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盗剣士

 なにも考えずに飛びかかってくる、馬鹿な盗賊共にたいしてワンドを奮う。狭い裏路地に避けれるスペースなどあるはずも無く、命中し、鮮血が辺りを彩る。自分の血が無いわけではないが、圧倒的に盗賊の方が血を撒き散らした。

 リーチの差があるかぎり、殆どの相手は驚異にもならない。いざとなったら治療魔法がある。

 レイピアを装備した、盗剣士の男が斬りかかってくる。


「おらよぉっ!」


 レイピアが空を斬り、しなってヴンッと音をたてる。間一髪、しかし他の盗賊の相手もしないといけない以上、一人に集中はできず、次は当たってもおかしくはない。

 ワンドを奮い、二人まとめてほふりさる。一瞬できた隙を、レイピアが掠める。浅い切り傷ができ、だが相手の握るレイピアは俺に対して振れない場所にあった。故に――油断した。

 何をされたのか、一瞬理解できなかった。しかし自らの腹部に深々と刺さるソレが、全てを証明していた。レイピアの本領、突き。麻痺した痛覚が再起動し、腹から脳へ痛みが走り抜け、呻き声が漏れる。人間族である俺は、魔王と言えども耐久力は皆無に等しい。せめて女ならば。

 だが、こんなところで気紛れにくたばる訳にはいかない。痛みは必死にこらえ、傷だけでも治療魔法をかける。独唱しながらも、頭では『真空斬撃』と念じ、二つのスキルを同時に繰り出す。

 甲高い金属音と共に、レイピアが宙を舞う。

 仕留めれる。そう思った瞬間、リーダーの双剣の盗剣士の化狸族のイケメンが踏み込んできた。勢いは殺せず、飛び込み前転で回避する。ズボンの端が切れる。

 避けた先に、盗賊が一人。降り下ろされたタガーを紙一重でかわし、そのままの勢いで蹴りを繰り出す。やったは良いものの、俺にスタントマンのような芸当ができるはずも無く、バランスを崩し、背中を強打する。

 鈍い音がして、肺の中の空気が殆ど吐き出させられる。大きな隙。しかし打撃も斬撃も来ず、むしろ盗賊達は散らばる。


「っ――――?」


 疑問に思い、そして何より戦闘中なので立ち上がる。目の前には一人の男。彼はこう言った。


「グッドラック」


 良い意味とは思えなかった。目の前の男のジョブは火事場泥棒。目の前にあるモノは火がついている。

 健全なモノでは無い。

 確実に危険物だ。

 理解した。

 火に関わる危険物と言ったらアレだ――爆弾。魔王のローブに身を包み、地に伏せる。

 直後爆発がおき、ダメージは殺せたが衝撃は殺せなかった俺は、爆風もろとも大通りにまで吹き飛んだ。着地の際、背中に再び強い衝撃が走る。

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