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神殿

 この街は色々な施設がある。かなり充実した街だ。しかし、どう足掻いても神殿の存在感、効果には勝つことはできない。

 というのは導入部みたいなもので、一言で言い表すなら、「ジョブを追加したり強化したりしたい」だけである。スキルやステータスの面で、圧倒的に有利になると思われるからだ。特に空間移転系スキルが欲しい、魔王には無いし。

 つー訳で、ごたくを並べて言い伏せた癖に俺は逃げ出して、今は神殿の受付にいる。


「参拝ですか? ジョブ関係ですか?」

「ジョブの方です」


 ふざけた二択だな。祈ってからやるとかじゃなくて、初めから二択なのかよ。当然ジョブを選択する。にこやかな笑みを浮かべる受付の巫女に料金を渡し、言われる通りに左側から神殿の中に入る。内装もかなり綺麗で、窓もガラスがはまっている。

 奥の方になんか偉そうな神官がいて、色々指示を出してきた。とりあえず従う。


「では、この玉に手をかざして下さい」


 かざすって、さわちまって良いんだよな。かざしていることに間違いは無い。


「玉には触れないで下さい。かざすだけです」


 もう遅いです。

 直後、カッと黒い光が生じる。ように見えたのは俺の気のせいだろう。謎のスキルが増えてるけど。『ジョブ設定』とか、神殿に来る意味無くなったのかもしれない、後で実験しないことにはなにもわからないけどな。

 神官は気が付いていないようなので、気にせずマニュアル通りに進めていただき、魔法師と戦士のジョブを得た。メインジョブは触れないように追加だけ頼んでよかった。


「……やべぇ、捕まったら面倒かもしんねぇ」


 無事に外に出て、神殿は皆さんの気持ちと税金でできています、なんて下らないことを考えていると、ティエンが神殿に向かって真っ直ぐ歩いてきた。話は終わりと言ったのに、あれじゃあ満足しないと申すか。面倒臭い。

 道を変え、裏路地を突っ切る。途中ゴロツキを数人吹っ飛ばした気もするが、俺の関するところでは無い。軽快なステップで兵舎に飛び込む。もといた部屋に入ると、ジャッキーとオルフが待機していた。


「魔王さま、どこに行っていたんですか?」

「ちょっと神殿に」


 ~シャウエルテ卿の説教タイム♪~


「何と言うか、……ゴメン」


 偉いのも大変だとわかりました。ジャッキーが参戦しなかっただけよしとしよう。

 というより、何故だ。話すことは全部話したというのに、何故神殿に行かせてくれないのだ。遊びじゃないのに、半分は。

 ティエンがいつのまにか帰って来てるし、適当に言いくるめるか。


「うん、話すことは全部話した。後はお前に任せる。暫くして、戦果が出なかったら、俺達が直接指揮をとる」


 心は若干折れているが、威厳を振り絞って言う。ティエンが答えたので、軍事二人にたいして目配せをし、兵舎を出た。そしてすぐに空間移転使い、サインクルフへと戻った。

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