卒業
「ひとみ・・引退してくれないか・・・」石川、ひとみと食事中
「・・・・なぜ?」意味がまったく分からない、ひとみ
石川は、すでに、自分の妹に危機が迫っていることを理解している。
あの、根元だ。
すでに、ひとみは、新しく爆撃が作られた事も知っている。
だが、まだ、見たこともなければ、あった事もない。まして、敵対するなど・・
そして、まさか、来年、飛び級で、秋高に入ってくるとは・・・
「・・・今まで、石川の妹って、だけで、誰もが、離れて行って、一人だった・・・
いつまでも、石川のってのが・・・嫌なんだ。
どうしても、自分の力で、この、殻から、抜け出したい。
お兄ちゃんの心配も良く分かってる。だけど、石川の妹じゃなく、石川ひとみで生きたい。
だから、秋高にも入ったし。お兄ちゃんの援助もなく暮らしてる。
あと、一年、卒業するまで、絶対、渋谷爆撃を辞めません。」 ひとみ
ひとみは、どうしても、兄のネームバリューで、生きてきた、みたいに思われるのが嫌で
とにかく、自力で、名前も売りたい。殻を破りたい。
だから、滝部の応援も嫌ったし、超弱小の渋谷爆撃に来た。
だが、ひとみは、まだ、意味が、分かってない。
兄の引退しろが。
根元は、てっぺんを狙ってくる。それほどの逸材。
だが、たかだか、中学生のガキに自ら手を出す事など、到底できる事では無い。
格が邪魔をする。ましてや、妹の為だとか、石川のイメージ、から逸する。
あくまで、妹ごとき・・の対応で行かなければ、見せなければいけない。
石川の唯一の弱点と、わかれば、必然的に狙われる。
ひとみを人質に使うなどされる。
今まで、それが、起こらなかったのは、やはり、石川が、妹ごときで・・・
と、言う、世間のイメージ。自分の為なら妹でも、殺しかねないとの幻想。
石川最大の武器は、極悪。外道。
身内だろうが、仲間だろうが、殺してしまうと言う恐ろしさ。
失えば、一気に、叩かれるのは、石川も、よく判っている。
結局、説得なんか、出来る事ではない。
何より、因果応報。自身がやってきたこと。
この自分のせいで、葛藤している妹がいるのだ、
犯罪者が、犯罪をするなと、説得している様なもの
せめて、あと一年。ひとみが卒業するまで、無事にいる事を願う位しかできない。
「じゃあ、行くね。番長決定戦見たいから。」来年当然参加するので、下見もかねる、ひとみ
「・・・ああ。」あの石川が、少し覇気のない返事。
ひとみも、そこは、少し気にかけた・・・
(老けてきたのかな?お兄ちゃん・・・)ひとみ、石川の微妙な違和感に不思議がる
番長決定戦。
今年は四人参加。
くじ引きによる、トーナメント戦
決勝に駒を進めたのは、新宿紅蓮歌舞伎町グループのリーダーと
大阪、有名暴力団幹部の中川。
だが、圧倒的。
見ていた観客も、驚く。
これが、プロ。暴力のプロ。アマチュアとの違いを、まざまざと見せ付けた。
現役暴力団 中川の圧勝。
こだわらない。勝ち方に。
ただ勝てばいい。これが、暴力の最前線に君臨する、ヤクザの戦い。
「勝つから、上がっていくんだな・・・」見ていた金山
「ああ・・喧嘩は、技術じゃないって、よくわかったよ。」渡辺
「たしかに。スマートなのが、特異なんだよ。萩原さん、滝部さんみたいな、
綺麗な喧嘩屋なんて、普通ありえないんだよ。」ひとみ
中川、ただ、猪のように突っ込んで行き。捕まえたら離さない。
タンカで運ばれる歌舞伎町リーダー、耳は、噛み千切られ、指の骨は、すべて折られる。
最初は、技術で距離を取る歌舞伎町が、押していたが、決定打には、ならず。
顔を殴るとか、蹴りを、どこにとかじゃなく、殴れる所を殴る。
折れる所を折る。潰せるとこを潰す。これが実戦のつわもの。
負ける事が許されないプロの仕事だった。
それから、何事も無かったかの様、卒業式が行われる。
治療を受けた、歌舞伎町のリーダーも、中川も、仲良く隣あわせで座る。
感動的な卒業式。みんな、わかっている。もう、明日からは、敵同士になっていく。
事業で、ぶつかる事もあれば、直接暴力で、ぶつかる事もあるだろう。
最後のバカ騒ぎ、番長決定戦。
過去、全員が出場した、年もあった。
殴り合う事でしか、分かり合えない事もある。
全員、悪党。だが、ここにいる連中は、必要悪なのだ。
これから、時代を背負っていく若者達。
もう、秋葉原に来る事もないだろう。
ほとんどが、夜の花町に消えていく。
卒業式には、近隣のメイド喫茶や、色々な、お店の花輪や、電報。
秋葉原を三年も守ってくれた、守護神達に送られる。
感動的な卒業式に泣く三人
本当に感動のひとみ
憧れの佐藤先輩との別れに辛い金山
さきほど、邪魔だと、言って、新宿の中野さんに街宣車を壊された渡辺
あああ・・・椎名さんに、いたずらで、日の丸、バングラディッシュの色に変えられたね。
あああ・・・反対の日の丸は、ニコちゃんマークになってるよ。かわいいね
あああ・・・田代さんが、運転席にキティーちゃんグッズで、埋めてるよ
うん。ファンシーだね。子供受けしそうな、右翼だね。
あああ・・・走りだした・・グランド爆走してるよ。
ああ。酔ってるんだ、また。ドンペリの空ビンすごいや。
あっ!ぶつけた・・・
えっ?切れてるよ。田代さん。こっち来るよ。
「ドゴっ!」
「なんでぇ~!!」
なぜか、殴られる金山だった。




