の腕輪(ブレスレット)(装飾品)

 │上昇率/魔防B

 └─────────────────


 同じじゃねーか。しいて希望があるとすれば、職業と同じ名や、関係する名のついた道具は効果が高いとか聞いたことがある。確実性は無い。あくまで噂だ。

 結論としてはセイラ次第だな。


「セイラはさ、魔法攻撃力と魔法防御力のどちらを上げたいんだ?」

「魔力の腕輪を持っているので、魔法防御力を上げたいんですが、どちらも魅力的で」

「魔法防御力を上げたいなら、精神の腕輪の方がおすすめだぞ。経験からいって」


 本当は経験なんか無いが、とりあえずこう言っておけば信頼感が増す。セイラも「そうなんですか? それじゃあそうします」と言っていたし、納得してくれたのだろう。

 少し待つと、会計を済ませたセイラが戻ってきて、精神の腕輪をつけた左腕をガッツポーズみたいにして、問いかけてくる。


「お待たせしました。似合いますか?」


 笑顔が眩しい。実際に似合っているので、「似合っている」と肯定する。更に嬉しそうに微笑むセイラを見て、可愛いことを再確認した。


「ありがとうございます。私は防具屋に行くんですけど、フェル様はどうするんですか?」

「俺はもう買うものは無いし、適当にぶらついてから帰るよ」

「そうですか。それではまた後で」


 装飾屋から出ていくセイラを見送り、残り九〇〇Gどうするかなぁ、と店内を見回す。使う必要は無いのだが。

 一つの装飾品が目に入った。


 ┌─────────────────

 │魔力の耳飾り(イヤリング)(装飾品)

 │上昇率/魔攻D

 └─────────────────


 値段は八五〇G。ミサンガを買えば丁度になる。

 魔力の耳飾りと適当なミサンガを取り、店員に声をかけた。


「すみません。これください」


 イヤリングはセイラに似合うと思った。プレゼントしよう。現実のフラグは意外なところで立つものだしな。

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