会議
戴冠式の日は、そのままお祭り騒ぎになった。親衛隊らしく側に控えたアルタイルに質問してみると、魔王が新しくなる度に最低一日はカオス極まるらしい。二日目以降は魔王の権限で止めることもあるが、基本的に労力の無駄な為、放置してむしろ楽しむことが多いらしい。
一日目は、身体は魔法や魔術で回復したとはいえ、神経が消耗した気がするので休むことにした。あと、アルタイルにさらっとセイラのことをカミングアウトした。異論は無いそうだ。
二日目の朝、夜通し続くお祭り騒ぎをBGMに起床する。眠気などは一切ないので、調理室からパンを一つ拝借して、上官達に召集をかけた。この城で最初に入った、会議室らしきあの部屋で、パンをモグモグやりながら気長に待つ。しかし食い終わると暇になった。
気になったので、自分のステータスを確認する。
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│フェル=V=ヒューズ(人間族・男)
│ジョブ/魔王(Lv.25)
│スキル/鑑定、真空斬撃
│装備品/白金のワンド、魔剣ゲンデュル、ダマスカス鋼の額金、魔王のローブ、布の闘衣、革のブーツ、魔導師の首飾り、魔力の指輪
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ミサンガは全滅。魔術師のローブと絹の服はボロボロの血塗れ。革の靴は元から新品ではなかった為に、とどめを刺された。そんな理由で、数種類の装備が新しくなった。性能もアップしている。
あとスキルが増えた。習得条件は知らない。
レベルの跳ね上がりが凄いが、ジャッキーと戦ったお陰だろう。
……『暇』って怖い。凄くイライラするZE。そんなクソみたいな思考も束の間、上役達が次々と入ってきた。驚くことに、最初に入ってきたのはジャッキーで、「約束は守ろう」とか言ってきた。
次第にメンバーが揃い、一番年上らしき男が頷く。それを見て、俺は話を始める。
「今、諸君に集まってもらったのは、俺がこの国の状勢を知りたいからだ。内政、外交、戦争など、……最初は内政から頼む」
そう言うと、二人の男が立ち上がる。グレイ=バーナーズと、竜神族のイグニス=ディケンズだ。
「内政については、大きな問題はありません。多少は種族間の争いもありますが、第三者に被害が及ばない限りは、静観を極め込むのが一番です」
「各自治区については詳細はわからないが、少なくとも表向きは善政だ」
最初に結論を言われ、細かい説明は一〇分程度続いた。
二人が座る。今度は外交について頼む、と言うと、アルタイル=ブラックが一人立ち上がる。
「人間とは知っての通りです。魔界で数少ない大魔王帝国ではない国――アルフヘイムのエルフ達とは、対等な関係となっております」
そのあと、いくつかの国との関係について、簡単に聞かされた。
最後の戦争には、ジャッキー=エイベルと、狼牙族のオルフ=シャウエルテが立ち上がる。
「サインクルフより南にある、通路近くの砦が一つ、人間軍により落とされている。ここは重要地が近い」
「逆に東の地より攻め入り、人間の砦一つと村三つを落としています。戦況は五分五分かと」
とりあえずはこの程度で良いだろう。
しかし状況的に、やるべきことは一つだろう。立ち上がり、前を見据えて言う。
「まずは砦を取り戻す必要がありそうだ。俺も行く。ジャッキーとオルフは一緒に来い。それでは、各自仕事につけ」
ローブを翻し、退室する。指名した二人と、数名の兵士が後をついてくる。パーティを編成し、しかし上限は六人なので兵士は三人だ。オルフが空間移転を使えた為、すぐに砦近くの街へ移動した。




