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キドアイラク  作者: 虚虎 冬
朱色の世界
12/26

心は憎しみで満たされて

 赤い石が完全に溶けたとたん、

 女の子の心にふつふつと燃え上がるもの、

 怒りです。

 女の子は耐え切れずに悲鳴をあげました。

「ああ!なにしてんだなにしてんだ!

 子供が暗い感情だけで、

 耐えられるはずがない!」

 狐は頭を抱えます。


 女の子の中で憎しみが沸き起こります。

 黒いマントの女への。

 自分にとって、大切な人を殺した女への。


 女の子の瞳はどんより曇って、

 口から怨嗟の声がします。

「なにしてんだ馬鹿野郎!」

 狐は自分に向けていいました。

 慌てて女の子の肩を揺さぶります。

「聞けちびすけ!」

「うるさい!」

 女の子は狐を振り払いました。

 狐は悟ります。

 自分はもう何もできない、と。

「ちびすけ! 次の世界に向かえ!

 まだお前は知らなきゃなんねえ!」

 嫌がる女の子の背中を、

 狐が無理やり押しました。

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