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別荘

 町に入る前、アルタイルが翼や尻尾、角をしまう。

 仕組みは知らないし、気になりもしたが、質問するのは失礼な気がするのでやめておいた。魔王とはいえ、礼儀は必要だと思う。

 対してゴビーはいなくなっていた。家でなにかしてる醜い妖精というイメージは、それなりに正しいものなのだろう。アルタイルの言葉から勝手に推測。

 アルタイルはそこそこカッコいいし、金持ちということもあって、町ではそれなりの知名度だった。うん、これはチートだ。バグではなくチート。持てる実力を生かしきって、いや見方によっては殺しているのかもしれないが、とにかく凄い。

 だがしかしまあ、予想年齢最低一〇〇歳の爺の話はどうでもよくて、娘がいるらしい。それもかなり可愛いそうだ。

 精神年齢こそ大人で、子供の頃は気味悪がられたこともある俺だが、可愛いまたは綺麗な彼女が欲しいという夢を諦めたことは無い。そもそも転生して、肉体に殉じて精神まで思春期になっているのだから尚更だ。

 アルタイルの嫁というオチだけは勘弁して下さい。


「こちらです。どうぞ」


 俺が脳内で理想陣営と理性陣営が戦いを繰り広げてるうちに、活動拠点の家――魔界に家はあるだろうから別荘――についたようだ。やはりでかい。町一番の実力は伊達では無かった。

 アルタイルが先にどうぞと進めてくるが、今更ながら罠の可能性を疑い、先に行かせた。結果はなにもなかった訳だが。

 家はでかいのに執事やメイドはいないようで、アルタイルが自ら扉に手をかける。

 中は広く、廊下も長い。しかし入口から一番近い部屋に通され、説明をされる。


「次に魔界と人間界が繋がるのは、明日の日暮れから日付が変わるまでです。それまではこの町で自由にして大丈夫です」

「繋がるって、どういうことだ?」


 疑問を持ったら質問する。日本の学校で教わりながらも、実戦することは少ない技だ。主に俺がチキンだからだけど。


「この世界と魔界は次元が違います。それが一定周期で重なる場所を通路と呼んでいます」


 なるほど理解した。

 淡々と暫く話を続けていると、部屋の扉が開き、女の子が現れた。

 凄く可愛い。心臓が高鳴るのがわかる。くっ、前世現世共に異性に耐性が無いから……。

 迷わず『鑑定』を使用した。

 これに他意は無い。怪しいものがいたら、調べるのは常識だろう。もう一度言う、他意は無い。


 ┌───────────────

 │セイラ=ブラック(ハーフデビル・女)

 │ジョブ/魔法師(Lv.8)

 │装備品/布のドレス、魔力の腕輪

 └───────────────


 俺の記憶が正しければ、ハーフはヒューマンハイブリットを指す言葉だ。悪魔と人間の混血ということか。


「お父様、帰ってきたなら声をかけてくれればいいのに」

「ああ、すまないセイラ。今、客が来ているんだ。大切な話をしているから、今は出ていってくれるか」

「なるほどそれで。失礼しました」


 そう言ってセイラは部屋を出ていった。別に構わないのに。まあ、きっとブラック家にも都合があるのだろう。


「娘がすみません」

「いや、全然構わないが。それよりもハーフデビル――」


 やべえ。口が滑った。普通は血が濃い側の種族として表示されるらしいし、人物鑑定をしたとしても不自然だ。

 一瞬驚いた顔をした後、アルタイルは聞いてもいないのに話してくれた。魔王のスキルだと納得したのかも知れない。話してくれたのは、気になると顔に出ていたからだろう。

 アルタイルの話は長かったので、脳内で整理・要約した。

 つまり、「俺は人間でいうと二〇歳くらいだし、そろそろ子孫を残したいと思った。この町では人間ということになっているし、人間の女性と結婚し、子供を授かったが、女性は出産のときに死んでしまった。また、子供は人間として育てている」ということだ。

 出産で死ぬというのはなかなか衝撃だったが、よく考えたら現代日本と違い、この世界ではそこまで珍しくもない。医療もそこまでは進んでないのだから。

 というより、セイラまだ十代じゃん。魔族だし数十歳かと思ったら、俺より年下じゃないですか。まあ人間として通してるんだからおかしくはないし、部屋から出した(追い出した?)のも「人間として育てた」のお陰で納得がいく。


 その後アルタイルに客室に案内された。

 スライムとか2nd.ジョブとか放置されたタイソンとか、色々聞きたいこともあったがすぐに聞くことでも無いし、すべてアルタイルに聞いて鵜呑みにするのも良く無いから、後で良いだろう。

 椅子に腰掛け、気紛れに『鑑定』を使ってみる。


 ┌────────────────

 │フェル=V=ヒューズ(ヒューマン族・男)

 │ジョブ/魔王(Lv.5)

 │スキル/鑑定

 │装備品/布の服、革の靴、魔力の指輪

 │※アルタイル=ブラックがリーダーのパーティに所属しています。任意解除可能です。

 └────────────────


 とりあえずパーティは解除しておこう。リスクを減らす為に。

 それはともかく、俺のレベル低すぎだろ。Lv.5で魔王とか、ある意味最強だろ。自虐的だがそう思う。

 装備品も魔王に相応しいものにしないと。

 金貨は一枚で一〇〇〇〇(ジード)だから、合計五〇〇〇〇Gある。我ながらよくこんなに持ち出せたと思う。中級品が一式揃う程だ。

 ならば行動しよう。そうしよう。

 町は自由に行動していいと言われていたし、情報集めも兼ねて出掛けよう。PTOに合った服装をするために、武器屋と防具屋と装飾屋へ。

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